テレビのスマート化が進み、テレビは放送を見るだけでなく、ネット上のさまざまなサービスを楽しめるデバイスになりました。NHK放送技術研究所松村氏は、NHKが実用化を進めているHybridcastを例に、放送とWebを連携することで実現するさまざまなサービスと、国内で標準化が進んでいるHTML5ベースの放送通信連携テレビの技術仕様を紹介しました。
松村氏は「デジタル放送への完全移行が昨年完了したが、映像コンテンツに関してテレビを使わずにパソコンやスマートフォンで視聴する機会が増えてきている。テレビ業界としても、放送と通信を連携させてコンテンツ提供を行う新しいプラットフォームが必要になるという考えの下、NHKではHybridcastの開発を進めている」と述べました。
次に松村氏はネットと融合するテレビの進化を挙げて、SmartTV、HybridTVという新しいテレビの概要について説明しました。
HybridcastはHybridTVの1つに分類されるとのことです。
松村氏は、コンテンツ制作者はインターネットと連携した番組作りを意識しているが、テレビの性能が追い付いていないという現状を打開するために、テレビ自体の機能を高機能化させ、ネットとより連携したHybrid型サービスを提供するための、Hybridcastの開発コンセプトを語りました。
講演で説明された、Hybridcastの開発コンセプトならびに、提供する機能の概要は以下の通りです。
松村氏はHybridcastにHTML5を採用した理由として、国際標準の規格として策定が進んでいる点と、オープンプラットフォームであることからテレビへの搭載コストや、サービス・アプリ制作コストが下げられるという点を挙げました。また、テレビ業界として独自の規格を作ってしまうと、その規格の進化はその時点で止まってしまうが、HTML5の仕様を取り入れることで、進化の早いWebの世界に合わせてテレビの規格も継続して進化できるとも付け加えました。
松村氏はHTML5をテレビで使うための追加規定について、一般社団法人IPTVフォーラムで2012年1月から議論を開始し、v1.0の仕様を今年度中に公開予定であると述べました。
また、同氏は、以下の通りテレビというデバイス特有の要件や制約条件を挙げ、HTML5のテレビ向け追加仕様を策定する上では、考慮が必要になると強調しました。
次に、同氏は、テレビ上で動作するWebアプリには、番組連動アプリと独立アプリの2種類について、それぞれの特徴を説明しました。
しかし、放送と連携するアプリについては以下のような課題も挙げられていて、来年度試験的にサービスを開始するHybridcastでは、放送局から認可されたアプリしか当面動作しない仕組みになると説明しました。
松村氏は、放送とWebの連携で今後取り組みたい課題として次の2点を挙げました。
(1)放送とネットの精密な同期
同期表示用ストリーミングサーバと時刻情報を連携して、同時に複数のカメラの情報を1つの画面に表示する……など。
(2)アプリを自由に作れる環境とユーザーが好きなアプリを実行できる仕組み
アプリ制作に関する課題を解決し、アプリ開発提供者が自由にアプリ配信し、ユーザーが自由にそれを実行できるようにする仕組みづくり。
最後に同氏は、「来年度から試験的にサービスを開始していくので、Webの業界とは今後も積極的に関わっていきたい」と話し、講演を締めくくりました。
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