事業を急速に拡大するPivotal、その狙いと日本での戦略は一般企業をグーグルやフェイスブックのように

従量員数約1600人の「巨大スタートアップ」企業、Pivotalが急速な事業展開を進めている。10月23、24日にはシンガポールで「Asia Pacific Pivotal Summit 2013」を開催、CEOのポール・マリッツ(Paul Maritz)氏をはじめとした幹部がアジア太平洋地域での事業展開について説明するとともに、同社の製品・サービスを同地域で初めて詳しく紹介した。

» 2013年10月25日 09時00分 公開
[三木 泉,@IT]

 従量員数約1600人の「巨大スタートアップ」企業、Pivotalが急速な事業展開を進めている。10月23、24日にはシンガポールで「Asia Pacific Pivotal Summit 2013」を開催、CEOのポール・マリッツ(Paul Maritz)氏をはじめとした幹部がアジア太平洋地域での事業展開について説明するとともに、同社の製品・サービスを同地域で初めて詳しく紹介した。Pivotalの製品・サービスについては別記事で紹介することとし、本記事では同社の方向性および事業のやり方についてお伝えする。

 Pivotalの事業をひとことで表現すれば、「企業が新世代のアプリケーションをつくっていくためのミドルウェアおよび開発・運用環境の提供」だ。企業は自社のビジネスの付加価値を高め、あるいはビジネスモデルを変えていくために、新世代のアプリケーションを構築しなければならない。そのときに必要なのは、従来型のエンタープライズ向け技術ではなく、フェイスブックやグーグルなど、一般消費者向けのネットサービスの巨人企業が採用している技術だ、とマリッツ氏はいう。新世代の技術でなければ解決できない問題を明確に認識している企業の支援から始め、徐々に対象を広げていくという。

Pivotalの戦略を詳しく説明したCEOのポール・マリッツ氏

 Pivotalの製品は、基本的にオープンソースがベースであり、それぞれが広く利用されているものばかりといえる。Springはいうまでもないほど多数の開発者に使われている。Cloud FoundryはNTTコミュニケーションズや楽天、百度、ActiveState、インテルをはじめとする企業、メッセージキューイングのRabbitMQはInstagram、Reddit、米ハフィントン・ポストなどに採用されている。大規模並列処理データベースのGreenplumも幅広く使われている。これらは親会社であるEMCおよびヴイエムウェアが相次ぎ買収してきたもの。Pivotalは設立時にこれらのミドルウェアをまとめて取得したため、設立当初から一定の売り上げを確保する、ユニークな「スタートアップ企業」となった。

 Pivotalは既存製品の導入実績を生かし、個々の製品については商用版の採用、新製品の併用、そして11月中旬に発表する統合製品「Pivotal One」への移行を促進していく。Pivotalに出資しているゼネラル・エレクトリック(GE)は、同社にとって戦略的な取り組みであるソフトウェア事業で、Cloud FoundryをはじめとするPivotal製品を採用。10月にGEは、これを使って同社が構築したサービスを展開していくと発表した。シンガポールの大手通信企業StarHubも、すでにDCAを初めとする製品群を利用し、販売促進や他社への乗り換え防止のための活動を強化している。

アジアでの事業はすでに拡大中

 Pivotalが会社として設立されたのは2013年4月。だが、成長地域とみるアジア太平洋地域での動きは速い。7月にはシンガポール、日本、オーストラリアに法人を設立。インドと中国には開発センターを持つなど、同地域で現在、約200人を雇用している。その販売活動は、EMCおよびヴイエムウェアのリソースを活用することで、さらに広がりを見せている。

Pivotalの動きは非常に速い

 Pivotalは、現在のところ米国などでは、ユーザー組織と直接にやり取りすることが多いという。同社が提供しているのは、これまでにユーザー企業ができなかったことを実現するためのツール群であり、「ユーザー企業自らが活用方法を考えて実行することが重要」と考えているからだ。マリッツ氏は顧客と「co-innovation」していくと表現し、ビジネス分析および新たなアプリケーション開発手法について、一方通行ではない共同作業という方式をとっている。同社はスタートアップ企業のためのアジャイル開発を行うPivotal Labを買収しており、この開発者集団がユーザー企業で自社の課題を熟知した開発者を招き、一定期間共にプログラミングをすることで、技術移転をする活動を行っている。

 顧客企業と共同作業を行うためのアジアにおける拠点として、Pivotalは10月22日。シンガポール政府と提携して、同国に「Pivotal Innovation Centre」を設立したと発表した。このセンターは、データサイエンティスト養成に加え、同社のデータサイエンティストが顧客およびパートナーと協力して、POC(Proof of Concept)の実装を行うといった活動の場となる。

日本でシステムインテグレータとどう協業していく?

 マリッツ氏に直接、日本のシステムインテグレータにはどのような働きかけをしていくつもりかをたずねてみた。同氏の答えは次のとおりだ。

 「われわれはこれまで、顧客と直接やり取りすることが多かったが、それは顧客を支援するのに他のやり方がなかったからだ、(現在のパートナーである)ウルシステムズやブレインパッドなどが、他社にとっての見本となってほしい。現実はわれわれの味方だ。当社は、パートナーが(ユーザー企業のために、)従来とは違った方法で解決しなければならない問題を見出していきたい。そして、これを出発点とし、できることをひろげていきたい。日立やウルシステムズは、トレーディングの世界で、従来の方法ではできなかったことを、当社の製品ですでに実現してくれている」。

 日本に限った話ではないが、Pivotalにとって主要な産業ごとにその世界を熟知しているパートナーを見つけることは重要な課題だ。例えば携帯電話事業者は、やりたいことがはっきりしており、「従来とは違った方法で解決」する提案が理解してもらいやすく、同社にとって働きかけやすいことが考えられる。

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