私物のスマホやノートPCを組織的に業務に活用する「BYOD」が新たなトレンドとして注目されている。なぜいまBYODなのか? BYODのメリットとデメリットは?
企業内において、従業員が持ち込んだ私物のノートPCやスマートフォンなどのデバイスを業務に活用すること。「Bring Your Own Device(自分の所有するデバイスを持ち込む)」の略。
以前から、私物デバイスの利用を許可している企業はあったが、最近注目されているBYODでは、私物デバイスを安全に利用可能にするためのさまざまな技術を導入して、積極的に活用させようという点が異なる。スマートフォンやUltrabookに代表される可搬性の高いノートPCの登場から、BYODを導入する企業が増えているという。
企業側のメリットとしては、高性能なノートPCやスマートフォンを導入コストなしに利用できること、従業員が使い慣れたデバイスを利用するため生産効率(仕事の効率)が向上すること、社内だけでなく自宅や出先でも同じように業務ができるようになること、などが挙げられる。
一方、従業員の所有物であるため、デバイスの管理が十分に行えず、ウイルス感染や紛失・盗難に伴う情報漏えいの可能性が高くなるなど、セキュリティ面にはやや不安が残る。また、利用するサーバのライセンス管理が難しいという面もある。さらにスマートフォンにおいては、高性能な機種が次々とリリースされることから、IT管理者が新しいデバイス上でサービスが正しく利用できるか検証するための手間とコストが増えるという懸念もある。
ただ、こうしたマイナス面については、クラウド・コンピューティングの活用でローカルにデータを残さないようにしたり、デバイスを紛失・盗難の際に遠隔でロックできるようなセキュリティ管理ソフトウェアを利用したりといった、新しい技術によって克服されつつある。検証についても、HTML5+CCS3を利用してなるべくデバイスに依存しないようなWebアプリケーションとすることで、手間とコストが削減できるようになってきている。
むしろ私物デバイスの利用を許可し、クラウドなどを活用したり社外での利用を可能としたりすることで、通勤や移動時間、会議の合間などを効率的に使えるようになり、仕事の効率化が図れるという。例えば、通勤時間に前日夜間に届いたメールを確認したり、会議の合間に出張の予約をしたり、といったことが私物のスマートフォンで行えれば、業務時間を本来の仕事により集中させることができる。インテルによれば、BYODを活用することで、1日当たり47分間のこれまで無駄になっていた時間が仕事に活用できるようになったということだ(「インテル IT 2011〜2012 年パフォーマンス・レポート」の8ページ目参照のこと)。
もちろん、安易にBYODを導入すれば、ウイルス感染や情報漏えいなどのセキュリティのリスクを高めてしまうだけになってしまう。BYODを活用するには、私物デバイスでアクセスできるサービスやデータを限定したり、スマートフォンなどで利用できる会議室予約システムや出張手配システムといったアプリケーションを用意したりすることで、リスクの軽減や利便性の向上を図ることが重要である。私物デバイスの利用を単純に禁止したり、なし崩し的に黙認したりするのではなく、クラウド・サービスなどを含めて、私物デバイスをどのようにしたら活用できるのかを考える時期に来ているのではないだろうか。
「用語解説」
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