次は武器(応募書類)の整備です。林さんの職務経歴書を見せてもらったところ、経験してきたプロジェクトと保有資格や得意分野が記載されただけのシンプルなものだったので、志望理由や将来のキャリアビジョンを加筆してもらいました。
SI企業から社内SEの転職は広義のキャリアチェンジです。経験を生かせるケースも多くありますが、業界を変えるという意味でも、前述のように業務目的を変えるという意味でもキャリアチェンジと考えた方が良いでしょう。それならば、なぜ社内SEを希望するのかを応募書類に書くべきです。
営業職から事務職の場合でも、販売職からWebデザイナーの場合でも、採用担当者はなぜキャリアチェンジをしてまでその仕事を希望するのかをチェックするはずです。なにせ経験したことがない職種を希望しているのですから、ただの憧れではないのか、本当にその仕事を理解しているのか、良い面ばかり見ているのではないのかと懸念するわけです。応募書類でその懸念を払拭できれば、書類選考通過率はさらに上がるでしょう。
3番目までのステップを踏んで、林さんは4社の面接を受けることになりました。さあ、最後の大詰めです。私は林さんと面接前の作戦会議を開くことにしました。
私「林さん、面接準備は進んでますか?」
林さん「はい、もちろん。転職理由や志望動機もばっちりです」
私「それは素晴らしい。では業界研究や市場研究はいかがですか? 同業他社の動向などは?」
林さん「えっ同業他社ですか。そこまでは見ていませんでした」
私「4社中2社は上場企業ですが、IR資料には目を通しましたか?」
林さん「いえ……」
勝手知ったるIT業界であれば、そこまでの業界研究は必要ないかもしれません。しかし社内SEを目指すということは、異業界への転身になります。業界や企業の製品やサービスを研究し、競合他社も含めて知っておくべきです。そしてそこで得た知識を面接で活用するとよいでしょう。
林さんは1社から内定をもらい、念願の社内SEになりました。成功した要因は、活況な転職市場以外にも4つのステップで転職力を付けていったことが大きいでしょう。
この4つのステップはどなたにでも応用が効くものです。キャリアチェンジを目指す方はこれらを意識するとともに、自分だけは分からないことはお知り合いやキャリアコンサルタントに相談されることをお勧めします。
アデコ 山口孝之
千葉県出身。大学を卒業後、建設会社にて人事、経理などの管理業務を経験。その後ITエンジニアに特化したスカウト型の人材紹介会社に転職しキャリアアドバイザーに従事したのち現在に至る。キャリアアドバイザーとしては一貫してIT業界、インターネット業界を担当。
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