本特集では、緊急時対応サイトなどを、可用性が高くアクセス数急増にも耐えられるクラウドサイトに生まれ変わらせる「gaedirect」を紹介してきました。前回の「Google Chart APIで作成する電力使用状況グラフ」では、Google Chart APIとマッシュアップして、電力の使用状況をグラフ表示してみましたが、今回はGoogle Maps APIと組み合わせて東日本大震災での津波の記録を表示し、さらにgaedirectの条件検索機能についても紹介します。
東日本大震災以前にも、大きな津波は起こりましたが、その実情について私たちが知ることができるのは、ほとんどの場合メディアからの文字情報などで、古いものでは古文書としての記録までたどるものまであったわけです。しかし今回の大震災では、図らずも日本でのICT機器の普及が本格化した時代での最初の大津波となっています。このため東北と関東北部の太平洋沿岸では多くの津波映像が動画などの映像として記録されました。
また、今回の震災で目立ったのが、地図表示です。さまざまなデータが、Webサービスの地図表示上に提供されていました。特にGoogle Maps APIは、JavaScriptですぐにマッシュアップができるので、多くのWebサービスで使われていました。
今回のサンプルでは、Google Maps APIを使ったマッシュアップで、記録された津波の動画を地図上にマッピングして閲覧できるようにしています。これによって、どこでどのような津波が来たのか地域ごとの実情を知ることができます。
津波はいつ来るか分かりませんが、今回のような大津波は随分と年月を経てからやって来るかもしれません。そして、そのときには津波の記憶もかなり薄れてしまっているかもしれません。しかし、大津波の実態とその恐ろしさを映像として残すことによって、薄れかけた記憶、そして津波を経験していない新しい世代の人々も、その恐ろしさを知り、万一の場合にも備えをおろそかにすることなく迅速に対応・避難し遭難を逃れる人が少しでも増えるのではないかと思います。
ここから、Google Maps APIとgaedirectを使用した地図情報を表示するサンプルを見ていきます。以下の図1はサンプルの管理者画面です。この画面は、前回紹介したようにバージョンIDがパスワード機能になっており、ユーザー画面では最初の「動画情報管理」が表示されないようになっています。
動画情報管理では、図1のように、都県(例:宮城県)、地域(例:南三陸町)と経度、緯度およびコメントを入力します。コメントは、津波の動画URLを図2のように入力しています。
入力後「登録」ボタンのクリックで動画情報が登録されますが、この他の「参照」「更新」処理も全て前回同様、gaedirectを使用して行われています。「条件検索表示」は最後に紹介することにして、次に画面下部の「地図情報表示」を見ていきます。
地図情報表示では画面下部の「地図表示」ボタンをクリックすると、図3のようなGoogle Mapsの地図が表示されます。図3では、北関東地域が画面に筆者のPCでは入りきれずに表示されていませんが、下にスクロールすると北茨木や千葉県の蓮沼などもマーカが表示されます。
図3の地図でマーカをクリックすると、図4のように吹き出しが表示されます。
図4は宮城県、南三陸町の位置にあるマーカからの吹き出し表示ですが、吹き出しの表示は動画へのリンクになっており、例えば図4で2行目のリンク「南三陸町志津川高校から見た津波の様子」をクリックすると、津波の動画映像が表示されます。
この他にも、地図上にマッピングされたマーカから東北および関東での津波の実態を動画で確認できます。
最初にも触れましたが、大津波は往々にしてその記憶が薄れたころに、またはこれからの世代の時代に来襲することが多いと思います。不幸にも今回津波にのまれてしまった人の中には、高台への避難を行わなかった人も多いと聞きます。実際、警報を聞きながらも避難せずに、流されそうになりながら辛うじて助かった人(親子)には、「多分ここには津波は来ないだろうと思い避難しなかった」と証言している人もいます。
しかし、このように避難しなかったために、その生命を落としてしまった人の中にも、このような津波の映像を見る機会があったら、また別の行動を取り、命を落とすことにはならなかった人もいたはずです。この動画はグーグルの動画サイト「YouTube」上にデプロイされているため、「YouTube」が廃止にでもならない限り閲覧できます。
一方で、筆者が今回の記事を準備している間に、再生不能になった動画がいくつかありました。年月を経て再生不能になる動画もさらに増えるかもしれませんが、後世まで伝えられる動画が残っていることを望みます。
次ページからは、今回のサンプルのソースコードを見ていきます。今回も画面は1つですが、機能的には大きく「サンプルでの地図・動画情報管理」と、前回お約束した「gaedirectでの条件検索機能」の2つに分けられます。
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