本連載では、シスコシステムズ(以下シスコ)が提供するシスコ技術者認定(Cisco Career Certification)から、ネットワーク技術者を認定する資格、CCNA(Cisco Certified Network Associate)を解説します。2007年12月に改訂された新試験(640-802J)に対応しています。
ケーブルを使わずに通信できる無線LANは電波を伝送媒体に使用するため、電波を傍受され、データの内容を盗み見られてしまう危険性があります。そのため、セキュリティ対策をしっかりとする必要があります。
今回は無線LANセキュリティの必要性と対策について解説します。
情報セキュリティを実現するセキュリティの基本的な考え方には、以下の3つが挙げられます。
1. 機密性(Confidentiality)
認可された人にだけ、情報へのアクセスが許可されることです。対策として、ファイルにパスワードを設定したり、アクセス権限を付与することなどが挙げられます。
2. 完全性(Integrity)
情報が正確かつ完全である状態が維持されることです。対策として、毎日データのバックアップを取る、通信中のデータが改ざんされていないかをチェックする仕組みを実装しておくことなどが挙げられます。
3. 可用性(Availability)
アクセス権限を持つ人が必要なときにいつでも情報を利用できることです。対策として、予備の機器・回線を用意し、冗長化しておくことなどが挙げられます。
無線LANは、この3つの中では「機密性」と「完全性」が特に重要であるといえます。無線LANは電波にデータを乗せて転送しますので、途中で電波を傍受され、盗聴される危険性があります。また、アクセスポイントを無断で使用されて、不正アクセスの踏み台にされてしまうことも考えられます。これらの脅威から無線LANを保護するには、主に3つの手法があります。
認証 | 正規のクライアントとユーザーが信頼できるアクセスポイントを通じてネットワークにアクセスするのを保証する |
---|---|
暗号化 | 送信時および受信時のデータを保護する |
侵入検知システム(IDS) 侵入防御システム(IPS) |
不正侵入や不正トラフィックを検出して防止する |
表1 無線LANセキュリティの3つの手法 |
無線LANセキュリティの基本的な手法は「認証」と「暗号化」です。
正規のユーザーのみがアクセスポイントに接続できるように、あらかじめ接続を許可するユーザーを登録し、認証します。ただし、認証されていなくても無線LANの電波を傍受すればデータの盗聴が可能です。そのため認証だけではなく、データを暗号化して中身が分からないようにすることも重要です。なお、企業ネットワークの場合は侵入検知システム(IDS)や侵入防御システム(IPS)を追加し、セキュリティレベルを強化することも必要です。
脅威を緩和する無線LANセキュリティを3つ選択してください。
a.暗号化
b.ウォードライバー
c.ハッカー
d.認証
e.侵入検知システム
a、d、e
選択肢bのウォードライバーと選択肢cのハッカーはセキュリティの脅威となり得るものです。従って選択肢a、d、eが正解です。
無線LANのセキュリティ規格は年々発展しています。
名称 | 制定年度 | 制定者 | 特徴 |
---|---|---|---|
WEP | 1997 | IEEE | ・強力な認証なし ・基本的な暗号化 |
WPA | 2003 | Wi-Fi アライアンス |
・ユーザー認証 企業用:IEEE802.1x (PEAP、EAP-TLS) 個人用:PSK ・TKIPによる暗号化 |
802.11i(WPA2) | 2004以降 | IEEE | ・ユーザー認証 企業用:IEEE802.1x (PEAP、EAP-TLS) 個人用:PSK ・AESによる強力な暗号化 |
表2 無線LANのセキュリティ規格 |
無線LANの最初のセキュリティ規格です。送信側と受信側に同一の情報(キー)を設定し、このキーを使って暗号化/復号を行います。カギが固定(64ビットまたは128ビット)で脆弱(ぜいじゃく)であることから、セキュリティが強化された新たな規格が登場しました。
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