とはいえ、何から何までムダなことを……といっていたらキリがありません。時間は有限です。やりたくないムダはやる必要がありません。
逆に「やりたいムダ」ならば、躊躇なくそこへ飛び込んでいってもいいのではないでしょうか?
簡単なことでいいのです。 「読んでみたいな」と思った本がある。あるいは帰宅途中に何だか賑やかなお店があった、見ると流行のラーメン屋らしい。異業種の交流会に誘われた、などなど。
「行ってみたいけど、別に仕事の役には立たないし、いま忙しいし……」などとあれこれ考えず、ただ心の命ずるままにとりあえず行動を起こしてみればいいのです。
「ムダになったらどうしよう?」と考える人がいるかもしれません。しかし、ムダで一体誰が困るというのでしょう。
芸能人に詳しい、テレビゲームが好き、マンガを読み込んでいる…… これらの「仕事以外で知っていること」があったために、 仕事で「不利」になったことがあるでしょうか? あるわけがないと思います。「気分転換になる」や「考え方を得る」など、自分に何らかの作用をもたらしているなら、それはムダどころか自分を成長させてくれる“インプット”になります。
ムダを恐れる必要なんてない……というより、広い視点で見れば「ムダなものなんて何もない」のです。
誰にだって、将来自分がどうなるかなんて分かりません。どんなに大きな会社にいたとしても、会社が将来どうなるかは分からない。異動があるかもしれないし、転職するかもしれない。下手をしたら会社自体がなくなってしまうかもしれない。 そういう“分からない将来”があるのに「わたしは仕事で必要なことしか吸収してこなかったものですから、いまの仕事のこと以外はまったく分かりません」という方が、逆に怖くないでしょうか。
「いまの自分にどう役立つか」という思考からでは、「いまの自分にない新しいもの」は獲得できません。「メリット・デメリット」という意識に縛られていると、いつまでも自分に新しい可能性を付加することができなくなるのです。
「一見ムダに見えるもの」が、あとあとになって大きな意味を持ってくるのが「人脈」だと思います。
例えば「自分にとって、いま付き合うと得」だと思える人間関係があるとします。それは上司だったり、何かを教えてくれる人だったり、お客さんだったり……。けれども、「数年後の自分にとって得なのは誰?」といえば、それは誰にも分かりません。自分自身がこれから変化していくし、もちろん相手も変化していくからです。
だとしたら、むしろ「面白いな」という人たちがいれば、メリット・デメリットに関係なく、積極的に交流するようにしていけばいいのだと思います。一見何の役に立っていないような関係でも、自分の知らなかった発想、価値観の違う考え方から刺激をもらっている可能性は十分にあります。
ムダのように見えても、多くの人との出会いを重ねていけば、さまざまな「出会い」がまたつながっていきます。「お友だちのお友だち」「またそのお友だち」とつなげていくと、たった6つのつながりで世界の誰とでもつながってしまうという、「スモールワールドの法則」があります。これは実験でも証明されています。
そんな人間関係づくりも、やっぱり「非効率」を受け入れることで成り立つものなのです。「効率」という言葉に縛られず、もっと深い自分、もっと可能性のある自分を、皆さんには目指していってほしいと思います。
夏川賀央(なつかわがお)
1968年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒。大手出版社など数社を経て独立。会社経営のかたわら、作家・出版プロデューサーとしても活躍中。また、人材プロデューサーとして各分野の委細たちを発掘し、ネットワークを通じた“非組織プロジェクトで多くのビジネスをしかけ成功させている。「公私混同の」のつながりを世に広める「賀央会」を2009年に結成。著書に『成功者に学ぶ時間術』『なぜ、仕事ができる人は残業をしないのか?』『成功しちゃう「人脈」はじつは公私混同ばかり』『すごい会社のすごい考え方』など、多数。
Webサイト:夏川賀央の「デキる人」研究所
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