連載
» 2011年09月22日 00時00分 公開

「トップページが見えません」を回避せよYahoo! JAPANのIPv6対応大作戦(1)(2/2 ページ)

[平田源鐘,ヤフー株式会社]
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World IPv6 Dayへの参加

 去る2011年6月8日に、ISOC(Internet Society)の声掛けにより、世界中のサイト運営者がIPv6によるサービスを提供する「World IPv6 Day」と呼ばれる世界的なイベントが開催されることになりました。われわれもIPv6の普及に少しでも貢献したいという思いで、参加を表明することになりました。

 このイベントのそもそもの目的は、IPv6普及時の課題抽出を行うというものです。どうせ参加するのであれば、日本で最もアクセス数の多いYahoo! JAPANのトップページをIPv6化対応することで、IPv6の普及や課題抽出に貢献できるのではないかとの思いから、準備を始めました。

【関連記事】

GoogleがメインサービスをIPv6化、6月8日はWorld IPv6 Day(@ITNews)

http://www.atmarkit.co.jp/news/201101/14/ipv6.html


プロキシサーバ方式によるIPv6化と課題

 とはいえ、World IPv6 Dayへの参加に当たり、ページが見られないなどの影響を既存のお客さまに与えることは、可能な限り避けなくてはなりません。また、その影響を事前に把握しておく必要があります。

 そこで配信方式については、すでにIPv6でのテストが完了して配信実績のある、前述のYTS(Yahoo Traffic Server)を利用した「プロキシサーバ方式」を採用しました。

 このようにしてアプリケーション側の準備は粛々と行われたものの、もう1つ別の問題を解決しなくてはなりません。World IPv6 Dayの当日、「www.yahoo.co.jp」には、IPv4とIPv6、両方のアドレスが振られることになります。ところが、事前調査の結果からは、「インターネットのデータ到達性」の問題によって、0.2%のお客さまがトップページ「www.yahoo.co.jp」を見られなくなる可能性があることが分かっていました。

【トップページを見られなくなるインプレッション数の割合】

 事前調査では、IPv4/IPv6へのデュアルスタックのアドレスを持つサーバに対するアクセスの分析を行いました。インプレッション数を累積して集計した結果、以下の通りとなりました。

アクセスパターン アクセス成否 集計数 割合(%)
IPv4でアクセスしたケース 成功 61373994 99.7711%
IPv6でアクセスしたケース 成功 30175 0.0491%
アクセスできないケース 失敗 110660 0.1799%

【ユニークユーザー数ベースで見られなくなるお客さまの割合】

 インプレッション数の累計から、Yahoo! JAPANトップページを見られなくなる可能性のあるお客さまの割合を分析した結果、以下の通りとなりました。

ユニークユーザー数 集計数 割合(%)
Y!トップを見ることができるお客さま 22412589 99.8%
Y!トップを見ることができないお客さま 44917 0.200%

 World IPv6 Dayへの参加は決めたものの、われわれはサービスプロバイダとして、すべてのお客さまにサービスを提供する義務があると思っています。プロジェクトでは、トップページを見られない可能性のあるお客さまにどう対応するかに焦点を置きました。

事前アナウンスと救済措置は入念に

 課題分析の項でも書きましたが、「インターネットのデータ到達性」の問題については、サービスプロバイダ側で対策できる手法は限られています。

 そこで今回、障害が発生しそうなお客さまに、事前に告知、ないしチェックできる方法を提供し、ページを見られないお客さまには障害の回避策を提示する方法を考えました。具体的な方法は以下の通りとなります。

(1)Yahoo! JAPANトップページのバナーによるアナウンス

 トップページの左上部分に、バナーで「World IPv6 Day開催のお知らせ」を告知しました。そして、当日障害が発生しトップページを閲覧できない可能性のあるお客さまに対しては、特別なバナー(「問題が発生するケース」)を表示することで、障害について詳細な情報を提供するとともに、回避方法へ誘導を行いました。

画面1 Yahoo! JAPANトップページに表示したバナー 画面1 Yahoo! JAPANトップページに表示したバナー
IPv4 IPv6
成功 ×
成功 ×
成功
失敗 × ×

 この特別なバナーは、JavaScriptを利用して作成しました。IPv4/IPv6両方のアドレスを持つドメインのWebサーバから5秒以内に画像を取得できなかった場合、障害が発生する可能性のあるお客さまと見なして表示されます。

 判定方法は以下の図の通りです。IPv4サーバの画像、もしくはIPv6サーバの画像のいずれかが取得できた場合、成功とみなします。

図2 障害が発生する可能性のあるお客さまの判定方法 図2 障害が発生する可能性のあるお客さまの判定方法

(2)当日の状態をセルフチェックできる特集ページの開設

 当日とほぼ同じ状況を再現することで、お客さまが自分自身で当日の挙動をチェックできる特集ページを作成しました。

 画面2の通り、iframe内にIPv4/IPv6の双方のアドレスを持つ「v46.www.yahoo.co.jp」ドメインを準備し、擬似的にWorld IPv6 Dayと同じ状況のトップページを表示させることで、当日の挙動をチェックできるようにしました。

画面2 当日の挙動をチェックできる特集ページ 画面2 当日の挙動をチェックできる特集ページ

(3)v4.www.yahoo.co.jpの設置

 当日トップページが見られないお客さまに対しては、Yahoo! JAPANから誘導する方法がありません。そこで、(1)(2)で問題が発生する可能性のあるお客さまには、World IPv6 Dayの1週間前から、「v4.www.yahoo.co.jp」へアクセスすることによる障害回避方法をアナウンスする必要がありました。

(4)お客さまへの問い合わせ対応

 当日は、カスタマセンターに「トップページが見えないのですが」といった問い合わせがあることを考慮し、想定問答集を準備しました。

たかが0.2%、されど0.2%

 World IPv6 Dayへの参加に際しては、障害が発生する可能性があるお客さまへの対応が焦点となりました。

 一般の方にとっては「影響があるのはたった0.2%だけではないか」と思われるかもしれませんが、ライフラインを維持するサービスプロバイダとしては、これは無視できない数字です。World IPv6 Dayへの参加に当たって、社内で少なからず是非の議論が持ち上がったのも事実です。最終的には、IPv6の普及という目的のため、十分なアナウンスを行った後に実施することになりました。

 今後もIPv6の本格的な普及に備え、これ以上の事前対応を行う前提で準備を続けていきたいと思います。

 次回は、インフラ構築の現場視点から見たIPv6環境整備と、World IPv6 Dayに向けた事前調査、そして当日に観測されたデータなどを紹介します。


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