今後、どの業界で活躍すべきか? 注目の分野はあるか? これからの成長が見込まれる業界を取り上げ、転職の事例とともに紹介する。将来の活躍の場を考える上で参考になれば幸いだ。
数年前から話題にあがり、最近は企業経営においても注目されるホットなテーマが「ビッグデータの活用」です。データ解析などは昔からありましたが、ハードウェアの向上や分散処理の技術の進化、あるいはインメモリDBのような新しい技術の広がりにより、より高度に大量のデータを活用できるようになったからです。
企業が注目している分野は、求人にも少しずつ反映されます。
ビッグデータ関連求人もボリュームが出てきたように感じます。しかし、ビッグデータ関連職種は、データを収集、処理、抽出する環境構築の知見、解析ツールの知見、分析スキルからマーケティング、経営コンサルティングの知見まで、さまざまな専門知識が必要とされます。
「データサイエンティスト」「データマイニングエンジニア」などは、専門スキルを問われるため、目指し難く見える分野ですが、実際はどうでしょうか? 今回は、成長分野として非常に注目されているビッグデータを取り上げます。
さまざまな調査会社の市場予測では、ビッグデータ活用にかなり積極的な投資が見込まれており、テクノロジーやサービスに対する支出額は今後、数倍に増えていくと予想されています。
あるITコンサルティングファームの社長が言うには、企業は近年、「守りのIT」より「攻めのIT」への投資に積極的な傾向があるようです。成長している事業会社は特に、インフラや運用保守、業務の効率化といった守りのITから、売り上げや利益を伸ばすためにITを活用する攻めのITへ力を入れる傾向を強めています。ビッグデータ活用もそのひとつと言えるでしょう。
ビッグデータといっても、ソーシャルメディアのような新しいデータソースやビデオや音声を含めた非構造データよりも、現在、管理運用している基幹系業務データを有効活用することをまずは課題と認識している企業が圧倒的に多いようです。そうなると、必要とされる技術や専門スキルも、企業の課題やフェーズによって異なります。
ビッグデータを活用するに当たり各社が課題としているのが、ビッグデータ活用を進めるための「推進体制」が整っていないことです。
多くの企業は専門部隊の立ち上げや少数のチームを拡大していくフェーズにあり、自社にあまりノウハウがなくて試行錯誤していたり、大量データを扱える技術者が不足していたりすることが課題です。
自社内製でデータ活用を図りたい自社Webサービス企業と、コンサルティングファームや分析環境の構築に専門特化したIT企業など、事業会社からのニーズを受けてデータ活用サービスを提供するベンダー企業は、特に技術者不足が顕著で採用意欲が強くなっています。
では、ビッグデータ分野に携わりたいエンジニアにとって、今後どのようなキャリアが想定できるでしょうか。転職によってキャリアステップを踏んだ2人の事例を紹介しましょう。
最初に紹介する田中さん(仮名)は、独立系の中規模システムインテグレータ(SIer)のエンジニアでした。
業務は小中規模のシステム構築が中心で、プログラマ〜プロジェクトリーダーとして新卒以来4年間、業務に携わってきました。案件の規模こそ小さいものでしたが、データ収集や分析基盤系のシステムを設計開発し、DB周辺の技術知見をキャッチアップしていました。また、学生時代の研究で統計の知識を活用するなど、データを扱う領域に積極的に関わっていました。
将来的にデータサイエンティストとしての力を高め、さまざまなデータの分析からコンサルティングサービスまで提供したいと考えていましたが、現職はシステム構築がメインで、それ以上は踏み込めないことを課題と感じていました。また、大きなデータを扱うケースが少なく、そのデータが自社のものではないことも問題でした。
私は田中さんと話し合い、まずは大規模な自社データを扱うための技術力をしっかりと身に付けて技術の幅を広げ、将来的にアナリティクス分野までキャリアを広げていくステップを考えました。そこで私が提案したのが、大手Webサービス会社のA社です。
求人概要
【企業】大手Webサービス会社
【ポジション】データマイニングエンジニア
【背景】自社サービスの拡大、各サービス連携のためのデータ活用の仕組みを構築するため
A社は月間ユーザーが延べ数千万人に上る大規模サービスを展開しています。日々たまっていく膨大なデータを死蔵させずうまく活用していくために、専門のデータ活用・分析チームを立ち上げたところでした。
ユーザーの行動履歴とレコメンドを組み合わせたり、さまざまな運営サービスを連携したり、分析結果をサービスの活性化やユーザーの拡大、今後の事業展開に反映させる施策を打っていくのがチームのミッションで、そのための仕組みと分析基盤を構築からスタートしている段階でした。
大規模なデータが集まるサービスを扱うことやシステム構築から携われること、現職の課題をクリアできる点が田中さんの希望に合致しており、A社も田中さんのこれまでの経験や技術スキルを必要としていたため、田中さんはWebサービスの経験や高度な分析スキルは持っていませんでしたが、双方納得の上で入社に至りました。
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