install.wimイメージ・ファイルとimagex.exeツールの用意ができたら、次はUSBメモリに対してWindows 8 CPのファイルをコピー/展開する。このためには、Windows 7 OSに付属するdiskpart.exeコマンドを利用する。
作業用のWindows 7システムにUSBメモリを接続して、正しく認識されることを確認する(タスク・バーにUSBメモリ接続されたデバイスの一覧が表示されるし、フォーマット済みのドライブならエクスプローラで確認できるだろう)。
次に管理者権限のあるコマンド・プロンプトを開き、diskpartコマンドを起動する。ここで行うべき作業は、フォーマットするべきディスクの確認、ディスクの初期化、プライマリ・パーティションの作成、パーティションのアクティブ化、NTFSでのクィック・フォーマットである。
※2台目として接続した500GbytesのディスクにWindows To Goをインストールしてみる。作業はWindows 7上で行っている
D:\Work>diskpart…diskpartの起動
Microsoft DiskPart バージョン 6.1.7601
Copyright (C) 1999-2008 Microsoft Corporation.
コンピューター: UXPC251103
DISKPART> list disk…ディスクの確認
ディスク 状態 サイズ 空き ダイナ GPT
### ミック
------------ ------------- ------- ------- --- ---
ディスク 0 オンライン 931 GB 0 B …Windows 7のディスク
ディスク 1 オンライン 465 GB 465 GB …Windows To Goで使う500Gbytesのディスク。ここにインストールしてみる
DISKPART> select disk 1…ディスクの選択。番号を間違えないように
ディスク 1 が選択されました。
DISKPART> clean…ディスクの初期化。既存の内容はすべて消去されるので注意
DiskPart はディスクを正常にクリーンな状態にしました。
DISKPART> create partition primary size=64000…プライマリ・パーティションの作成。ここでは64Gbytesだけ使用。size=〜を省略すると、全領域が1つのパーティションになる
DiskPart は指定したパーティションの作成に成功しました。
DISKPART> list par…作成したパーティションの確認
Partition ### Type Size Offset
------------- ------------------ ------- -------
* Partition 1 プライマリ 62 GB 1024 KB …これが作成されたパーティション
DISKPART> active…パーティションのアクティブ化。GUIのディスクの管理ツールでは、このアクティブ化ができない
DiskPart は現在のパーティションをアクティブとしてマークしました。
DISKPART> format fs=ntfs quick label="WinToGO"…NTFSでクィック・フォーマット
100% 完了しました
DiskPart は、ボリュームのフォーマットを完了しました。
DISKPART> assign…ドライブ文字を割り当てる
DiskPart はドライブ文字またはマウント ポイントを正常に割り当てました。
DISKPART> list vol…ボリュームの確認
Volume ### Ltr Label Fs Type Size Status Info
---------- --- ----------- ---- ---------- ------- --------- --------
Volume 0 F DVD-ROM 0 B メディアなし
Volume 1 G DVD-ROM 0 B メディアなし
Volume 2 SYSTEM RESE NTFS Partition 100 MB 正常 システム
Volume 3 C WIN7NOTE NTFS Partition 292 GB 正常 ブート
Volume 4 D WORKVOL NTFS Partition 595 GB 正常
* Volume 5 E WinToGO NTFS Partition 62 GB 正常 …作成したパーティション。ドライブ名に注意
DISKPART> ◆bgcolor=yellow◇exit…diskpartの終了
DiskPart を終了しています...
D:\Work>
パーティションが用意できたら、次はimagex.exeコマンドを使って、Windows 8 CP版のOSイメージを展開する。
imagexコマンドは、「imagex /apply <WIMファイル名> <イメージ番号> <イメージ・パス>」のように使う。<WIMファイル名>は、展開したいwimファイルのパス名、<イメージ番号>はWIMイメージの中に含まれているイメージの番号(1つのWIMファイルには、複数のエディションのイメージを格納できるので、その番号を指定する)、<イメージ・パス>は展開先のパスである。今回の例では32bit版のWindows 8 CP版のイメージを、E:\として用意したパーティション(実際のドライブ名は先のdiskpartコマンドの結果によって異なるので注意)に書き込んでみる。メディアにもよるが、ハードディスクなら10〜20分程度、USBフラッシュメモリなら数時間(書き込みが遅いため)というところである。
※imagexコマンドを使ってWindows 8 CP版のOSイメージを展開する
D:\Work>dir…WIMファイルとコマンドの確認
ドライブ D のボリューム ラベルは WORKVOL です
ボリューム シリアル番号は E0B5-F6A4 です
D:\Work のディレクトリ
2012/03/26 16:24 <DIR> .
2012/03/26 16:24 <DIR> ..
2009/07/14 07:10 481,680 imagex.exe …imagexコマンド
2012/02/18 22:36 2,944,186,746 jpn-win8cp-x64-install.wim
2012/02/18 20:23 2,195,993,991 jpn-win8cp-x86-install.wim …これを展開してみる
3 個のファイル 5,140,662,417 バイト
2 個のディレクトリ 377,516,277,760 バイトの空き領域
D:\Work>imagex /apply jpn-win8cp-x86-install.wim 1 e:\…imagexで書き込む。64bit版でも同様
ImageX Tool for Windows
Copyright (C) Microsoft Corp. All rights reserved.
Version: 6.1.7600.16385 …Windows AIKに含まれているimagexのバージョン
[ 100% ] Applying progress …実行中はここに進行状態が表示される
Successfully applied image.
Total elapsed time: 12 min 50 sec …USB 2.0で接続した2.5インチのハードディスクでは、13分弱で終了した
D:\Work>dir e:…作成されたディスク内容の確認
ドライブ E のボリューム ラベルは WinToGO です
ボリューム シリアル番号は E44C-A591 です
E:\ のディレクトリ
2012/02/18 17:20 24 autoexec.bat
2012/02/18 17:20 10 config.sys
2012/02/18 17:47 <DIR> PerfLogs
2012/02/18 20:11 <DIR> Program Files
2012/02/18 17:47 <DIR> Users
2012/02/18 20:12 <DIR> Windows
2 個のファイル 34 バイト
4 個のディレクトリ 61,701,525,504 バイトの空き領域
この例では、作成に要した時間は13分弱、作成されたディスクの使用量は5.5Gbytes程度であった。コマンドの実行中は予測終了時間などが表示されるので、遅いデバイスの場合は気長に待とう。
ファイルの展開が完了したら、次はこのUSBメモリにブート・プログラムを書き込み、起動できるようにする。現在はまだファイルが書き込まれただけの状態なので、ブートすることはできないからだ。
ブート・プログラムを書き込むには、OS標準のbcdboot.exeというコマンドを利用する。これはWindows 7やWindows Server 2008 R2以降で用意されているコマンドである。それ以前のOSを使っている場合は、いったんWindows 8 CP版をインストールして、そこに含まれているbcdboot.exeコマンドを使うとよいだろう。BCDとはブート構成データ・ストアの略であり、Windows Vista/Windows Server 2008以降で導入されたブートのメカニズムである(以前のboot.iniに代わるもの)。詳細についてはTIPS「bcdeditでVista/Windows Server 2008のブートOSメニューを変更する」を参照していただきたい。
bcdbootコマンドは、「bcdboot <Windowsソース> /s <ブート・ドライブ>」のように使う。<Windowsソース>には、先ほど展開したWindowsイメージのフォルダ(「?:\Windows」フォルダを指定する)、<ブート・ドライブ>には、ブートするべきドライブ名を指定する。今回の例ではE:\Windowsフォルダに展開しているので、「bcdboot e:\windows /s e:」とする。
なおWindows 8のbcdbootコマンドにはさらにブート方式を指定するオプションが追加されている(詳細はWindows 8の「bcdboot /?」で確認のこと)。「/f BIOS」なら従来と互換(Windows 7のbcdbootに相当)、「/f UEFI」ならUEFIファームウェア経由でのブート、「/f all」なら通常ブートとUEFIブートの両用、となる。今回はMBR形式のディスク上にNTFSのパーティションを1つ作っただけなのでUEFIブートする必要はない(これは先のimagexコマンドで64bit版のWindows 8 CPのイメージを書き込んだ場合も同じ)。Windows 7上のbcdbootコマンドで十分だ(UEFIについては関連記事参照)。
※ブート情報を書き込む
D:\Work>bcdboot e:\Windows /s e:…bcdbootの実行。「e:」は環境に合わせて変えること ブート ファイルは正常に作成されました。
D:\Work>
以上で作業は完了である。後はシステムに接続してUSBメモリからブートすればよい。USBメモリからブートさせる方法はシステムごとに異なるので詳しくは触れないが、一般的なPCなら、起動時に[F2]や[F10][F12]などのファンクション・キーを押していると、ブートするデバイスを選択する画面が表示されるものが多い(詳細は各機種のマニュアルを参照のこと)。そこで、例えばUSBメモリを選択すれば、そのドライブからブートする。いちいち選択するのが面倒なら、BIOSセットアップなどでUSBメモリからの起動の優先順位を上げればよいが、それだと通常使用時に余計なメッセージが出たりするかもしれないので(Windows OSが入っていないUSBメモリを接続していると、起動に失敗するなど)、各自の環境や用途などに合わせて設定していただきたい。
ところでWindows To Goを起動すると、最初は、Windows 8の初期設定作業(デバイス・ドライバのインストールなども含まれる)が始まる。そのときシステムが自動的に再起動するが(現在のWindows 8 CP版では、最低1回の再起動が要求される)、手動でブート・デバイスを選択するようにしていると、この再起動で、USBメモリではなく、オリジナルのWindows OSが起動するかもしれない。その場合は、改めてシステムを再起動し、USBメモリを選択してブートしていただきたい。
初期設定作業では、プロダクト・キーの入力やライセンス条項への同意、コンピュータ名の入力、(必要なら)ワイヤレス設定、ユーザー名(アカウント名)の入力などを行う。すべての初期化作業が終了すると、通常のWindows 8のスタート画面が表示される。ハードディスクで利用しているなら、この初期化作業にかかる時間は通常のWindowsのインストールとほぼ同じであるが、USBフラッシュメモリのような遅いデバイスを使っていると(USBフラッシュメモリは、読み出しは速いが、書き込みはかなり遅い)、この初期化作業で数十分とか、1〜2時間程度かかることもある。初期化が一度済んでしまえば、次回からは高速に起動する。
いったん起動すれば、その操作感などは通常のWindows 8 CP版の場合と同様である。アプリケーションが必要なら、通常と同様にしてインストールすれば、どこでも同じように動作する環境が構築できる。
[メモ]キーボード配列に関する注意
以上の手順でWindows To Goをインストールできるが、キーボードの配列が英語101キーボード配列になっていることがある。 これを直すには、[システムのプロパティ]から[デバイス マネージャ]を起動してキーボードのプロパティを開き、[ドライバー]タブから[ドライバーの更新]を実行する。そして[コンピューターを参照してドライバー ソフトウェアを検索します]をクリックして[コンピューター上のデバイス ドライバーの一覧から選択します]を選ぶ。[互換性のあるハードウェアの表示]のチェック・ボックスをオフにして、「標準 PS/2 キーボード」から「日本語 PS/2 キーボード (106/109)」へ変更する。これで直るはずであるが、再起動すると元に戻ってしまうことがある。どうしても変更できないようであれば、以下のサポート技術情報に基づいて、レジストリを変更する。
Windows OSをUSBメモリやハードディスクに入れて持ち運べるようになるWindows To Goは、非常に有用な、Windows OSの新しい活用方法だといえる。ハードディスクやSSDを使えば十分快適に使えるが、USBメモリを使うと非常に遅く、おすすめできない。実験するなら、なるべく高速なデバイスを用意するのがよいだろう。
なお小型のUSBメモリは紛失や盗難などが心配だが、Windows To Goの場合は、より深刻なので注意が必要である。なにしろWindows OSとユーザー・アプリケーション、データがすべて丸ごと入っているのだから、ノートPCを紛失するのとほぼ同様の危険性がある。安全のためには、BitLockerで暗号化をかけるなどの対策が必要である(今回はその方法は省略する)。
「[Windows 8プレビュー] Windows 8 Consumer Preview ―― 再構築された次世代Windows ―― 」
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