仮想化環境のバックアップ、皆の悩みどころと「ITマネジメントの現代化」Server & Storage勉強会レポート(1/2 ページ)

専門家を招いて開催した編集部主催の勉強会。会場では仮想化環境バックアップのテクニカルなヒントに加え、担当者の悩みどころについての意見交換も行われた。

» 2012年12月18日 17時30分 公開
[原田美穂,@IT]
アイティメディアのエグゼクティブエディタであり本セミナーの企画を主導した三木泉 開会のあいさつで、サーバ仮想化の導入が進むと、物理サーバを運用する場合とは異なる技術を用いる必要が出てくることに加え、それに伴う運用プロセス自体の見直しが発生する可能性があると指摘した。こうしたシステム管理運用者にとっての環境の変化は、課題である一方、サーバ仮想化による管理運用の効率化とともに周辺のプロセスや組織の効率化は「ITマネジメントの現代化」に結び付くものであるとした。本企画には、仮想化環境での運用知識を深め、現代的な運用スタイルを広めたいという意図がある

 @IT編集部では2012年12月7日、「いま知りたい!ココでしか聞けない!仮想化バックアップ運用ノウハウ」と題して、仮想化環境のバックアップをテーマとした勉強会を開催した(@IT編集部主催、EMCジャパン/伊藤忠テクノソリューションズ協賛)。本稿では当日の模様の中から、記事で公開できる内容に絞って紹介する。

 本セミナーを前に、編集部とEMCジャパンでは共同で読者アンケートを実施した。結果の一部は記事「Server & Storageフォーラム読者調査レポート:調査で明らかになった仮想化環境の運用 現場の『悩みどころ』とは?」でも紹介している。セミナーで講演を行った伊藤忠テクノソリューションズ ITエンジニアリング室 プラットフォーム技術部 ストレージ基盤技術課 木島亮氏は、アンケートの結果を踏まえ、仮想化環境でのバックアップ手法が物理サーバ環境の場合と同じであることを指摘、前述のITマネジメントの現代化という観点からは非効率であると指摘した。

 では、どのように考えると「ITマネジメントの現代化」に結び付くのだろうか。木島氏は、最近の仮想化環境用バックアップ手法と選定ポイントを紹介した。

 いわく、vStorage API for Data Protection(VADP)、Change Block Tracking(CBT)に対応しているかが第1のポイントだという。CBTはブロックレベルでのバックアップを行うものだ。実容量+差分で済むため、データ量を削減でき、またバックアップ時間も少なくて済む。

伊藤忠テクノソリューションズ ITエンジニアリング室 プラットフォーム技術部 ストレージ基盤技術課 木島亮氏

 

 「以前はVMware Consolidated Backup(VCB)が多く使われていたが、VADPに置き換えるだけで、バックアップ・リストア時間が2分の1に短縮できる」(木島氏)

 この2つの機能については、VADP対応の商用バックアップ製品であればほとんどが対応できている。これら製品を比較する際のチェックポイントが次の点であるという。

ファイルレベルのリストア ファイルシステムのバックアップが可能か。エージェントレスで実施できるか

オブジェクトのリストア アプリケーションデータなどで、データ整合性が取れるか

ブロックレベル差分リストア ブロックレベル差分で「リストア」が可能か

 上記の中でもエージェントレスで実施できる点がポイントとなる理由は、システムの柔軟な拡張を考えた場合、エージェントレスでなければ個別にエージェントを導入するための作業が必ず発生することとなり、工数がかさむことが挙げられる。また、個々にエージェントの導入が必要ということは、拡張するたびにライセンスコストが発生することになる点も、懸念事項であるという。最近はエージェントレスでバックアップ実行が可能な製品が出てきているので、それらを採用するのが運用上は推奨できるとした。

 第2のポイントは「重複排除」がリアルタイムで可能かどうかであるという。重複排除は「データをHashなどのキーを使って変換し、重複する情報をまとめるアルゴリズム」を使ってデータ圧縮を行うもの。この機能を使うと、例えばもともと39セグメントあったデータが6セグメント程度に圧縮できる。これにより、データ転送容量が少なくなることから、バックアップ時間短縮が期待できそうだが、木島氏によるとそうではないという。

 「実は重複排除では、必ずしもバックアップ時間が短くなるわけではないのです」(木島氏)

 時間短縮が可能なのは、重複排除と合成バックアップを合わせた永久差分バックアップをサポートしているものだという。新規変更差分ブロックのみを保管してイメージを合成する仕組みだ。時間的にもデータ量的にも優位で、負荷の低減も見込めるという。

 その他にも、VADPの永久差分バックアップが可能であるか、転送効率のよいレプリケーションができるか(SRM:VMware vCenter Site Recovery Managerでは100Km以上の遠隔地へのレプリケートで、伝送遅延が発生するため、データ整合性の面で問題がある場合がある)、マルチテナント運用に対応しているか(VM単位/ファイル単位のリストアが可能か)といった点もポイントとして挙げられた。

 中でもマルチテナントに対応したバックアップ製品であれば、ユーザー主導のバックアッププロセスを定義できるため、運用プロセスの中から、ユーザー側に一部権限を移譲してバックアッププロセスを担わせることが可能になり、運用そのものの負荷を低減できるという。

 バックアッププロセス運用の課題についての議論もあったが、マルチテナント対応の可否は、運用プロセスそのものを大きく変える可能性があるだけに、「ITマネジメントの現代化」を考慮する上でも重要なポイントとなるだろう。

 木島氏は最後に、セミナーで紹介したチェックポイントごとに仮想化環境バックアップ製品のマトリクスを披露、バックアッププロセスを効率化することを目指した選定の指針として紹介した。

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