提供開始から1年半、kintoneはどう使われているかエンドユーザー自身が業務アプリをつくる

エンドユーザー自身が業務アプリを短時間で構築できる、ユニークなサービス「kintone」。その特徴が、さまざまな興味深い事例を生み出している。サイボウズ社長の青野慶久氏が紹介した興味深い事例をお届けする。

» 2013年07月18日 15時50分 公開
[三木 泉,@IT]

 サイボウズは7月16日、業務アプリケーション開発PaaSであるkintoneの事例と新機能、開発者向けサイトの開設について説明した。kintoneは、実際に利用するエンドユーザー自身が、ノンプログラミングで多様なアプリケーションを構築・運用できるユニークなクラウドサービス。2011年11月に販売開始されてから約1年半が経過したが、ユーザー数は700以上に達しているという(初出記事では有料契約社数約4500としていましたが、これは他のクラウドサービスを含むcybozu.comの契約者数でした、訂正します)。ここではサイボウズ代表取締役社長の青野慶久氏が紹介したさまざまな興味深い事例を中心にお伝えする。

 kintoneは「ちょっとした」単体の業務アプリケーションを構築・運用するためのサービスだと思われがちだが、複数アプリケーションにまたがってユーザーIDが管理でき、SAPなど基幹システムとのデータ連携も可能。また、ソーシャルネットワーキングなど、コミュニケーション機能も備えている。青野氏は、データベース、ワークフロー、コミュニケーションの3つの機能の組み合わせで、一般的な企業が仕事で使うアプリケーションの8割程度をカバーできると話している。

 青野氏は、最近の傾向として、大企業での利用が増えるとともに、協力会社などの社外を巻き込むアプリケーションや、個別業務のための高度なアプリケーションの構築・運用例が目立つようになってきたと話した。

 既存ユーザーによるkintoneの利用例の1つとして、青野氏は日本空港ビルデングが羽田空港で運用している迷子呼び出しシステムを挙げた。これまで空港内の迷子は、巡回案内係が見つけると案内所に連れていき、案内所で一定の書式に従って情報を書き込み、これをFAXでアナウンス室に送った後で館内放送という手順を踏んでいた。しかしいまでは、巡回案内係が持ち歩いているiPadに迷子の情報を入力すると、アナウンス室のパトライトが鳴り、アナウンス室では即座に館内放送を行えるようになった。

 これは「ちょっとした」アプリケーションではあるが、モバイル対応のアプリケーションを瞬時につくれる点がポイントの1つ。また、運用開始後も、利用しているスタッフの要望を、プログラマではないサービス管理者自身が、アプリケーションに反映させることができたという。

kintoneでは、モノとの接続も重要なテーマとなっている

 他の大企業の例としては、あるファストフード・チェーンは、出退店管理のための情報共有でkintoneを利用している。このチェーンには、情報システム部門が構築した既存の出退店管理システムがあるが、使い勝手や改修の容易さから、ユーザーが直接kintoneを選択し、使うようになったという。

 ある欧州の家電メーカーの日本法人は、セールスフォース・ドットコムで営業管理をやっていたが、kintoneに乗り換えたという。量販店の自社コーナーへの商品の貸し出し、担当者名、展示内容、説明内容などの報告を、このシステムで行っているという。

 また、あるグローバルなIT企業は、自社のストアや量販店の自社販売ブースに派遣する社員やアルバイトの人材管理アプリケーションを運用している。ある航空会社はITプロジェクトの予実管理に利用。携帯電話事業者は、高速回線への契約移行案件の管理に使っている。

 大企業で全社採用という例はまだなく、1社のユーザー数は最大で1000名弱だと青野氏は説明した。また、情報システム部門を介在させない、ユーザー部門からの直接の引き合いが多いという。

 社外を巻き込むアプリケーション、あるいは複数社を結ぶアプリケーションの例としては、例えば児童デイサービスなどを行う関西という企業が、同社施設での児童の様子を、児童の家族と共有するためのプラットフォームをつくったという。また、ある自治体と地元の建設業協会の情報共有アプリケーションでは、例えば道路の破損が発見され、その写真がアップロードされると、この情報をもとに、自治体が補修実施を判断、適切な業者が即座に補修作業に入るようになっているという。

 ほかのシステムなどとの連携によるカスタマイズの事例としてユニークなものには、ある中古車業者が、各車両の情報からバーコードを作成、このバーコードを車に貼って輸出し、輸出先の業者がバーコードをスキャンすると、これが受け取り確認となるシステムをkintoneでつくった例などがある。水耕栽培ファームにセンサを設置し、情報を取得することで、IT農業を進めるケースなども出てきているという。

JavaScriptによるカスタマイズ性の向上も

 サイボウズは7月14日に、kintoneの新機能としてJavaScript読み込みに対応した。kintoneのコンセプトがグラフィカル・インターフェイスでのアプリケーション作成であることに変わりはないが、必要に応じて細かいカスタマイズができるようになった。また、誰でも利用可能な開発者向けサイト「Cybozu.com developers」を提供開始した。このサイトは、kintoneをはじめとした同社サービスに関するAPIやサンプルなどの情報を提供している。

 一方、社外との情報共有をさらに促進するため、ゲストユーザーがkintoneアプリケーションの一部のエリアのみを利用できるようにする「ゲストスペース」機能も実装した。

 青野氏は、今後kintoneにより、業務アプリケーション開発におけるエンドユーザー主導が強まるとともに、人月から人日、人時へと、短納期化が進む一方、業務ソフトウェアのオンライン販売が進むと説明している。

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