IT戦略・経営戦略支援のノウハウを多く持つアクセンチュアが、データ分析の専門家集団をグローバル直轄で組織。意思決定に結び付くデータ分析環境と各種コンサルティングを含む「データサイエンスチーム」による包括的な支援体制を整備した。
アクセンチュアは2013年6月15日付で「アクセンチュア アナリティクス」という組織を編成した。同組織は従来「アナリティクス インテリジェンス グループ」として活動していたもの。今回の組織改変により、専門性の高い分析ロジック構築のための専門家集団を各地に組織する。アクセンチュア アナリティクスは各地域別のアクセンチュア現地法人とは別に、グローバルに組織されることになる。このうち、日本のアクセンチュア アナリティクス統括には、工藤卓哉氏が就任する。
工藤氏は数理モデル、数理経済分析などを専門としており、統計数理研究所などで講師を勤めたこともある人物。米国ニューヨーク市において、ブルームバーク市長時代にニューヨーク市政府統計ディレクタを務めた経験も持つ。
アクセンチュア アナリティクスでは、全世界に23のイノベーションセンターを置く。個々の拠点では「相互排他的にサービスを構築」することで、高い専門性が要求される各種データ分析に対応していく。このうち、東京のイノベーションセンターではソーシャルメディア分析を専門にサービス構築を推進するという。
「多変量解析やバスケット理論、ベイズ理論など、データを分析する際に必要となる多様な統計数理への深い知見を個人で全て習得するには限界がある。また、同時に経営戦略などへの深い理解も必要だ。アクセンチュアではそれぞれの専門家をチームとして組織していく」(工藤氏)
例えば欧州だけでも、統計分析環境である「R」「SAS」ツール類の専門家を擁する拠点、マーケティング分析の専門家を擁する拠点などが点在する。個々の拠点では専門領域のスペシャリストが集っており、各専門領域でのサービス開発に従事する。その上で、要請に応じて地域横断で「データサイエンスチーム」を組織していくという。専門性と領域横断性を同時に獲得していくという意味で、同社ではこれをグローカル戦略であるとしている。
「現在、ビッグデータアナリティクスに関する実際の引き合いは金融機関や通信事業者、政府機関などが多いが、製造業・小売業などでも潜在ニーズが大きいと考えている」(工藤氏)
一方で、これら潜在的なデータ分析ニーズを持つ企業へのアプローチとしては「日本企業の問い合わせとして多いのが、ビッグデータ対応は必須と考えるが、『実際に何ができるか、どうしていけばよいかが分からない』というもの。研修サービスや、ビジネスケースの策定などによって、何ができるかを示していくこともミッションの1つ」(工藤氏)であると分析している。
なお、アクセンチュア アナリティクスの日本でのサービスは、上記ソーシャルメディア アナリティクス サービスの他、クラウド環境を使ってサプライチェーン分析・計画策定支援を行う「AFS(Accenture Fulfillment Service)在庫・補充最適化サービス」、座学から実データを使ったモデリングプロセスなどの研修・診断サービス、M2M/ビッグデータアナリティクスサービスなどが既にパッケージ化されている。
米アクセンチュアでは、今回の組織改編の発表に先立つ2013年3月21日、マサチューセッツ工科大学(MIT)との5年間の共同研究プロジェクトを実施すると発表している。同プロジェクトの目的としてプレスリリースでは、アクセンチュアが持つ各種業界におけるデータ分析のノウハウと、MITの先進的な研究成果を統合し「意思決定科学」の進歩に向けた新たなアプローチ創出にあるとしている。
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