日本IBMが今年、クラウド事業で注力していくのは、IaaSの機能強化、ソフトウェアベンダとの提携によるPaaSレベルおよび業種別のサービス拡充、そして業務改革計画からインフラ実装に至るコンサルティング/サポートサービスの強化だ。
日本IBMが1月24日に説明したところによると、同社が今年、クラウド事業で注力していくのは、IaaSの機能強化、ソフトウェアベンダとの提携によるPaaSレベルおよび業種別のサービス拡充、そして業務改革計画からインフラ実装に至るコンサルティング/サポートサービスの強化だ。
IBMは、企業の業務ニーズに焦点を当ててクラウドサービスを提供している。IaaSでは、「10円クラウド」としても知られる時間単位課金の「SmarterCloud Enterprise(SCE)」、そしてより高いSLAを選択でき、OSレベルの運用を行う「本番環境向け」サービスの「SmarterCloud Enterprise+(SCE+)」を提供してきた。日本IBMは同日、これら2つのIaaSの機能を強化するとともに、IaaSを基盤としたSAPインフラの運用代行サービス「IBM SmarterCloud for SAP Applications(SmarterCloud for SAP)」を発表した。
SCEの新バージョンR2.2では、従来Linux仮想マシンでしかできなかった個別イメージのコピーやデータセンター間での転送が、Windows Server仮想マシンでもできるようになった。また、全般的に、仮想マシンの最大メモリ割り当て量を32GBと、従来の2倍に拡大した。
SCE+はR1.1となり、データベースの監視およびバックアップの機能を強化した。また、WAS、Oracle、SAP、DB2、TOMCATなどのミドルウェアを、自動的に監視できるようになった。また、パッチ更新の自動化、およびユーザー自身による更新管理の機能を付加した。テープによるデータの遠隔保管のサービスも加わった。
SCEとSCE+はともに、セキュリティ認証「ISO 27001 2005」も獲得した。
PaaSレベルのサービス拡充では、今回「IBM SmarterCloud for SAP Appplications(SmarterCloud for SAP)」を発表した。これは、一般的なPaaSのイメージとは若干異なるが、SCE+上で、顧客自身が専用ポータルを通じ、SAPのプロビジョニング(つまりOS上にSAPアプリケーションモジュールをインストール・構成した仮想マシンを用意)、データベースのリフレッシュ、既存システムのクローン作製などを行える。開発、QA、本番運用といったアプリケーションのライフサイクルに応じ、開発では小規模なリソースに限定した月額課金で利用し、本番運用に至った後は、年額課金でフル機能を活用できる。
日本IBM グローバル・テクノロジー サービス事業 スマーター・クラウド事業部長の熊本義信氏によると、IBMのクラウド事業の従来からのテーマは、「ITの再生」と「ビジネスの創生」。このテーマに対し、グローバルで、IaaSからPaaSまで、幅広いレイヤをカバーできることを前面に押し出していくという。
同社は世界各地でデータセンターを運用しているため、特に国際的な企業における既存アプリケーションの運用効率化と、ユーザーにとっての使い勝手向上の両立を実現しやすいという。また、今回のように、より上位のレイヤでのサービスを拡充することで、新規事業支援のためのITを、柔軟で、リスクが低いものとして提供できるという。
熊本氏が、近いうちに別途発表すると話した注目機能は、ワークロードの円滑な移行機能。プライベートクラウド(日本IBMでは「Pure Systems」がこれに相当する)で運用していたものを、何らかの理由によっってSCE+に移行する、あるいはSCE+からPure Systemsに移行するといったことが、最小限の作業でできるような仕組みを提供するという。
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