地獄プロジェクトを乗り越えて業務アプリを提供しても、部門のExcel職人は見向きもしてくれない? 彼らを取り込むために必要なのは場の提供だった
現在、企業で稼働している基幹系ITシステムは、使い勝手の良いものとは言い難いものが少なくない。多額の予算、重厚な体制、幾度も繰り返された経営陣への説明……。
その結果、誰もが使いやすいITシステムが出来上がり、現場のモチベーションは上がり、本来の目的であったさまざまな経営課題を解消するはずであった。しかし、実際にはシステムが変わっただけで、現場の作業も、経営課題も解決されない。それどころか、バックオフィスシステムの資産だけが膨らみ、十分使いやすかったとはいえないまでもいままでの慣れたITシステムが変わったおかげで、現場のIT経験はゼロリセットされてしまい、かえって余計な手間が増えただけとなってしまっている。
いま、クラウドによる基幹系ITシステムのリプレイスといった案件でも同じ状況が起こっており、古き悪しき「システムリプレイスにおける伝統」を引き継いでいる。なぜ、古き悪しき伝統を引き継いでしまうのだろうか? その主な原因は、以下のように考えられる。
本来、ITシステムを構築する理由は、業務を標準化した上で改善のサイクルを回し、継続的な業務効率化を実現するという正しい「お題」があったはずだ。それなのに、悪しき伝統にしがらんだITシステムが存在するために、標準化&改善の流れが制約を受けてしまい、うまく機能していない。現場の創意工夫という名の下、個別最適化されているのが現状ではないだろうか。例えば、ITシステムには最低限のデータ入力のみ行い、実務データはExcel*などを駆使するといった慣習は恐ろしくまん延している。
データ集計→ダウンロード→エクセルでピポッド→グラフ作成→パワーポイントに貼り付けなんていう涙ぐましい作業をしている業務担当は実に多い。
* Excel 部署固有の「モンスターExcel」を、あなたも見たことがあるはずだ。
各担当者の業務は、各自の創意工夫によって熟(こな)せるようになるが、ITシステムには実装されていない本当の業務実施プロセスは、隠ぺいされたまま属人化が深まっていく。
見える化、ナレッジ共有、業務効率化、コスト削減、付加価値のある活動へのシフトといった経営的な目的は到底達成されず、それどころか、新しくできたITシステムによる制約、個別の最適化が、次の改善活動・改革活動の足かせにさえなるようになる。IT部門の願いむなしく、現場では「また余計なことをしてくれた」という不信感が募っていくという悪い流れが強化される。
IT部門も業務部門も「責任者、出てこい!」と思いながら業務を進めてはいないだろうか?
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