2011年7月に発表されたVMware vSphereのメジャー・バージョンアップ、VMware vSphere 5。ITインフラのクラウド化をターゲットとしたさまざまな新機能を備えている。本連載では、サーバ仮想化ソフトウェアという範疇を超えて、企業の社内や事業者のクラウド基盤へ進化するVMware vSphere 5を、特徴的な機能に絞って紹介する
「分散仮想スイッチ」という機能がvSphere 4で初めて提供された(分散仮想スイッチについては過去の記事をご覧いただきたい)。
その後約2年が経過し、vSphere 5のネットワークに関する新機能はほとんどがこの分散仮想スイッチ上で提供される状況となっている。2年前は新機能であった分散仮想スイッチも、いまやインフラ設計の基準となりつつあるといえるのかもしれない。
今回はvSphere 5の新機能「ネットワーク編」ということで、vSphere 5で新規に提供される様々なネットワーク系の新機能について紹介する。
Link Layer Discovery Protocol(以降LLDPと略記)はデータリンク層の接続を検出、管理するプロトコルで、今日の多くのネットワーク装置がこれをサポートしている。LLDPではデータリンク層で様々なやりとりが行われ情報が収集されるため、これをうまく利用すると管理者は運用工数を大きく削減することができる。
例えば、あるホストのイーサネットポート2番が、物理スイッチの何番ポートに接続されているのかを調べたいという状況を考えてみよう。この場合、最もシンプルな方法として物理ケーブルを辿るという方法がある。もちろんそれが容易に可能な状況であれば問題はないが、実際のデータセンターで物理ケーブルを辿るのは困難な場合が多く、また管理者が業務を行っている拠点とマシンが設置されている拠点が離れている場合などもあるため、場合によっては現実的に難しいという場合がある。
LLDPを用いるとこれを解決することができる。このポートはどの物理スイッチの何番ポートに結線されているのかといった情報がネットワーク装置間のやりとりによって取得されるため、管理者はその情報を構造的に把握することができる。
よく似た機能としてCisco Discovery Protocol(CDP)というものがある。vSphereでは以前のバージョンよりCDPをサポートしていたが、vSphere 5ではLLDPのサポートも追加された。LLDPはIEEE 802.1ABで標準化されている技術であるため、今後のネットワークインフラの設計においてはLLDPを用いる場合が増えることが予想される。
LLDPの利用には、分散仮想スイッチが必須となる。分散仮想スイッチのプロパティ画面にこの設定箇所が設けられている。プロトコルのタイプとしてCisco Discovery ProtocolとLink Layer Discovery Protocolを選択可能になっているので、利用するほうのプロトコルをここで選択する。
また、ディスカバリプロトコルの動作モード(「Operation」の項目)をListen、Advertise、Bothより選択する。Listenに設定しておくと、ネットワーク上を流れるディスカバリプロトコルの情報の収集のみを行い、自身の情報は発信しないというモードで動作する。Advertiseに設定すると自身の情報を発信する。Bothに設定するとその両方を行うという動作になる。サーバ側を管理するという視点では、通常Listenで実用上問題ないが、サイトの運用ポリシーによってはサーバ機からもAdvertiseさせる場合があるため、その場合はAdvertiseもしくはBothにセットしておく。
ネットワーク装置側が発信するLLDP情報を受信できた場合、その情報はvSphere Clientのユーザインターフェイスから参照することができるようになる。これにより、近傍となる装置の基本情報の確認が可能となる。
また、動作モードをAdvertiseもしくはBothに設定していた場合、対向スイッチ装置側からもESXiホストの情報を確認できるようになる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.