パネルディスカッションCTO編は「CTO side:ベンチャーCTO激論! これから採用したいWeb技術」。ベンチャー企業の技術担当として取り組んでいるテーマ、注目している技術を語った。
――主要サービスと、会社のステータスについて教えてください。
エニグモ 川嶋氏 「ユーザー数90万人規模の主力サービスである、個人対個人の買い物サイト『BUYMA』、スマートフォンでファッション写真を共有する『stulio』を開発。当面はファッションとWebをやろう、と考えている会社です」
エムワープ 野村氏 「私は、マクロミルの戦略子会社として立ち上がった同社に招聘された立場です。うちの大きなミッションは、Web上のレコメンデーションエンジンを構築すること。そこで、インタレストグラフのサービス『POPCORN』などのサービスを立ち上げ、各種データを収集している段階です」
ハイベロシティ 和泉氏 「Webページのリコメンドの技術を開発しています。Facebookアプリ 『Hivelo Social Apps』などを運営しています。無料のFacebookアプリを組み合わせ、中小企業などがFacebookを活用しやすくするのが狙いです」
――エンジニアなら気になるところだと思うのですが、CTOの皆さんは現役でコードを書いたり、サーバを構築したりしていますか?
3人 「しています」
――皆さん、即答ですね。では、「提供しているサービスで利用している技術の構成」や、「これから来ると思う技術、採用したい技術」について教えてください。
エニグモ 川嶋氏 「BUYMAは主にPHPで実装していますが、Javaも使います。MySQLを使っていますが、初期に開発した部分ではMicrosoft SQL Serverも利用しています。金曜午後はエンジニアは何をやってもいい決まりがあるので、その時間を使って、新たな技術の研究に取り組んでいます。HTML5やNFCは、うまく使えば面白そうですね」
エムワープ 野村氏 「UIにはjQuery、ネイティブアプリ開発ではTitanium Mobile、サーバサイドではPHPを利用。UIがらみでJavaScriptエンジニアの人数が増えていることもあり、サーバサイドJavaScriptには基礎研究のような形で注目しています」
ハイベロシティ 和泉氏 「サーバサイドではnginxとMySQL。PHPは“中途半端だけど何でもできる”ので使っています。Hadoop、分散KVSとしてCassandraも。Java側とPHP側をRESTで結ぶのが最適な形かと思います。スマートフォンアプリの開発では、教育コストを下げるためにTitanium Mobileを使っています。スケールしないので、RDBMSをメインで使うのはやめていきたい。NoSQLのRedisには注目しています」
――開発体制や開発プロセス、教育体制の構築は、どのような工夫を行っていますか。
エニグモ 川嶋氏 「ディレクター、エンジニア、デザイナーの3人で1組。大規模なプロジェクトだと、サーバ側とクライアント側でエンジニアを分ける場合もあります。変に階層を増やすことはしないようにしています。相互レビューを必ずするのが、うちのチームの特色。『レポートは簡単でいいから、勉強会にどんどん行っていいよ』という空気を作るようにしています」
エムワープ 野村氏 「UIとサーバサイドで、1人と2人といったふうに分けています。ディレクタはきっちり置くよう意識していますね。今は30人ぐらいのチーム。1人1人の様子がよく見えます。サービスのリリース後には夜中まで問い合わせ対応をしていたり、スマートフォンアプリのマーケット評価で批判を受けた部分に対応しつつ、夜中に泣いていたり。そういうところが見えて、励ましたりできるのはいいこと。前職では、人を育てないと自分の仕事が減らないので、がむしゃらでしたが、今は違います。素養がある新人なら2カ月ぐらいでコードを読めて書けるようになるやり方を見つけているので、それを組織で共有していきたい」
ハイベロシティ 和泉氏 「リリースするアプリ1つ1つは大きなものではないので、マーケティング、企画、開発、リリースまで1人で担当しています。セミナーや勉強会には積極的に参加してほしいと思っています。本は自由に買ってもらう。1冊しかないと独占する場合があるので、同じ本を2冊以上買うのも自由にしています」
――最後に、エンジニアとしてベンチャーでこそ積める経験、大手企業では得られない経験を教えてください。
エニグモ 川嶋氏 「うちは、いわゆる“どベンチャー”の段階ではなくなってきています。プラットフォーム型ビジネス、つまりWebサイトが動いていれば収益が上がるシステムができていますから。マーケティングがうまい人も多いので、それらを武器に独立するエンジニアもいます。サービスを成功に導くノウハウが得られます。もしベンチャーに興味があるのなら、『この人は面白い』と思えるような人がいる会社を目指せばいいのでは」
エムワープ 野村氏 は「幹部は外部から招聘しているため、大企業の経験がある人に近いところで学べるという“距離の近さ”があります。同じサービスを担当するさまざまな職種の人が固まっているので、エンジニア以外の人が何をやっているのかが分かるのは、サービスに関わるエンジニアにとってプラスですね」
ハイベロシティ 和泉氏 「サービスを作るエンジニアは、“技術だけ担当”というわけにはいきません。マーケティングぐらいは、できないと正直きつい。なので、スペシャリストというよりマーケティングもできる開発者を評価しています。自主的にサービスを改善していけるエンジニアを目指すなら、マーケティングも担当できる企業という切り口で企業を見てみるといい」
ベンチャーの技術トップ3人は、それぞれが個性的で、全然似ていなかった。ただ、技術者を束ねるという独特の職種に必要な、「チームに対するセンス」について熱く語る点は共通していた。そうした開発チーム作りに共感できる人と一緒に働きたい、という熱意が伝わってくるパネルディスカッションだった。
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