フィル・シラー氏の紹介を受けて登場したのは、SVP iOS Softwareのスコット・フォースタル(Scott Forstall)氏。まずは「Quick Update」として最近のiOSの販売状況を発表、「(iPadを含めて)市場の44%を占めて、iOSはMobile No.1 OSである」と、好調ぶりをアピールしました。
iOS 5には「1500の新しいAPIと、200の新機能がある」として、その中からMac OS Xと同じく「10 Key Features」が紹介されました。
Quick Updateで発表されたその他の数値は以下の通り。
iOS 5では、新たに「Notification Center」が追加されました。すでに「1000億以上のPush Notificationが送信されていて、よりよいUIが必要になった」としています。従来は、個別のNotificationを受信時に見ることしかできませんでしたが、2本指ジェスチャーで画面の最上部から引き出すような形で、Notificationの一覧を表示することができるようになりました。
また、ゲーム中などに画面に重なるように表示されていたダイアログが廃止されて、画面上部に邪魔にならない形でウィンドウが出るようになりました。人気ゲーム「Cut The Rope」を使って、ゲーム中にNotificationが届いてもそのままゲームを継続できる様子がデモされました。
この他にも、ロックスクリーンからスワイプ操作でNotification Centerを直接開けるようになるなどの変更が行われています。
Newsstandは、Subscription形式のコンテンツを一括管理するアプリケーションです。iTunes同様に、自分が購読しているコンテンツをブラウズとコンテンツを販売する機能が一体化しています。購読済みコンテンツは、バックグラウンドでダウンロードされます。
TwitterはiOSアプリの中でも人気が高いものですが、iOS 5ではTwitter連携がOS標準の機能として組み込まれています。提供される機能は全てのアプリケーションから共通で利用できる「シングル・サインオン」機能。また、iOSで撮影した写真にコメントを付けてダイレクトにTwitterに投稿できる他、Safariで閲覧中のページ、YouTubeのムービー、Mapsから位置情報をTwitterに投稿することもできます。
面白い機能として、TwitterとiOSのアドレス帳でプロフィール写真を同期できるようになりました。アドレス帳に登録された人がTwitterをやっている場合、いつも見慣れたプロフィール写真を取り込めます。
「モバイル・ブラウザのシェアでiOSは64%、Androidは27%」という数値が発表されたSafari。iOS 5では、待望のタブブラウザがサポートされ、高速に複数のタブを行き来できる様子がデモされました。また、リンクを「後で読む」ためのReading List機能が追加されました。リストに入ったURLは、Apple IDを共有する複数のデバイス間で同期され、どのデバイスからもブラウズできます。
Remindersは、シンプルなToDoアプリケーションです。複数のリストを作成し、ToDoアイテムを管理できます。iCalのToDoとの同期がサポートされます。面白い機能として、位置情報と連動して特定の場所に着いたり、そこから離れたりした場合に知らせてくれるアイテムを作成できます。
「iOSのカメラは、flickrで一番多く使われているカメラになりつつある」という紹介から始まったカメラは、ロックスクリーンからの直接起動や、ピンチ操作によるズーム、タップ&ホールドによるAE/AFロックなどの機能が紹介されました。また、ボリュームボタンをシャッターボタンの代わりに利用できるオプションがついにサポートされ、発表と同時に大きな拍手が起こりました(過去には、同じ機能を実現するカメラアプリがApp Storeの審査でリジェクトされていました)。
また、切り抜き・回転・赤目軽減などの簡単な編集機能も追加されました。後に出てくるPC Free化のために、個別のアプリにもサポートが追加されています。
「Most used app」と紹介されたMailアプリは、リッチテキストのサポートやインデント編集、メールボックスの作成を含むメッセージ管理、そして本文を対象とした検索など、デスクトップ同等の機能がサポートされた他、S/MIMEのサポートによる企業ユースの強化が行われました。また、Mail以外のアプリケーションも含めてテキストビューから組み込みの辞書機能を呼び出すことが可能になっています。
今回の数々の発表の中でも、ひときわ大きな拍手を浴びたのはiOSデバイスのPC Free化でした。「われわれはPost PCの時代にいる」として、iOSデバイスを所有しているがPCデバイスを持っていないユーザーが増えていることを指摘、iOSデバイスを最初に起動した際に必要だったiTunesでのアクティベーションがなくなり、Over The Air(OTA)でのOSアップデート、差分アップデートが実現しました。
また、先にも書いたようにアプリケーション自体のパワーアップも大きくPC Freeに寄与しています。機能面だけでなくアプリケーションのレイヤーも含めてユーザーをサポートする様子は、さすがと感じました。
いまや5000万ユーザーが利用しているというGame Center。ユーザーのプロフィール写真のアップロード、アチーブメントポイント、友達の友達をブラウズする機能、ゲームディスカバリー、そしてゲームの直接ダウンロードが可能になりました。
この他、ターンベースのゲームサポートが発表されました。具体的な例は提示されませんでしたが、複数のプレイヤーが交互にアクションを行ってゲームを進めていく、チェスなどがサポートされているようです。
最後に発表されたのは、iOSデバイスのユーザー間でテキストや写真、ムービーなどをやりとりする独自のメッセージングサービス、iMessageです。グループメッセージや、相手がメッセージを書き込んでいる途中の様子が分かるTyping Indicationがサポートされている他、ネットワークは3GとWifiのいずれにも対応し、やりとりは全て暗号化されます。こういったメッセージングツールは数多くありますが、相手が使っていなければ意味がありません。iMessagは、OS標準となることで人気を呼びそうです。
iOS 5のデベロッパ向けベータ版は、すでにDeveloper Connectionからダウンロード可能です。全てのユーザーを対象とした公開は「This Fall(この秋)」と発表されました。
今回発表された内容はアプリケーションのブラッシュアップが多く、OSのアップデートとしては小粒な印象もありました。ただ、iCloudを中心にした複数デバイス間の連係、そしてついに実現したPCとの決別など、横のつながりで大きなアップデートを実現しているともいえ、そうした「成熟」は後々大きな意味を持ってくるのではないかと感じました。
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