シスコシステムズは4月7日、同社として初のサーバ製品を国内で発表した。
新製品は「Cisco Unified Computing System」(UCS)。これはXeon 5500番台を搭載したブレードサーバにサーバアクセススイッチを組み合わせたシステム。出荷は第2四半期以降で、価格は未定だ。
本記事では、「シスコの新ブレードサーバは『イーサネット命』」執筆時点では判明していなかった点を中心にお伝えする。
UCSでは、6Uサイズのシャーシ「UCS 5100」にハーフサイズのブレードを最大8枚、フルサイズのブレードの場合は最大4枚搭載する。フルサイズのブレードのみ独自のメモリ拡張技術を搭載し、メモリを最大384GB搭載できる。「独自のメモリ拡張技術」とは、12のメモリスロットを4倍の48スロットに増やす多重化ASICだという。スロット数が増えるため、これほどのメモリ容量が必要ない場合も、安価な2GBメモリモジュールを使ってコストを節約できる。
各サーバブレードにはCNA(Converged Network Adapter)を装着し、ここからシャーシ背面のイーサネットスイッチモジュール「Cisco UCS 2100 シリーズ ファブリック エクステンダ」を経由して、外との通信を行う。CNAは4社の製品から選択でき、シスコのCNAにはVMware ESX上の各仮想マシンのI/Oをハードウェアで直接制御するとともに、VNLinkのタグ処理を行う機能を搭載する。他社のCNAを装着する場合は、VMware ESXにインストールしてVNLink対応を実現するソフトウェアスイッチ「Nexus 1000V」を利用できる。
UCS 2100 シリーズ ファブリック エクステンダがつながる先は10Gbpsイーサネットスイッチ「Cisco UCS 6100 シリーズ ファブリック インターコネクト」だ。これはUCSに不可欠な要素で、ブレードサーバと一体のものとして販売される。
同スイッチは「UCS Manager」という管理機能を搭載しており、複数シャーシにおける複数ブレードの制御を一括してここから行う。UCS 6100が統合的な管理機能を持つことにより、配下のすべてのブレードを1つまたは複数の演算リソースプールにまとめ、臨機応変にワークロードを配置、停止したり、ブレード間で移動したりできる。いい換えれば、UCSにおいてシャーシは電源およびファンの共用を実現するための箱でしかない。
この柔軟性はUCSの武器の1つだ。シスコはBMCなどの管理ソフトウェアベンダに対してAPIを提供し、他社のツールからもUCSを制御できるようにするとしている。
UCS 6100には10Gbps×20ポート版と10Gbps×40ポート版がある。シスコがUCSで、「40のシャーシを利用して最大320ブレードのシステムを構成可能」と発表しているのは、管理機能を備えたUCS 6100が40ポートだからだという。ポート数を増やせれば、システム構成限界は広がる。
なお、UCS 6100の40ポート版は拡張スロットを持ち、FCoE―FC変換モジュールも提供するという。UCS 6100はNexus 5000と同一のアーキテクチャに基づいていて、シスコのサーバを使う場合はUCS 6100、他社のサーバを利用する環境ではNexus 5000という棲み分けになる。
シスコは製品発表の場で、他社と幅広く提携していくことを強調した。会場にはインテル、EMC、ネットアップ、マイクロソフト、ヴイエムウェア、レッドハット、アクセンチュアの代表者が列席、UCSでシスコと協力していくことを説明した。シスコはヴイエムウェアに出資しており、同じくヴイエムウェアの大株主であるEMCとは強固な提携関係を築いているが、ほかの仮想化ソフトウェアベンダやストレージベンダとの協業も積極的に進めていくという。
シスコはUCSを、サービスプロバイダおよび中堅以上の企業に売り込む。一般企業に対しては、ストレージネットワーキングスイッチ「MDSシリーズ」で築いた関係を生かすほか、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)をはじめとするインテグレータの力を活用する。
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