研修やセミナーに参加するITエンジニアは全体の30%以下、コミュニティ活動に参加する割合は10%未満という結果が、情報処理推進機構(IPA)が発表した『IT人材白書2012』で明らかになった。
「雑誌や書籍を通じた独学・情報収集」「Webサイトを通じた独学・情報収集」に取り組んでいると答えるITエンジニアは50%以上だった。エンジニアの個人努力の実態が明らかになる一方、企業側が十分に人材育成にコストを掛けていない課題も浮かび上がった。
ITエンジニアのスキルアップへの意欲は高く、全体の7割弱が、勤務外での自己研さんに取り組んでいる。しかし、自身の取り組みについて「十分である」と回答するエンジニアは3割。「まだこれでは足りない」という向上心の強さがうかがえた。
具体的な取り組みの状況を見ると、最も多かったのが「雑誌や書籍を通じた独学・情報収集(57.8%)」で、次点は「Webサイトを通じた独学・情報収集(52.8%)」。半数以上のITエンジニアが情報収集と独学を行っている。これら「1人でスキルアップ」以外としては、社内外のセミナー・コミュニティなどへの参加があるが、こちらを実践している割合はやや少ない。社内外の研修やセミナーへの参加する割合は約30%、コミュニティ活動への参加は10%未満にとどまった。
エンジニアが業務外で自己研さんに励む理由として、大きく2つ考えられる。1つは「将来に対する不安」、もう1つが「IT企業の組織体制」だ。
将来に対する不安を聞いたところ、「今後も新しい技術やスキルをずっと吸収していけるのかという不安」「自分が現在持っている技術やスキルが将来、通用しなくなるのではないかという不安」といった不安を持つエンジニアは5割弱にも上る。
同調査の2011年版によると、企業の人材育成投資比率は低く「全体の1%未満」と回答する企業が半分以上を占めた(無回答を除く)。前年度と比べて投資額が上昇したか否かを聞いたところ、約半数の企業が「2010年度とほぼ同じ」と回答。全体の1割が「減少する」、2割が「増加する」と回答した。リーマンショック以降、「コスト削減」の名の下に人材育成費が大幅に削られてきた。2011年ごろからようやく投資に転じる傾向が見られるものの、状況は依然として厳しいのが現実だ。
調査結果を受けて、IPAは「ITエンジニアは変化に合わせてスキルアップが必要だと自覚しており、新しい技術やスキルを学ぶことに対しても積極的だ。また、将来に向けた努力意欲が非常に高い」とコメント。
個人の積極的なスキルアップはもちろん必要だが、個人の努力のみに頼るのではなく、企業側もまた努力する必要がある。より多くのITエンジニアが、社内外の活動に参加できる仕組みや環境を構築することが求められる。
調査対象は、IT業務に従事するIT人材2600名。うち、ITベンダ企業に所属するIT技術者は1000名、ユーザー企業に所属するIT技術者は1000名、組み込みソフトウェア開発に携わる組み込み技術者は600名。Web上のアンケートで調査した。
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