富士通は2013年10月28日「Fujitsu Big Data Initiative」に、10種類のオファリング(課題解決メニュー)を体系化した。この10種は、富士通が持つデータ活用のモデル案件約200の中で、汎用性の高いものを実装モデルとしてパッケージングしたもの。データ活用案件において、初期のヒアリングや実装の検討プロセスを短縮できるとしている。
富士通は2013年10月28日「Fujitsu Big Data Initiative」に、10種類のオファリング(課題解決メニュー)を体系化した。この10種は、富士通が持つデータ活用のモデル案件約200の中で、汎用性の高いものを実装モデルとしてパッケージングしたもの。データ活用案件において、初期のヒアリングや実装の検討に掛かるプロセスを短縮できるとしている。
今回発表した10種は以下の通り、経営から設備メンテナンス、カスタマサポート高度化やマーティング高度化などが含まれる。
リアルタイム経営の実現
具体的には同社が提供するインメモリデータベースアプライアンス製品であるSAP HANAなどの製品を基盤として採用、SASやSAPなどのアプリケーションやBIツール類を活用し、より高速で直感的な意思決定を支援する内容だ。
故障予測による設備メンテナンス高度化
プラント設備や組み立て加工製造ラインなどにおける画像データやセンサデータの活用と、そのデータを利用した分析による設備保全の高度化を行う。プラットフォームには、同社が展開するFENICS II M2Mサービスなどを活用する。
予兆検知による社会インフラ維持・管理
上記と同じ構成だが、社会インフラを対象としたもの。プラットフォームには、同じく同社が展開するFENICS II M2Mサービスなどを活用する。
工場のリアルタイムエネルギーマネジメント
配電盤などのデータを活用したエネルギー消費データのリアルタイム管理によるエネルギーコスト削減。CO2排出量コントロールや平準化の柔軟な検討が可能になる。
製造ラインのデータから頻発停止の発生予測
製造ラインの稼働情報を基に、いわゆる「チョコ停」(機器メンテナンスなどによるラインダウン)の発生原因分析など。生産性向上に寄与するもの。
需要予測の高度化によるSCM最適化
需要変動を多様なデータから予測し、供給量をコントロールすることで、機会ロスや廃棄ロスといった製造現場のムダを改善する。
顧客接点情報の有機連携によるカスタマエクスペリエンスの実現
オムニチャネルのリアルタイム活用による、個々の顧客向けの最適化を行う。
金融サービスでの顧客向けパーソナライズ
グループ内の顧客情報の連携や外部データの連携によるサービス最適化を行う。外部データ連携では、DataPlazaを活用する。
顧客需要分析による人的リソース最適化
顧客データと位置データを活用した顧客需要分析により営業生産性を向上させる。
M2Mデータによる商品・サービスの高度化
M2Mデータのリアルタイム活用によるメンテナンスの効率化と顧客満足度向上を行う。
今回発表になった10種には、同社が展開する多様なソリューションが組み込まれる。
ERPの情報を活用した経営分析基盤では、前述の富士通製SAP HANA Applianceや、Oracle Exadataといったインメモリ処理を得意とする製品と富士通が持つRDBMSであるSynfowareの組み合わせや、分析アプリケーションとしてSASなどを利用する。
製造業向けのプラント管理との連携ではGLOVIA製品群を持っており、これらとの連携も考えられる。
また、M2Mプラットフォームには、同社が展開するFENICS II M2Mサービスなどを活用する。外部データ連携では、DataPlazaを活用する。
ユーザー行動分析は、機械学習エンジンに独自のチューニングを施して利用、推定モデルを基に、直接的なデータ取得が不可能なユーザーであっても、一定水準のプロファイル推定する。これについては、Facebookなどのソーシャルネットワークサービスにおいて、全体の約7%程度のユーザープロファイルが獲得できれば、そのユーザーの行動の学習により、属性を推定可能だとしている。
また、画像解析と地理空間情報の組み合わせでは、複数のカメラで撮影した映像を組み合わせ、例えば商業施設におけるフロアごとの利用者のトレースや行動分析、分布のマッピングなどが可能だ。
音響データの活用では、ANIMO社が持つ音響データ分析技術を利用する。同社の音響データ分析は、既にコールセンターにおける顧客のセンチメント分析で採用されている。顧客の声色から感情を判定するというものだ。この仕組みを、プラントやインフラ設備の状態分析に利用する。整備不良を音で判定する方法は、設備メンテナンスではよく使われる手法だが、従来は技術者が耳で判定するしか方法がなく、技術者のリソース確保に課題があった領域だ。
障害予兆検知技術では、各種機器から収集したログデータをベイズ学習を使ってパターンマッチングを行い、将来のログデータから未知の故障の予兆を検出するというものだ。
また、富士通が持つECサイト向けのパッケージである「SNAPEC-EX」をベースにした顧客の行動分析データによるマーケティング支援も含まれる。
インフラとしては、センサデータなどについては、富士通が提供する企業向けIaaS環境であるFujitsu Cloud Trusted Public S5などを利用できる。Fujitsu Cloud Trusted Public S5は、パブリッククラウドの形態ではあるが、企業向けに物理的な占有領域を提供する「専用サービス」も提供する。ベースマシンとして、Windows Server 2012 Standard Edition、Red Hat Enterplise Linux 5.x/6.x、CentOS 5.x/6.xを選べる。
利用するソリューション・技術はこれに限らず、案件ごとに組み合わせた内容の提案となる見込みだが、一定の要件では事前に同社で実証済みの環境が選択できることから、立ち上げ期間の短縮が見込める。
販売体制としては、まず、大量データ活用に関する問い合わせの一時窓口となる「ビッグデータイニシアティブセンター」が要件のヒアリングなどを行い、適宜、業界別のコンサルティングチームやBIの専門チーム、各地域のSI子会社の技術者や研究所のメンバーなどをアサインし、構築を進める。全体としては約800人のメンバーで、ビッグデータ活用ニーズを吸い上げる体制だ。
同社では、こうしたデータ活用プラットフォーム導入後に、企業内情報システム部門やユーザー部門が適切に運用できるよう、「ビッグデータ人材育成サービス」も提供を予定している。仮説設定の手法や検証方法、具体的なツールの利用方法などが含まれる予定だ。
同社では、2013年6月に次世代型のデータ活用を進めるベンチャー企業支援事業を進めるベンチャー支援プログラムを発表している。第1回は2013年8月に締め切られたが、現在、応募14社中、6社と協業検討を進めており、現在は、第2次募集を2014年1月に予定しているという。
支援プログラムには富士通の提供するインフラなどの価格優遇やデータ分析・解析環境の提供、商品化や販売の共同実施などが含まれる。
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