日本ヒューレット・パッカード(HP)は1月8日、Software Defined Networking(SDN)分野を中心とするネットワーク事業戦略を発表した。
日本ヒューレット・パッカード(HP)は1月8日、Software Defined Networking(SDN)分野を中心とするネットワーク事業戦略を発表した。すでに同社は、ネットワークスイッチ25機種をOpenFlow 1.0に対応させているが、対応機種や範囲をさらに拡大。一方、2013年後半にはOpenFlowコントローラの「HP Virtual Application Network SDN Controller」を提供する計画だ。
さまざまな場所で議論されているとおり、「サーバやストレージの分野では仮想化への取り組みが進んでいるが、ネットワークはそこから取り残されている」と、同社サーバ・ネットワーク製品統括本部 インダストリスタンダードサーバ・ネットワーク製品本部のf尾崎亨氏は指摘する。同氏はその背景として、ネットワークは主に、ベンダ独自の排他的技術と「ネットワーク専門」のエンジニアによって支えられており、いわば情報システムの中の「聖域」化していると述べた。
日本HPがSDNに期待する役割は、この状況を変え、固定的な物理ポートにとらわれずリソースを活用し、柔軟かつ俊敏性あるシステム構築を実現することだ。最終的には、「ユーザーとインフラではなく、ユーザーとアプリケーションやサービスをつなぐ。そして、ユーザーとサービスをつなぐ際に必要となっていたさまざまな設定変更作業を自動化し、複雑性を排除し、インフラ管理工数を劇的に削減すること」(同社常務執行役員 エンタープライズインフラストラクチャー事業統括 杉原博茂氏)という。このため、サーバやストレージといった分野も連携させながら、SDN、ひいては「Software Defined Data Center(SDDC)」を推進していくという。
この構想の実現に向け、これまで「Virtual Application Network」というビジョンの下で進めてきたSDN対応を強化し、OpenFlow対応ネットワーク機器を拡大する計画だ。対応機種だけでなく、OpenFlowプロトコルの最新仕様への追随も図る。
また前述のとおり、同社としては初のOpenFlowコントローラ、HP Virtual Application Network SDN Controllerを投入する。Northbound APIはサードパーティ向けに公開するほか、HP自身もこのAPIを活用した製品群を提供していく予定。「HP Virtual Cloud Network Application」では、OpenStackと連携してネットワーク配備、展開を自動化する。また「HP Sentinel Security」は、IPS製品のTipping Pointやセキュリティ監視ツールのHP ArcSight、OpenFlowスイッチが連動して脅威に対処できるようにする。
一方、足回りとなるネットワークインフラ側でも、性能ならびに機能の充実を図る。ハイエンドスイッチでの40Gbps対応を拡大して高速化を進めるとともに、地理的に離れた複数のデータセンターを接続するレイヤ2延伸技術「Ethernet Virtual Interconnect(EVI)」や、1つのスイッチを論理的に最大4つのスイッチに分割し、それぞれに4096のVLANを構成できる「Multitenant Device Context(MDC)」を、HP 125000スイッチシリーズのファームウェアバージョンアップの形で実装できるようにした。
[三木追記] 日本HPは2012年4月に、OpenFlow/SDNに関する戦略を一度発表している。その時点では、同社スイッチのOpenFlow対応を積極的に進めている一方、ネットワーク管理製品「HP Intelligent Management Center(IMC) 」のモジュールとして、ネットワーク機器をグラフィカルにサービス指向で設定可能なツール、「IMC VAN Manager Module」を提供するとしていた。その後同社は、VAN Manager Moduleを国内でも提供開始した。だが、このモジュールはSNMPなど、従来型の管理プロトコルのみを利用するものだ。すなわち現在のところ、HPは自社のスイッチのOpenFlow対応を進めてきたものの、これらをOpenFlowプロトコル経由で管理する製品を持っていない。
今回の発表によれば、IMCおよびIMC VAN Manager Moduleと統合できるOpenFlowコントローラを今年後半に提供開始することで、IMC VAN Manager Moduleから、SNMPおよびOpenFlowの2つのプロトコルを使ったネットワーク機器の設定・管理が実現できることになる。Northbound APIに関しては、こちらも2012年4月の発表どおり、IMCに対してサードパーティがアプリケーションを書くことのできる「IMC Extended API」をすでに提供している。
だが、OpenFlowコントローラとの連動に伴い、IMC VAN Manager ModuleとIMC Extended APIは機能追加が求められることになるだろう。
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