リンクステートルーティング(OSPF)の設定と確認ネットワークの基礎を学習する CCNA対策講座(24)(1/2 ページ)

本連載では、シスコシステムズ(以下シスコ)が提供するシスコ技術者認定(Cisco Career Certification)から、ネットワーク技術者を認定する資格、CCNA(Cisco Certified Network Associate)を解説します。2007年12月に改訂された新試験(640-802J)に対応しています。

» 2009年11月18日 00時00分 公開
[齋藤理恵グローバル ナレッジ ネットワーク]

 今回は、リンクステートルーティングプロトコルである「OSPF」について解説します。第23回「RIPによるルーティングテーブルの作成」で紹介したディスタンスベクター型のルーティングプロトコルは、ホップ数の制限や収束が遅いなどの特徴がありましたが、リンクステートルーティングプロトコルはそれらの制限をなくしてより大規模なネットワークに対応できるように設計されています。

ネットワークの基礎を学習する CCNA対策講座 各回のインデックス


OSPF概要

 OSPFは自律システム内で使用されるリンクステート型のルーティングプロトコルです。ディスタンスベクター型のRIPよりも大規模ネットワークで使用できるように設計されており、収束時間が短いことが特徴です。リンクステート型はルーティングテーブルを交換するのではなく、最初に「Helloパケット」と呼ばれるパケットをお互いに交換し、OSPFを使用している隣接ルータを検出します。この隣接ルータをネイバーといいます。その後、各ルータのインターフェイスの情報を交換します。「リンク」はルータのインターフェイス、「ステート」はインターフェイスの情報です。そのリンクステート情報は「LSA」(Link State Advertisement)と呼ばれ、インターフェイスの種類、IPアドレス、ネットワークのタイプなどが含まれています。そのLSAを寄せ集めてネットワーク全体の地図である「LSDB」(Link State DataBase)を作成します。その後、SPF(Shortest Path First)アルゴリズムから各ルータを起点とした最短パスツリーを計算し、最適パスをルーティングテーブルに格納します。

OSPFによるルーティングテーブルの作成 図1 OSPFによるルーティングテーブルの作成

 OSPFは大規模ネットワークで使用できるよう設計されていますが、大規模なネットワークでは、交換されるリンクステート情報の数が多くなり、それによってリンクステートデータベースのサイズも大きくなります。その結果CPUやメモリを多く消費することになるので、OSPFではエリアという概念を設けて、大規模ネットワークでより効率よくルーティングできるように考えられています。1つのエリアの中のルータ台数を減らすことにより、トラフィックが減少し、リンクステートデータベースのサイズが小さくなります。また、ある1つのエリア内でネットワーク障害が発生した場合、それを通知するアップデートはそのエリア内で流れるので、結果的に収束時間も短縮されます。

 エリアは番号によって識別され、同じエリア内にいるOSPFを設定したルータ同士は同じLSDBを持つことになります。OSPFを使用して複数のエリアを作成する場合、エリア0と呼ばれるエリアを使用し、そのほかのエリアをエリア0に接続する必要があります。エリア0はバックボーンエリアともいい、各エリア間でやり取りされるトラフィックはエリア0を経由することになります。

確認問題1

問題

 OSPFの特徴について正しいものを2つ選択してください。

a.リンクステート型ルーティングプロトコルである

b.ディスタンスベクター型ルーティングプロトコルである

c.ハイブリッド型ルーティングプロトコルである

d.エリアを使用して収束を高速化する

e.エリアによりブロードキャストドメインを分割する

正解

 a、d

解説

 OSPFはリンクステート型のルーティングプロトコルです。従って選択肢aは正解です。ディスタンスベクター型はRIP、ハイブリッド型はEIGRPが該当します。エリア分割することにより収束時間を短縮することができるので選択肢Dは正解です。ブロードキャストドメインを分割するのはルータです。

DR(Designated Router)/BDR(Backup Designated Router)

 LAN環境のように、複数のデバイスが同時に通信を行うことができるようなマルチアクセスネットワークでは、サブネットごとにDRとBDRの選出が行われます。DR/BDRとは自身が接続されているマルチアクセスネットワークを代表して、LSAの交換をとりまとめるルータです。マルチアクセスネットワークで、DR/BDRの選定がない場合、ルータの数が増えるほど、やりとりをするリンクステート情報の数が膨大になってしまいます。そこでOSPFを設定する各ルータの中から代表ルータであるDRとバックアップ代表ルータであるBDRを選出することにより、やりとりをするリンクステート情報を減らすことができます。DR/BDR以外のルータは224.0.0.6のマルチキャストアドレスを使用して、DR/BDRあてにLSAを送信します。そして、その情報をDRが224.0.0.5のマルチキャストアドレスを使用して全ルータあてに送信します。DR/BDRを選出することによりLSA交換の効率化につながります。なお、ルータ間を1対1で接続するようなポイントツーポイントネットワークでは、LSAを交換するルータは必ず対向ルータになりますので、DR/BDRは選出されません。

図2 マルチアクセスネットワークにおけるOSPFの動作 図2 マルチアクセスネットワークにおけるOSPFの動作

 DR/BDRの選出は以下のとおりです。

<DR/BDRの選出プロセス>

(1)OSPFプライオリティが最大の値を持つルータがDR、次に大きい値を持つルータがBDR(インターフェイス単位に設定)。デフォルトは「1」、「0」にするとDR/BDRには選出されない。

 プライオリティが同じ場合は、

(2)ルータIDが最大の値を持つルータがDR、次に大きい値を持つルータがBDR

ルータIDとは、OSPFルータを識別する32ビットの数値

<ルータID選出プロセス>

1.手動設定

2.ループバックインターフェイスのアドレス(最大の値)

3.有効な物理インターフェイスのアドレス(最大の値)

※1〜3は優先度が高い順


確認問題2

問題

 DR/BDRの説明として、正しいものを2つ選択してください。

a.エリアごとに1台のDRが選出される

b.マルチアクセスネットワークでは、サブネットごとにDR/BDRが選出される

c.どのようなネットワークでもDR/BDRが選出される

d.DRあてにアップデートを送信する時は、224.0.0.5のマルチキャストアドレスが使用される

e.DRから全ルータあてにアップデートを送信する時は、224.0.0.5のマルチキャストアドレスが使用される

正解

 b、e

解説

 マルチアクセスネットワークでは、サブネットごとにDR/BDRが選出されます。エリアごとではありません。従って選択肢bが正解です。DR/BDRが選出されるのはマルチアクセスネットワークのみで、ポイントツーポイントネットワークでは選出されません。DRから全ルータあてにアップデートを送信するマルチキャストアドレスは「224.0.0.5」、そのほかのルータからDR/BDRあてにアップデートを送信するマルチキャストアドレスは「224.0.0.6」です。従って選択肢eが正解です。

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