本連載では、シスコシステムズ(以下シスコ)が提供するシスコ技術者認定(Cisco Career Certification)から、ネットワーク技術者を認定する資格、CCNA(Cisco Certified Network Associate)を解説します。2007年12月に改訂された新試験(640-802J)に対応しています。
今回は、NAT(Network Address Translation)とPAT(Port Address Translation)について解説します。NATとPATは、端末がインターネットに接続する際に使用するローカルアドレスとグローバルアドレスの相互変換の技術です。全世界的にグローバルアドレスが不足している問題に対応するために、NATやPATの技術が登場しました。NATやPATの概要と、設定方法を学習します。
NATとPATは、どちらもローカルアドレスとグローバルアドレスを変換する技術です。ローカルアドレスとグローバルアドレスを変換する技術は、大きく3つに分類されます。
スタティックNATは、1つのローカルアドレスを、1つのグローバルアドレスに変換します。変換する際、常に固定のグローバルアドレスに変換します。例えば、ローカルアドレス 192.168.1.1 は、常にグローバルアドレス 202.221.204.65 に変換されます。
ダイナミックNATは、複数のローカルアドレスを、複数のグローバルアドレスのいずれかに変換します。グローバルアドレスは、その時点で未使用のアドレスが動的に使用されます。そのため、スタティックNATのように常に固定のアドレスに対応付けるわけではありません。
PATは、複数のローカルアドレスを、1つのグローバルアドレスに変換します。トランスポート層のポート番号の情報を利用して、1つのグローバルアドレスを区別します。
図1は、NATの中でも最も基本的なスタティックNATの基本動作です。図では、企業Aのローカルアドレス 172.20.1.1 を割り当てられたホストAが、インターネット上のサーバ 202.221.204.65 へアクセスする際のスタティックNATのアドレス変換の仕組みを表しています。
ルータには、「ローカルアドレス 172.20.1.1 を、グローバルアドレス 202.33.245.195 に変換する」という設定をあらかじめ行います。ホストAから送信されたパケットの送信元IPアドレスは、ホストAのIPアドレス 172.20.1.1 です。アドレス変換をしたルータから送信される際のパケットの送信元IPアドレスは 202.33.245.195 になっています。NATを設定したルータはNATテーブルを保持しています。これにより、どのローカルアドレスを、どのグローバルアドレスに変換したかが分かります。
シスコが定義しているNAT用語は4種類あります。
これらは、自組織を基準にした用語です。図1の場合、自組織は「企業A 東京拠点」、他組織は「企業A 東京拠点」以外の組織を指します。
スタティックNATの特徴として正しいものはどれですか。1つ選択してください。
a.1つのローカルアドレスを、1つの固定ではないグローバルアドレスに変換する
b.複数のローカルアドレスを、複数のグローバルアドレスのいずれかに変換する
c.1つのローカルアドレスを、1つの固定のグローバルアドレスに変換する
d.複数のローカルアドレスを、1つのグローバルアドレスに変換する
c
正解は選択肢cです。スタティックNATは、1つのローカルアドレスを、1つのグローバルアドレスに変換します。この際、常に固定のグローバルアドレスに変換されます。
PATは、複数のローカルアドレスを1つのグローバルアドレスに変換します。トランスポート層のポート番号の情報を利用して、1つのグローバルアドレスを区別します。
図2は、ホストAとホストBが同時にインターネット上のWebサーバ 202.221.204.65 にアクセスしたときのPATの仕組みを表しています。1つのグローバルアドレスを区別するのに、送信元のポート番号を利用しています。NATテーブルには、ポート番号の情報が登録されます。
PATにおいて、1つのグローバルアドレスを区別するために使用する情報はどれですか。1つ選択してください。
a.TTL
b.プロトコル番号
c.ポート番号
d.ToS
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