デルは7月2日、同社の垂直統合型システム「Dell Active System」を販売開始した。クラウドインフラ構築のための調達を迅速にするのに加え、運用のあり方も変えるのが、この製品のテーマだ。
デルは7月2日、統合インフラシステム「Dell Active System」、およびこれと組み合わせるITインフラ運用ツール「Active System Manager」、対応アプリケーションの「Active Solutions」を発表した。デルはこれら3つを総称して「Dell Active Infrastructure」と呼び、企業や事業者のデータセンターの将来に関するデルの考え方を具現化したものとして推進していく。
Active Systemは、他社の垂直統合型システムと同様、サーバ、ストレージ、ネットワークの製品を決め打ちの組み合わせ(上位モデルは構成のカスタマイズができる)で提供する。納入・設置作業までを価格に含んでおり、迅速に利用を開始できる。Active Systemは、VMware vSphereあるいはHyper-Vをプラットフォームとして使った仮想化環境の運用、および仮想化環境上での各種アプリケーションのクラウド的運用をターゲットとしている。
おそらくActive Systemの最大の魅力は、「Active System Manager」による運用作業の自動化にある。統合インフラシステムには、専用のハードウェア管理ツールが付属することがあるが、Active System Managerはハードウェアの管理/監視ツールではない。ハードウェア監視は、「Dell OpenManage Essentials」が担当する。一方、Active System Managerの中心的な機能は、スクリプトによる運用作業の自動化だ。サーバのファームウェア・アップデート、ネットワークやストレージの構成変更、仮想化環境における仮想マシンの構成・作成、特定アプリケーションの構成・配備など、さまざまな日常の運用作業をスクリプトとして保存しておき、これを使って作業を自動化できる。
Active System Managerの機能で、最も分かりやすいのは、クラウド運用ツールとしての利用だ。このツールにはセルフサービスポータル作成機能が備わっている。事業者がこの機能を使ってIaaSを提供することもできるし、企業内でいわゆるプライベートクラウドを運用することもできる。例えば仮想マシンの作成とデプロイメントに必要なハードウェア側の設定は、ハードウェアのAPIを使って実行できる。ソフトウェア側は、仮想化ソフトウェアのAPIをたたくスクリプトなどによって、一連の作業を自動化できる。
Active System Managerは、デルが2012年に買収したGale Technologiesの製品を機能拡張したものだ。もともとマルチベンダ環境で動いていた製品であり、汎用スクリプティグエンジンであるため、ハードウェアからソフトウェアまで、多様な作業を自動化できる。アプリケーションの導入作業を自動化するスクリプトも、ソフトウェアベンダと協力しながら整備していくという。また、バックアップや遠隔複製など、データ保全にかかわる手順のスクリプト化も、今後進めていくようだ。
Active System ManagerはActive Systemを買わなければ利用できないものではない。単体で購入することもできるという。だが、導入時に機器ごとの細かな設定をしたくない人は、仮想マシンの払い出しをはじめとする運用作業についてもできるだけ自動化し、自らはより付加価値の高い業務に集中したいと考えるだろう。そういう意味で、Active System Managerに興味を持つ人は、ハードウェアの調達についても、ばらばらに購入して自ら組み合わせていくスタイルではなく、組み上がったものをアプライアンス的に購入するほうを好むだろう。導入後の拡張も、ハードウェアパッケージを買い足して、横に並べていく方法を採用すれば、シンプルだ。
デル自身はいいたがらないが、Active System Managerのようなツールをうまく使えば、これまでシステムインテグレータに支払っていた各種設定サービスの費用を、積極的に減らすことも可能になる。インテグレータがやるにしろ、ユーザー企業内のIT担当者がやるにしろ、単純な繰り返しでしかない日常の運用作業については人的あるいは金銭的なコストを掛けずに済むようにすることが、Active Systemにおける重要なテーマだと理解できる。
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