「あらゆる産業がデジタル化する」といわれても直感的には理解しがたい。だが、ガートナー ジャパンが10月15〜17日に東京で開催したイベント「Gartner Symposium/ITxpo 2013」における最大のテーマはこれだ。ガートナーは何を「デジタル化」といっているのか、そしてこれにはどれだけの説得力があるのだろうか。
「あらゆる産業がデジタル化する」といわれても直感的には理解しがたい。だが、ガートナー ジャパンが10月15〜17日に東京で開催したイベント「Gartner Symposium/ITxpo 2013」における最大のテーマはこれだ。ガートナーは何を「デジタル化」といっているのか、そしてこれにはどれだけの説得力があるのだろうか。
一般消費者向けのビジネスでは、オンラインでの販売が増えている。また、ソーシャルネットワーキングサービスやモバイルアプリなど、オンラインでのマーケティングや販売促進活動が広がってきた。しかし、Gartner Symposium/ITxpoでは、ガートナーのアナリストが口をそろえて、これは序の口だと話した。一般消費者向けのビジネスだけではない、さらにマーケティングや販促活動だけの話でもない、という。
ガートナーでCEOをはじめとする経営層を対象にリサーチや助言を行っているガートナーリサーチ バイスプレジデント兼ガートナーフェローのマーク・ラスキーノ(Mark Raskino)氏は、この動きを「あらゆる産業がデジタルリマスターされる」と表現し、「その意味は、あらゆる企業における事業の中核にある製品自体が、大きく変化してしまうということだ」と話している。
これはどういうことなのか。ラスキーノ氏は、すでにさまざまな業界で起こっている変化の例について説明した。その1つは自動車業界の変化だ。
最近、クルマの自動運転に関するニュースが増えている。2年前にはどの自動車メーカーも実現性を否定していたにもかかわらず、あらゆる主要な自動車メーカーが取り組むようになった、それはグーグルがやってみせたからだ、とラスキーノ氏は説明する。グーグルはクルマの自動運転技術を開発し、実用性を示してみせた。このことで、既存の自動車メーカーは取り組みを本格化せざるを得なくなった。
では、自動運転がなぜラスキーノ氏のいう「デジタルリマスタリング」につながるのか。なぜ製品自体の変化につながるのか。自動運転もアクティブ・セーフティ技術の延長線上にある、クルマの機能の1つにすぎないのではないのか。
これをたずねると、ラスキーノ氏は「自動車が自動車でなくなってしまう」と答えた。現在の自動車という存在の前提は、人がそれを運転するということにある。現在の自家用車の広告宣伝は、運転する楽しみを、さまざまに形を変えてアピールしている。しかし、運転する必要がなければ、運転する楽しみを訴える必要もなくなる。クルマを買う消費者も、将来は単なる移動手段の1つとして購入の判断をするようになる。そうなれば、クルマのデザイン、色、エンジン性能といった要素を気にする人すら少なくなってくる可能性がある、という。こうして、世界的な一大産業になっている自動車業界が、やがて根本的な変化に直面することになる、という。これが自動車産業におけるデジタル化のインパクトだと話している。
マーク・ラスキーノ氏がデジタル化の衝撃について語った筆者によるインタビューの前編を、「CEOに伝えたい、『全産業デジタル化』の真のインパクト」としてまとめました。ぜひご覧ください。
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