とはいえ、こうした連携体制は一朝一夕に築けるものではない。特に企業組織ではルールを作っても形骸化してしまう例も多い。茂岩氏はこの点について、「DevOps実践の鍵は、技術的に尊敬し合える信頼関係作りにあるのではないでしょうか」とコメントする。
「例えば、開発部門のスタッフに『インフラ部門の仕事は自分でもできるよ』と見られてしまうと信頼関係は結べません。従って、われわれは常に最善の選択肢を提示したり、トラブルにすぐ対応できたりするよう、運用管理の技術・知識を日ごろから先鋭化させるよう心掛けていますね。頼りになったという日ごろの経験を通じて、技術的な信頼関係が醸成されていくと思うんです。開発部門も同様です。そうなれば『彼らに聞けば良い解決策が見つかるかもしれない』と、ビジネス部門からも自然に相談されやすくなる。ルールやツールの導入以前に、まず技術的に頼られる存在になることが重要だと思います。弊社も信頼関係の醸成が一番大変でしたが、できて良かったと感じている最大のポイントです」
共通のビジネスゴールを見据えることも、協力し合うためだけではなく、他部門の相談に応える上で欠かせないことだと言う。
「DeNAにおけるインフラ部門のバリューは何かというと、そのときに最適なインフラやソリューションを提案できることです。そのためには国内外のビジネス戦略や、各サービスの規模、アーキテクチャといった判断材料が必要です。やや極端な言い方ですが、インフラ部門として常に良いものを提案できなければ、社内での存在価値がないことになってしまいますよね。開発部門も同様です。それに何より、落ちてきた課題だけをこなしているのは一エンジニアとして面白くないじゃないですか(笑)」
創業期の経験を基に、「ビジネス部門も含めて、相手のやっていることを理解できないうちは、ツールや気持ちだけでDevOpsを実践するのは難しいと思います」と話す茂岩氏。DevOpsというとWeb分野の先進企業の取り組みといったイメージも強い。だが、DeNAの開発・運用スタイルは、さまざまな業種の情報システム部門にとって重要なヒントを示唆しているといえるのではないだろうか。
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