BYODを超えた業務改革を狙うWindows 8“報告のための報告書”作成から解放される?

「タブレット端末やモバイル端末を導入しても、業務プロセスを見直さなければ効果はない」。Windows 8端末をフックに業務プロセスそのものの大改革を推進する協業が本格化する。

» 2012年12月12日 08時00分 公開
[原田美穂,@IT]

 アクセンチュア、アバナード、日本マイクロソフトの3社は、Windows 8端末を活用したエンタープライズ向けモビリティサービスでの協業体制を強化すると発表した。

 3社の協業は2000年から既に行われていたが、今回の発表は、Windows 8端末の法人展開に向け、共同で活動強化を行うもの。

 具体的には、共同プロモーション活動、グローバルでの3社の協業関係を生かした国内企業へのサービス共同提案、技術情報交換および市場情報共有の3点で連携を進める。

 3社が共同で提案する内容は、端的にいうと「タブレット端末を介した業務プロセスの標準化と改革、経営スピードの高度化」といえる。3社は既に2012年7月より「Windows 8 Enterprise Studio」を設立し、ソリューションプロトタイプの開発を進めてきた。

 その中でも、日本マイクロソフトはWindows 8端末の法人展開を、アクセンチュアはエンタープライズモビリティサービス戦略の提案を、アバナードは具体的なシステム構築を担う役割分担になっている。

 2012年12月11日に開催された記者会見では、3社がそれぞれの協業の狙いを示した。

予測型経営への布石として

 「いままでは、企業向けのタブレット端末展開ではAndroid端末については利便性、セキュリティの面で課題があることから、iPad端末の実質的なひとり勝ちであった。そのiPad端末についてもソーシャルサービスなどのコミュニケーションには強いが、企業利用で必要となる基幹業務系システムとの接続には問題が少なくなかった。Windows 8端末の登場はまさに“真打ち登場”」(アクセンチュア マネイジング・ディレクター モビリティサービスグループ統括 清水新氏)

 アクセンチュアは、同社が2012年8月に提示した企業におけるモバイル端末活用の指針を示し、「“報告のための報告書作成作業”を求める日本の経営スタイルそのものの転換を目指すべきだ」との見解を示した。

 フィールドの担当者がタッチデバイスで状況を登録すれば、自動レポートや分析、次のアクションの視差までタブレット端末で完結できるような仕掛けが理想だという。

 「タッチ操作で情報登録が完了して自動的に報告が完了すれば、多くの企業が悩んでいる報告・管理のためだけのExcel集計作業がそもそも不要になる」(清水氏)

 ベースとなるWindows OSは、アーキテクチャがそもそもエンタープライズ用途を前提としており、ディレクトリサービス連携や他の業務アプリケーションとの連携、管理・運用コスト面で有利であることに期待を寄せている。

上位20%の行動をUIに示唆させる

 アバナードは、Windows製品を使ったSIを手掛ける企業だ。会見では具体的なWindows 8端末の利用例のデモンストレーションを見せた。

 「企業のモバイル端末利用では、マウス・キーボードによる入力を前提とした既存業務アプリケーションをいかにしてモバイル最適化させるかが重要だ。アバナードでは各国に500人を超えるWindows 8端末専門のコンサルタント、UI設計を専門とする部門を持っている」(アバナード チーフ・テクノロジー・オフィサー シニアディレクター 半田博樹氏)

 同社ではOLTIVAというダッシュボードアプリケーションを提供している。複数の業務アプリケーションの情報を統合してグラフィカルに表示する、いわゆるダッシュボード機能を提供するものだ。

デモ画面 担当者の予定、メールなどのほか、売上情報を基にした個人の業務進捗のグラフなどが1画面に集約されている。個々の要素はをタップすると、より詳細な情報にアクセスできる

 ダッシュボード上では、直近のアポイントや、訪問前に確認しておくべき情報(例えば積極的に提案したい商材の詳細情報など)、訪問終了後に行っておくべき作業」が自動的に示唆される。上位20%のスタッフの行動を指標に、「次に行うべきことを自動的にUIで示唆する仕掛けだ。これは、アクセンチュアが提案しているモバイル端末UIの「あるべき姿」に即したものだ。

 このUIを実現するには、業務プロセスの精査、ベストプラクティスの落とし込みなど、その前提となる業務の見直しが必要となる。また、確定したプロセス標準や示唆の内容についても、都度の見直しが必要となるが、これについては「プロセスは常に見直されるべきであり、仕掛けとして、確定系の情報と隔離した予測系のシステムが確立していることが大前提としてある。予測系のシステムが立てられれば、示唆内容のロジック変更は大きな工数が掛かるものではない」(清水氏)という。

既存業務アプリケーションとの親和性、トータルサービスの強み

 日本マイクロソフト 業務執行役員 クラウド&ソリューションビジネス統括本部長 藤本寛氏は、Windows 8タブレット端末を企業で導入することの利点として、マイクロソフトが一貫して提供している開発環境の生産性の高さ、各法人向け製品ラインアップの連携や運用の利便性、全体としての開発・運用コストの優位性を挙げた。

 既存のメッセージングサービスや業務ソフトウェア/アプリケーションとの連携の容易さもさることながら、基幹系システムとの連携でWindows端末として多くのノウハウを蓄積している。クラウドサービスとの連携は、小規模拠点との情報連携など、企業のグローバル展開と情報集約の面で優位だと説明する。

 現段階のWindows 8タブレット端末では、通信にWi-Fiないし通信モジュールを利用することになるのが課題だ。

 「アクセンチュアとしては、企業利用においては“常時接続”端末であることが望ましいと考えている。今後の展開にも期待している」(清水氏)

会見後のフォトセッション 左からアクセンチュア 清水氏、アバナード 半田氏、日本マイクロソフト 藤本氏

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