日本ヒューレット・パッカード(日本HP)とシトリックス・システムズ・ジャパンは4月24日、国内におけるクライアント仮想化での協業を発表した。仮想PC方式およびブレードPC方式の混在クライアント環境を実現するソリューションにより、共同で顧客を開拓する。
HPとシトリックスは、HPのブレードPCへのシトリックスのXenDesktopのバンドルを、世界的に発表している。両社の日本法人はこれを日本市場で展開する。同時に、日本独自の取り組みとして、共同の検証やキャンペーンを実施する。
シトリックス・ジャパンの取締役会長 大古俊輔氏は、現在企業が直面しているクライアント管理上の3つの課題を指摘した。テレワークなどの働き方の変化への対応、セキュリティ上の懸念、そしてコスト削減のプレッシャーだ。「クライアントサーバ型アプリケーションは、大きな役割を果たしてきたが、これらに対応できない」(大古氏)。同社のXenDesktopには、アプリケーションを書き変えずにクライアント管理上の課題を解決する仕組みとしての価値があると強調する。
XenDesktopは仮想PC型のシンクライアントを実現するソリューション。つまり、サーバ側で仮想マシンとしてデスクトップ環境を動かし、画面表示やキーボード/マウス入力だけを遠隔的に行うというものだ。従って、仮想マシンとして動かすデスクトップ環境にクライアントサーバ型アプリケーションのクライアントソフトをインストールして使えば、ユーザーの端末には強力な処理能力は必要なくなり、在宅勤務などのユーザーに対してもインターネット経由で、セキュリティを確保した形でオフィスデスクトップ環境を提供できる。サーバ上のデスクトップ環境とエンドユーザー端末間のトラフィックも、画面データの差分だけなので、少量に抑えることができる。
仮想PC型シンクライアント環境において、サーバ側のデスクトップ環境と、エンドユーザーが利用する端末の間を取り持ち、ユーザー認証や正しい環境への接続を制御する仕組みは「コネクションブローカー」と呼ばれる。実は、コネクションブローカーは仮想PC型のシンクライアントだけでなく、ブレードPC(データセンター側でエンドユーザー用のPCを動かし、それぞれのPCの画面表示やキーボード/マウス入力を遠隔的に行うもの)にも共通に適用できる。
従って、HPのブレードPCへのXenDesktopのバンドルにより、ブレードPC環境と、仮想PC型シンクライアント環境を統合的に管理できる仕組みを提供できる。仮想PC型はサーバのCPUやメモリのリソースを論理的に分割して使う仕組みなので、一般的なオフィスワーカー向けに使われることが多い。一方ブレードPCの場合は、物理的に1台のPCを1ユーザーに割り当てて使えるので、パワーユーザーに適した構成を実現しやすい。
XenDesktopのコネクションブローカーを使うことで、ユーザーが接続時に、その時点で使いたいアプリケーションに応じて、ブレードPCを利用するか仮想デスクトップ環境を利用するかを自ら選択できるようにすることも可能だ。
2社はバンドルに加え、日本HPの市ヶ谷本社とシトリックス・ジャパンの霞が関本社に常設デモセンターを同日に開設した。双方とも仮想PC方式とブレードPC方式をXenDesktopで制御する環境により、クライアント仮想化環境のパフォーマンスが実体験できるようにするという。
両社は今後、共同のセミナーやカンファレンスなどのプロモーションを実施していくという。
日本HPはまた、4月24日〜6月30日の限定で、シンクライアント端末の値下げキャンペーンも実施する。「HP t5630 Thin Client」とHP17インチTFTモニタのセット(標準価格7万1400円)が4万8300円、モバイル型の「HP 2533t Mobile Thin Client」(標準価格8万9250円)が6万9300円(価格はすべて税込み)の設定。
今回の協業は、国内市場において、特に大きな意味を持つとシトリックスの大古会長は話す。
「両社の販売パートナーは重なる部分も多い。しかしシトリックスはソフトウェア、日本HPはハードウェアと、同じ販売パートナーにおける別の部署とのばらばらな関係になっている」。今回のバンドルのような取り組みによって、両社の製品を一緒に扱ってもらえるチャンスが増えるという。
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