DevQuiz実施に伴い、イベントの内容にも意外な効果が現れた。「イベントの出席率が非常に高くなった」というのだ。
「勉強会で取りあえずATNDには登録するが、実際には参加しない」という問題が根強くあるように、グーグル主催のイベントでも、登録だけして来場しない、という人がいた。ところが、DevQuizを始めてからは、かなりの高確率で合格者がイベントに参加するようになったという。「会場に来てもセッションに出ない人がある程度いたのが、DevQuiz実施後はセッション参加率も増えました」と、石原さんは意外な発見を語る。
参加権を「頑張って勝ち取る」ことの効果だろうか。イベントでDevQuizの「答え合わせ」をしていることも大きな影響を与えているかもしれない。その他、弁当のごみの後片付けがきちんとされるようになった、などのちょっとした変化もあったという。
DevQuizは、「20%ルール」※で作られている。初回DevQuizの成功以降、問題作りには10人以上のエンジニアが参加している。20%プロジェクトで10人以上が参加するのはグーグルでも珍しく、「非常に大きなプロジェクト」といっていいそうだ。
世界中のGoogleでの知名度も高まりつつある。「ロブ・パイクさんに応援してもらった時は本当にうれしかったですね」と、石原さんは語ってくれた。ロブ・パイク氏といえば、ベル研究所でのUNIX開発に従事した1人であり、現在は米グーグルでGo言語の開発に関わっている、ソフトウェア史の偉人である。
DevQuizは、今では数カ国に広がっている。現在開催しているのは、ブラジル、アルゼンチン、オーストラリアの4カ国。各国のエンジニアが、それぞれ独自に問題を作っている。
例えば、英語圏では謎の古代言語「Googlon」の解読問題など、ユニークなものが生まれた。
●海外版DevQuizの問題
問題文・和訳
このテキストはGooglonという古代の謎の言語です。長年の研究の結果、言語学者たちはこの言語の基本的特徴を見つけ出しました。
まず、この Googlon では、文字は2つのグループに分かれます。g、q、p、v、e、f は“foo文字”と呼ばれ、それ以外は“bar文字”と呼ばれます。
言語学者たちによると、Googlon言語では、前置詞は必ず3文字でできており、bar 文字で終わり、かつ“c”は含まないそうです。だから、テキストAでは、53個の前置詞があるのはすぐに分かります。では、テキストBに前置詞はいくつあるでしょうか?
面白いのが、「各国のクイズ好き度の違い」だ。日本のDevQuizは相当に凝った作りをしていて、問題の難易度もかなり高い。もともとクイズ好きが集まっていたせいもあるだろうが、この凝り性ぶりは、世界でも群を抜いているという。DevQuizを実施している4カ国は、日本よりもう少しライトな作りになっているそうだ。
石原さんの個人的感覚では「日本と欧州はクイズ好きの文化。アメリカは何かメリットがないとクイズはあまりやらない文化」なのだそうだ。だが、米グーグルでも、DevQuizのようなプログラムをやる可能性は決して低くはない。
今後もDevQuizのような試みは、世界中で広がるかもしれない。
星暁雄(ほしあきお)
Tジャーナリスト。1986年から2006年まで日経BP社に勤務。1997年から2002年までオンラインメディア『日経Javaレビュー』編集長を務める。
イノベーティブなソフトウェア分野全般に関心を持つ。今はAndroidが特に興味深い分野だと感じている。
もう1つの関心事は、ITの時代のメディアのアーキテクチャ。2008年、次世代メディアの探求の1つとして、ソーシャルアノテーションサービス『コモンズ・マーカー』を公開。
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