それでは、「Labelコントロールのテキストに時刻の文字列を設定する処理」を実行する1つのメソッドを作成してみよう(メソッドの定義方法については、第3回の「メソッドを定義するには?」を参照)。
まずはメソッドの名前を決定しよう。このメソッドは、「Labelコントロールのテキストに時刻の文字列を設定する処理」という内容なので、ディスプレイ領域(=Display)の時刻テキスト(=Time)を設定(=Set)する処理という意味で「SetDisplayTime」というメソッド名にしよう。
次に、メソッドのパラメータ(入力)と戻り値(出力)を決めよう。どのような入力が必要だろうか? 例えば、現在の時刻を入力値として受け取ることが考えられるだろう。だがしかし、現在の時間はメソッドの中で取得すればよいので、わざわざ入力パラメータ(=引数)として受け取る必要性はない。そこで本稿では、パラメータに何も受け取らないことにする(もちろん入力パラメータとして現在の時刻を受け取るというメソッド仕様でもまったく問題はない)。
また、このメソッドにはどのような出力が必要だろうか? 例えば、時刻テキストの設定に成功したか失敗したかという結果を戻り値として返すことが考えられるだろう。だがしかし、時刻文字列の取得やLabelコントロールへのテキスト設定が失敗する可能性はほぼゼロだと思われるので、成功/失敗という情報を返す必要性はないと考えられる。そこで本稿では、戻り値は何も返さないことにする(もちろん、例えばディスプレイに設定した時刻を戻り値として出力しても間違いではない)。
このようにして、メソッドの状況を考えながら、パラメータと戻り値を決定してメソッドを定義していく。今後、メソッドの定義を行う際の参考にしてほしい。
以上により決定したメソッドの定義は次のようなものになる。
private void SetDisplayTime()
{
}
メソッドの前にあるprivate修飾子(VB 2010ではPrivate修飾子)はアクセシビリティを指定するためのものだ(アクセシビリティについては、第4回の解説を参照していただきたい)。ここでは、ほかのクラスからこのメソッドを呼び出す必要はないので、クラス内でのみのアクセスを許可するprivate修飾子を指定している。
このメソッドの中に、「Labelコントロールのテキストに時刻の文字列を設定する処理」を実装すればよいので、最終的なメソッドの実装は次のようになる。
private void SetDisplayTime()
{
timeNow.Text = DateTime.Now.ToString("HH時mm分 ss秒");
}
timeNowオブジェクト(Labelコントロール)のTextプロパティ(テキスト)に、System名前空間のDateTime構造体のNowプロパティの値を、ToStringメソッドにより時刻表示用に文字列化して設定している。
System名前空間は、ソース・ファイルの冒頭に「using System;」というコードにより宣言されているので、ここには記述されていない(詳しくは第4回の解説を参照)。Nowプロパティの値は、現在時刻が設定されたDateTime構造体のオブジェクトである。ここでは、そのオブジェクトが持っているToStringメソッドを呼び出すことで、オブジェクトが持つ値を文字列に変換している。
DateTime.Now.ToStringメソッドのパラメータに指定されている「HH時mm分ss秒」という記述は「書式指定文字列」と呼ばれるもので、この文字列中の「HH」「mm」「ss」が自動的に数字に置き換わり、例えば「20時15分56秒」のような通常の時刻表示テキストとなる(詳しくは「.NET TIPS:日付や時刻を文字列に変換するには?」を参照されたい)。
なお構造体とは、(現段階では)クラスと同じものだと認識しても問題ない。もちろん詳しく見れば、この両者には機能面に違いがあるということも頭の片隅に置いておいてほしい(詳しくは「改訂版 C#入門」の「値型と参照型」の項を参照していただきたい)。
それでは、このSetDisplayTimeメソッドをLoadイベントとTickイベントのイベント・ハンドラで使用してみよう。
自作メソッドの使用方法は特に難しくない。LoadイベントとTickイベントのそれぞれのイベント・ハンドラで、SetDisplayTimeメソッドを呼び出すだけだ(メソッドの呼び出し方法については、第3回の「定義済みのメソッドを使用するには?」を参照されたい)。具体的には、次の画面のように記述すればよい。
そして、ここまでに作成したプログラムをビルドして実行したのが次の画面である。
以上で「時計」アプリケーションは完成である。
ここまでに作成したC#のソース・コードは以下のリンクからダウンロードできる。
また、VB開発者の参考のために、VB 2010のソース・コードも用意した。
以上で「時計」アプリケーションのプログラミング作業を通して、開発者の目的どおりのアプリケーションを完成させることができた。これをきっかけに、さまざまなアプリケーション開発に乗り出してほしいと思う。
さて、最終回となる次回では、アプリケーション開発の応用編として、アプリケーション開発でのトラブルの対処(「デバッグ」と呼ばれる)などのテクニックや、開発したアプリケーションの配布方法について解説する予定だ。お楽しみに。
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