第3回 Hyper-Vライブ・マイグレーションの構築手順Hyper-V 2.0実践ライブ・マイグレーション術(1/5 ページ)

ライブ・マイグレーションの構築手順を、システム構築から各種設定まで解説。マイグレーションにかかる時間も計測した。

» 2010年02月10日 00時00分 公開
[小川大地日本ヒューレット・パッカード]
[運用] Hyper-V 2.0実践ライブ・マイグレーション術
Windows Server Insider

 

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連載目次

 第1回第2回では、ライブ・マイグレーションの基礎知識と設計ポイントについて解説した。今回は、いよいよライブ・マイグレーションの構築方法について説明していく。本連載は実運用環境を意識したものであるが、今回は評価・テスト環境にも生かせるノウハウについても織り交ぜていきたい。

サーバは最低3台用意すること

 最初に、筆者が用意したテスト環境を紹介しておこう。ライブ・マイグレーションのシステム要件・設計のポイントについては、第2回で詳しく解説しているので、環境構築を行う前に一度目を通してほしい。

システム構成イメージ
今回はテスト環境ということもあり、共有ストレージはiSCSIターゲット・ソフトウェアをインストールしたWindows Storage Server 2008で代用している。しかし、本格的に導入するのであれば、ファイバ・チャネル(FibreChannel)やShared SASも視野に入れよう。

 ライブ・マイグレーションを行うには、最低3台のサーバが必要である。内訳は、クラスタを構成するHyper-Vホスト2台(2ノード)と、ドメイン・コントローラ(DC)1台だ。DCを仮想化することで必要なサーバは2台で済むと思いがちであるが、クラスタを構成するHyper-Vホスト上の仮想マシンにDCを構成することはできない。

 これは、フェイルオーバー・クラスタ機能(WSFC)を構成する親パーティションは、ドメインに参加している必要があるためだ。Hyper-Vの各仮想マシンは親パーティションの起動後にブートを開始するため、DCを仮想化していると親パーティションの起動時にDCと通信できない。その結果、WSFCを正常に立ち上げることができないのだ。

SCVMMは必須ではない

 VMwareのvCenter Server(VirtualCenter)と違い、Hyper-Vのライブ・マイグレーションには、統合管理製品であるSystem Center Virtual Machine Manager(SCVMM)は必要としない。ライブ・マイグレーションのテストを行うだけなら、OSに標準付属する「Hyper-Vマネージャー」と「フェールオーバー クラスター マネージャー」(以降WSFCマネージャ)で十分だ。「ライブ・マイグレーションを理解する」という点においては、むしろフロントエンドとして動作するSCVMMは使用しない方がよいだろう。動作の仕組みを把握しづらくなってしまうためだ。

 逆にいえば、SCVMMを利用するとこういった複雑な動作を意識しなくて済むようになる。複数の管理ツールを併用しなくても単一のGUIで効率的な管理が行えるうえ、Hyper-Vホストのステータス監視を行うSystem Center Operation Managerと連動して、自動でライブ・マイグレーションを実行するPerformance and Resource Optimization(PRO)という魅力的な機能も備わっている。ライブ・マイグレーションのテストを一通り終えた後には、運用面のテストとしてSCVMMも試してみるとよいかもしれない。

最低2つ以上のネットワーク・セグメントを用意

 今回、iSCSIを含めて4つのネットワーク・セグメントを使用しているが、最低限必要なセグメントは2つだ。この場合は、ハートビート(兼ライブ・マイグレーション、CSV通信)用セグメントと、そのほかのセグメントに分けよう。

 IISや共有フォルダ、SQL Serverなどの一般的なサービスをクラスタリングする場合、WSFC管理用とは別に、サービスごとに仮想コンピュータ名やIPアドレスを設定する必要がある。しかし、ライブ・マイグレーションやクイック・マイグレーションといった仮想マシンのクラスタリングの場合は、仮想マシン内でコンピュータ名やIPアドレスは設定するものの、WSFC側ではこういったネットワーク情報は不要である。

評価・テスト利用に最適なiSCSIターゲット・ソフトウェア

 ライブ・マイグレーションの評価・テスト用に共有ストレージまで準備するというのはハードルが高いかもしれない。こういった場合、共有ストレージは「iSCSIターゲット・ソフトウェア」で代用できる。iSCSIターゲット・ソフトウェアとは、一般的なサーバをiSCSIストレージ(厳密には「ターゲット」と表現する)として利用できるソフトウェアのことだ。

 マイクロソフトのTechNet PlusやMSDNのサブスクリプション会員の場合は、Windows Storage Server 2008とMicrosoft iSCSI Software Targetを利用できる。MicrosoftのJose Barreto氏が利用手順を公開しているので参考にするとよい。今回の環境もこの方法で代用している。

 サブスクリプション会員でない場合は、Hyper-Vに対応しているターゲット・ソフトウェアとしてStarWind Softwareの「StarWind」などが利用可能だ。こちらは無償版も提供されているということなので検討してみるとよい。このほかにも、さまざまなターゲット・ソフトウェアがリリースされているが、WSFCの要件であるSCSI-3 SPC-3(SCSI Primary Commands-3)規格に対応していることを事前に確認しておこう。LinuxやBSD上で動作するターゲット・ソフトウェアは、意外とSPC-3に対応していないものが多いため注意してほしい。

 なお、こういったソフトウェア実装のiSCSIはもちろんであるが、実運用でiSCSIストレージを採用する場合には、帯域不足による性能劣化などに注意しなければならない。10Gbit/s対応モデルであれば帯域要件は満たせるが、スイッチやケーブルなどの関連機器を含めるとコストが割高になってしまう懸念がある。


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