データモデルを利用してユーザー部門とコミュニケーションを取るために、業務知識は必要でしょうか。当然業務知識があることが望ましいですが、業務についてはプロであるユーザー部門に任せ、事実分析から立てた仮説をユーザー部門とコミュニケーションを取りながら検証することで、データモデリングを進めることは可能です。しかし、コミュニケーションを行う上で「言葉」は非常に重要な役割を果たします。つまり、ユーザー部門が日常使っている「用語」を多く知ることで、コミュニケーション力が格段に向上することは確かです。
今回の例で考えると「過去5年間の設置場所別の売上実績リストが欲しい」という内容から、売上実績データは受注時のデータなのか、請求時のデータなのかと思案します。また、図1には見積から契約までしかないのですが、「直接販売」と「間接販売」では受注形態や契約形態が異なることで請求業務はどうなるのか? を考えます。請求、代理店、顧客の関係(図2)を示したデータモデルを基にユーザー部門とコミュニケーションを取ります。
図2を参照すると、「直接販売」の場合は顧客へ直接請求を行い、「間接販売」の場合は代理店へ請求を行うことは分かります。ここで、「直接販売」の請求に対して代理店コードが存在する点に注目します。この代理店コードは請求先ではないという仮説が立てられます。ユーザー部門とのコミュニケーションは以下のようになります。
情報システム部 「『直接販売』の場合は、代行請求を行うことがありますか?」
ユーザー部門 「そうだね。すべての製品を自社製品で賄えないケースは他社製品を使うからね」
情報システム部 「今回の売上実績には自社製品と他社製品を分けて出した方がよろしいですか?」
ユーザー部門 「新製品の調査も兼ねているから自社製品と他社製品の違いが分かるとうれしいね」
今回は「代行請求」という用語を使ってデータモデルから代行請求を読み取ることで話を広げていくことができたわけです。このように、業務を知らなくても、用語を知ることでコミュニケーションの幅を広げることは可能です。
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