Microsoft SQL Serverの次期版、開発コード名「Denali」。SQL Serverとしては第4世代となり、機能や性能で大きく飛躍すると期待している開発者も多いかと思う。本連載ではDenaliの姿に迫っていく。
2010年11月に次期版のSQL Serverとして初めてDenaliのCTP(Community Technology Preview)が登場し、2011年7月にはWWPC(World Wide Partner Conference)に合わせてSQL Server Denali CTP3の提供が始まった。専用サイトも立ち上がり、Denaliは次期版としての知名度を高めつつある。
DenaliはSQL Serverとしては第4世代の製品となる。第1世代はサイベースが開発したコードがベースとなっていたSQL Server 4.2と6.5。第2世代はソースコードを大幅に書き換えて再出発したSQL Server 7と2000。第3世代は大規模システムで十分に利用できることを目指したSQL Server 2005から2008 R2まで。なおSQL Server 7まで使われていたバージョン番号で数えると、Denaliは「11」番目となる。
世代が変わるのはSQL Server 2005以来。SQL Serverの歴史からすれば大きな転換点を迎えることになる。気になる正式発表の時期だが、マイクロソフトによると「2012年内」とのこと。7年ぶりに新世代SQL Serverが登場するのだ。
Denaliで何が変わるのか。どう変わるのか。本連載では特にITエンジニアの目線でDenaliの姿を追っていく。
日本マイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部 クラウド&アプリケーション プラットフォーム製品部 エグゼクティブプロダクトマネージャーの北川剛氏(写真)は「Denaliでは全方位に強化を加えていますが、データベースエンジンとしての可用性向上にかなり力を入れています」と“可用性”に最も力を込める。
マイクロソフトは、可用性向上のためにDenaliに「SQL Server AlwaysOn」と呼ぶ新機能を追加した。北川氏はこの機能によって、「可用性の面で競合他社よりも一歩先に出た」と自信を見せる。
「可用性」という話になると、Oracle DatabaseのRAC(Real Application Clusters)を思い浮かべる読者も多いだろう。北川氏は「SQL Server AlwaysOnの考え方はRACとは違います。そしてRACを超えるものになったと考えています」と胸を張る。Oracle DatabaseのRACに正面から挑もうという気概にあふれている。北川氏は「健全な競争があってこそ、業界は活性化します」と断言する。
従来のSQL Serverも、「データベースミラーリング」や「フェールオーバークラスタリング」など、可用性を高める機能を備えているが、構成や設定方法などに制限があり、可用性を大きく高めるには制限があった。例えば、フェールオーバークラスタリングを利用すると、プライマリとプライマリが停止したときに動作を引き継ぐセカンダリの2台のサーバで可用性を高めることができる。しかし、共有ディスクを使わなければならない。そして、データベースミラーリングで自動フェールオーバーまで実現しようとすると、同じデータを保存する2台のサーバのほかに監視用サーバも必要になるなど、コストがかかる。
DenaliのSQL Server AlwaysOnではプライマリとセカンダリのペアを、従来の共有ディスクを使う方法に加え、共有ディスクを使わない方法でも構成できるようになった。これで、より可用性が高い構成を少額のハードウェア投資で実現できるようになった。また、フェイルオーバーでサーバ切り替えにかかる時間も大幅に短縮した。
また、フェイルオーバーでサーバ切り替えにかかる時間も大幅に短縮した。この時間だけでなく、Denaliではサーバの停止時間を極力短くするように配慮している。その例として、DenaliがWindows Serverの“Server Core”でも動作するようになったという点が挙げられる。
Server Coreとは、GUIを持たず、コマンドラインですべてを操作するようにしたWindows Serverの構成だ。この構成で動かしていれば、Windows Updateの際にGUI関連のアップデートをインストールする必要がなくなる。結果、アップデートに伴う再起動を最大で60%減らせるという。
SQL Server AlwaysOnと呼ばれるDenaliの高可用性ソリューションについては、次回以降で詳しく解説していく。
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