ミラー(ミラーリング)は、別名RAID-1とも呼ばれ、2台のディスクに同じデータを書き込み、どちらか1台が故障してもデータが失われないようにする技術である。ディスク・システムの信頼性を高めたい場合に使用する。ただしハードウェアのRAIDシステムと違って、ミラーを構成するディスクは2台に限定される。またディスク・サイズ以上のボリュームは作成できない。Server系のWindows OSと、Windows 7のProfessional/Enterprise/Ultimateエディションで利用できる。
ミラーを作成するには、ディスクを2台選んでボリュームを作成する。ハードウェアのRAIDカードのように、ミラー化したボリュームをストライプ化したり、逆にストライプ化したボリュームをさらにミラー化したりするといったことはできない(基礎解説「RAID基礎辞典」参照)。ミラーに利用できるのは2台のディスクだけである。
作成されたミラー・ボリュームは次のようになる。ディスク・サイズに違いがある場合は、大きい方のディスクの末尾が未使用のまま残ることになる。
ミラーを構成するディスクの1台に故障が発生するとどうなるであろうか。期待される動作としては、外見上はボリュームはそのままで(つまりミラーのD:ドライブはユーザーからはアクセスできるものの)、内部的にはエラーが記録され、ディスクの管理ツールには注意マークが表示されるなどの変化が見られるはずである。
そこでストライプ・ボリュームのときと同様に、diskpartコマンドを使ってディスク1(ミラーの最初のディスク)をcleanコマンドでゼロ・クリアしてみたところ、次のようになった。
ボリュームD:がそのまま残っているのではなく、いきなりボリュームD:は削除されてしまい(ユーザーからは見えなくなっている)、さらにミラー・ボリュームは「冗長の失敗」という状態になっている。この状態では、ユーザーはこのボリュームのデータに一切アクセスできない。
せっかくのミラーによる冗長機能なのに、これではあまり意味がないと思われるかもしれない。実はこれが仮想ディスク(による故障の再現)と実ディスクにおける大きな違いである。実ディスクの場合は、このようにいきなりすべてのデータが消えてしまうのではなく、最初は一部セクタの読み書きエラーなどから始まり、エラーの範囲が徐々に拡大していくことが多い。Windows OSでは、例えばディスク・アクセス中にエラーに遭遇すると何回かリトライし、それでもだめならミラーの冗長ディスクの方へアクセスする、というふうに動作する。ディスク内部でも何回かリトライを行うので、コンピュータのユーザーから見ると、ディスクへの読み書きがある特定のセクタ部分(特定のファイル)などで急に遅くなる、といった症状が出る。そしてイベント・ログにはディスク入出力関連のエラーが記録される。この段階でユーザーが気付けば、ディスクの交換やデータの退避といった適切な対応が可能だ。ただしハードウェアRAIDシステムと違い、このようなエラーが発生してもブザーを鳴らすといった機能はないので、管理者が気付かないと、より深刻な事態に陥る可能性がある(TIPS「ディスクの故障をイベント・ログで確認する」「エラーを無視してファイルをコピーする方法」参照)。
一般にディスクの物理的なエラーは、いったん始まると、そのエラー範囲や症状が急速に拡大/悪化することが多い。そのうち、ディスクがまったく応答しなくなるといったこともある。diskpartのcleanコマンドによる強制的なゼロ・クリアは、このどうしようもなくなった、致命的な状態のディスクに近いといえる。
ミラー・ボリュームを構成するディスクに致命的な障害が発生した場合に可能な対処方法は次の4つある。
1.はスパン・ボリュームやストライプ・ボリュームにおける障害発生時のように、そのミラー・ボリュームを全部削除してしまう方法である。これを実行するには、ディスクの管理ツール上でエラーのあるミラー・ボリュームを右クリックし、ポップアップ・メニューから[ボリュームの削除](先の画面の(7))を実行する。すると、不完全なミラー・ボリュームがすべて削除され、ディスクは未割り当て状態になる。ミラー・ボリューム上のデータが不要ならこの方法でよいだろうが、実際にはデータを取り出したいだろうから、これを実行する場合は十分注意する。いったん削除すると、データを復活させることはできない。
2.は、不完全なミラーのまま使用を続行する方法である。代替ディスクがすぐに用意できない場合はこれでもよいだろうが、残ったディスクに障害が発生するともう救う方法はないので、速やかに新しいディスクを用意してミラー・ボリュームを回復するのがよい。その場合は3.と4.の手順に従っていったんミラー・ボリュームを解除してシンプル・ボリュームに戻し、その後またミラー・ボリュームに変換する。
なお不完全なミラー・ボリュームであっても、単にドライブ名の割り当てが解除されているだけなので、新たにドライブ名を割り当てればユーザーがアクセスできるようになる。ドライブ文字を割り当てるには、ボリューム名を右クリック後、ポップアップ・メニューから[ドライブ文字とパスの変更]を選択し、適切なドライブ名を割り当てればよい。
3.と4.については次ページで述べる。
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