SAS Institute Japan(以下、SAS)は2月19日、報道関係者向けの説明会を実施。SAS 代表取締役社長兼北アジア地域統括責任者 吉田仁志氏が同社の2013年度の方針を説明したほか、視覚的にデータ解析できるソフトウェアの最新版「SAS Visual Analytics 6.1」を発表した。吉田氏は、2013年の抱負を「アナリティクスを日本企業のイノベーションの原動力にしたい」と語った。
2012年のSASのグローバル売上高は28.7億ドルで、37年連続増収増益を達成。地域別では、アメリカ地区47%、ヨーロッパ中近東地区41%、アジア太平洋地区12%だった。中でも、日本、中国、韓国、台湾、香港で構成される北アジア地区の成長率が最も高かったと言う。吉田氏は2012年を振り返り、「2012年はビッグデータ元年とも言われ、導入企業も増えたが、まだBIで『データを見る』だけの企業がほとんどだ。さらに『データを理解』し、それに基づいて行動できるようにならなければ、本当にデータ活用・データ分析とは言えない。まだデータ活用できている企業は少ない」と説明した。
同氏はこういった日本企業のBA(Business Analytics)活用の低さを底上げするために、2013年には「顧客をBIからBAにシフトさせるためのVisual Analyticsの提供」「アナリティクス・コンサルティングの拡充」「データ・サイエンティスト育成のための大学との連携」「パートナーとの協業」などを注力分野に挙げた。
アナリティクス・コンサルティングは、データ分析の手法や考え方をユーザー企業とともに作っていく活動だ。これを担うコンサルタントを拡充していく。多くの企業が「データはあるけれども、分析・活用できていない」という問題を解決するのが狙い。パートナー企業を含め、現在の倍以上に増やしていきたいという。
データ・サイエンティストは、まさに企業内でデータ分析をするエキスパート。この分野の圧倒的な人材不足が叫ばれて久しい。一方で、データ・サイエンティストは数学や統計など高度な専門知識が必要なため、育成が難しいのも事実だ。そこで同社では特に大学と連携し、データ・サイエンティスト育成のサポートを強化していく。「北アジア担当になり、中国や韓国も見ているが、それらの国の大学には大抵統計学部が存在している。それに比べて日本の大学には統計学部が圧倒的に少なく、ほとんどないのが現状だ。この分野を拡充していかないと、将来韓国や中国に大きく後れを取ることを懸念しているので、いまからサポートしていきたい」(吉田氏)とした。
視覚的にデータ解析できるソフトウェア「SAS Visual Analytics 6.1」は、吉田社長が挙げた通り「顧客をBIからBAにシフトさせるための中核」として位置付けられている製品。インメモリ型で主にブレードサーバで構成される。ユーザーは視覚的に利用するだけでパターンや関係性を分析することができるという。
最新版の6.1では、時系列予測、重回帰分析など、各種アナリティクス機能やグラフィック表示オプションが追加された。また、業界標準となっているブレードサーバやGreenplum、Teradataなどのデータアプライアンスに加えて、企業の部門向けサーバとして用いられる規模のサーバにも対応した。これにより、扱うデータ量に応じて小規模から大規模まで対応可能となった。
インメモリ型を採用したことで、数十億行のデータであっても数秒〜数分で分析計算を実施、その結果を視覚的に表示できる。国内の提供開始は2月19日から、価格は最低構成で850万円程度。
吉田氏は、「Visual AnalyticsのUIで視覚的であることから、セルフサービス型で提供可能だ。これでIT部門のサポート負担は大きく減るだろう。また、部門規模のサーバにも対応したことで大きく間口が広がった。価格も当社製品としては安く、数千万円が中心価格になるだろう。これにより、多くのユーザーが自分で最新データを基にしたレポートを表示し、視覚的に気付きを得ることが可能になる。これによってBAを普及させていきたい」と抱負を語った。
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