「文章下手」が原因で、コミュニケーション不全に陥ったことはないだろうか? 言葉足らずで相手の誤解を招いたり、指示がまったく伝わっていなかったり……開発現場を改善するための「文章コミュニケーション」方法を紹介。
こんな話を聞いたことはないでしょうか。
「開発チームのミスが原因で、顧客に余計な作業を依頼することになりました。作業依頼を送ったところ、『言い訳ばかりの会社など信頼できない。プロジェクトから外せ』と顧客の経営陣が激怒。文書を読み返してみたら、中身はほとんどミスの言い訳で、依頼事項は最後に数行あっただけでした。営業の責任者が出向いて頭を下げ、ようやく収まったんです」
「作業の指示を、開発グループのメンバー全員にメールだけで伝えました。誰からも質問が来なかったので理解されたものと安心していたところ、コードがバグだらけに。複雑な内容をあいまいな文章だけで伝えたため、メンバーの受け止め方がそれぞれ異なってしまったのです」
どちらも、文章が原因で生じた問題です。このようなことは、誰でも一度や二度は経験があるのではないでしょうか。そのたびに、「文章って難しい」と痛感することでしょう。
エンジニアにとって、文章はコミュニケーションの重要な手段です。社外内を問わず、エンジニアはさまざまな場面で文章によるコミュニケーションを行います。
『SEのための誰にでも伝わる文章術』では、提案書や要件定義書、テスト仕様書やユーザーマニュアルなど、“成果物”として作成する文書をテーマに取り上げました。ですが、エンジニアが書かなければならない文章は、対顧客の文書以外にもたくさんあります。
開発現場においても、文章でコミュニケーションする機会はたくさん存在します。
特に、メールは最もよく使うツールではないでしょうか。静かなオフィスでカタカタとプログラミングしながら、チームメンバーとメールでやりとりする――ほんの簡単なやりとりでも、口頭ではなくメールで行う現場は多いかと思います。
事務的な文章・文書は、顧客に提出する文書よりは分量が少なく内容も単純で、一見すると簡単そうに思えます。しかし、そこに“わな”があります。エンジニアが仕事をする現場では、文章・文書によるコミュニケーション不全がなんと多く生じることでしょうか!
本連載では、仕事で使う文章・文書が原因で生じる「現場のコミュニケーション不全」を改善するポイントを紹介します。
文章によるコミュニケーション不全が生じるのは、それなりの原因があります。まずは、なぜ文章によるディスコミュニケーションが生じるのか、その原因を押さえておきましょう。原因が分かれば対応方法が明らかになります。コミュニケーションをリファクタリングするのです。
エンジニアが記述する“事務的な”文章・文書には次のようなものがあります。
顧客・社内を問わず、かつては電話や立ち話で済ませた程度の簡単なやりとりや情報交換も、メールで行うことが増えています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.