情報処理推進機構(IPA)は2月26日、「IT人材市場動向調査 調査報告概要版No.1」を発表した。IPAはこれを「IT人材の育成施策検討に向けた基礎情報を収集するための調査」と位置付けており、今後のIT人材育成施策の立案などに生かす考え。今回は第1回として「【IT企業向け】IT人材動向調査」と「【ユーザー企業向け】IT人材動向調査」を発表した。
調査は「IT企業向け」がITベンダ3000社(有効回答数549社)、「ユーザー企業向け」が東証1部、東証2部、マザーズ、ジャスダックなどへの上場企業3000社(有効回答数335社)を対象に行った。調査期間はともに2008年9月18日から10月3日まで。IPA IT人材育成本部 ITスキル標準センター長の丹羽雅春氏は「リーマン・ショックの直後。まだ現在ほど不況が深刻になってはいないが、兆候が見え始めた時期の調査」と補足した。
IT企業における人材の過不足感に関して、IPA IT人材育成本部長の田中久也氏は「人材の量の不足感は減少しているが、質の不足感は増大している」と述べた。「人材の量が大幅に不足している」という回答は2007年度調査の28.3%から16.2%に大幅減少。その一方で、「人材の質が大幅に不足している」という回答は2007年度調査の23.5%から32.4%へ増加した。丹羽氏は「あくまで私見」と前置きしつつ、「調査時から経済状況が変化していることもあって、現在はさらに『量から質』への移行が加速しているのではないか」と語った。
ITスキル標準で規定している職種別の「今後拡大したい職種」については、「プロジェクトマネジメント」が最も多かった。特に企業規模が大きくなるにつれて、同職種への需要が拡大している。職種別の「確保・育成手段」については、「アプリケーションスペシャリスト」や「ソフトウェアデベロップメント」などが新卒採用の度合いが大きく、逆に「コンサルタント」「ITアーキテクト」「プロジェクトマネジメント」などは既存社員のレベルアップの度合いが大きかった。この傾向は2007年度と大きな違いはないという。
ユーザー企業向けの調査に関しては、IT部門の年代構成について「20代が全体の15.4%と少なく、1人もいないと回答した企業が37.6%に上る」(丹羽氏)とし、若い人材が少ないという結果が明らかとなった。丹羽氏は「ユーザー企業のIT部門の特性として、新規採用が少ないのではないか」と語った。
人材の過不足感については、「量」が「大幅に不足している」という回答が22.7%、「やや不足している」が58.5%。「質」が「大幅に不足している」が31.6%、「やや不足している」が56.1%となり、「量」「質」ともに不足感が高かった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.