野村総合研究所(以下、NRI)は2013年2月5日、統合運用管理製品の最新バージョン「Senju Family 2013」を発表した。Senju Family 2013は、各種運用管理作業を一元的に行える「Senju Operation Conductor」、ITILに沿った運用管理を支援する「Senju Service Manager」、マルチベンダ製品に対するハブ機能や、運用スタッフ、開発スタッフ、管理層など、立場・役割に応じた運用管理情報提供機能を持つ「Senju Enterprise Navigator」の3製品で構成する。このうち運用自動化の核となるのがSenju Operation Conductorだ。
Senju Operation Conductorは、物理/仮想サーバのCPU使用率、メモリ使用率、ネットワーク使用率をはじめ、300種類以上の監視項目に対応。監視した稼働情報をグラフなどで可視化する「キャパシティ管理」機能や、物理/仮想の混在環境について、エージェントレスでシステムの構成情報を自動収集して一元管理できる「構成管理」機能などを持つ。 これによって、「どの仮想サーバが、どの物理サーバにひも付いているか」など、物理/仮想が混在した環境の構成情報を正確に把握できる。
こうした機能群のうち、設定した手順に沿って運用管理作業を自動化するのが「イベント管理」機能だ。仮想サーバのプロビジョニング、障害対応など、「複数のツールを使った、複数のステップを踏む作業」を自動化できる。作業手順の定義も、GUIツールを使って、あらかじめ用意された各種運用作業部品の中から必要なものを選択。ドラッグ&ドロップ操作で画面上に配置し、線でつないでいくだけで一連の作業を自動化できる。
運用作業部品は「リソース容量確認」「関係者へのメール通知」といった「コマンド」単位で用意。これを基に2つの粒度で運用手順を定義できる。具体的には「仮想サーバのプロビジョニング」など、“各コマンドをつなげた一連の作業”である「チャプター」単位、複数のコマンドやチャプターを組み合わせて、条件分岐も含めた複雑な作業手順を設定する「ブック」単位だ。これによって、例えば「ユーザー部門から仮想サーバ配備要求を受ける→運用管理スタッフが空きリソースを確認→関係者の承認を得る→自動的にプロビジョニングする」など、“人が判断するステップも含めた一連の作業”を自動化できる。
「レシピ」と呼ばれる「よく行う作業手順」のテンプレートを用意している点も特徴だ。NRIが持つ運用ノウハウをベストプラクティスとして提供するもので、「監視テンプレート」「構成管理テンプレート」「障害対応テンプレート」などの基本テンプレートを用意。要望に応じてカスタマイズして提供する他、新規に開発することもできるという。
一方、Senju Service Managerはユーザー部門や開発部門からの要求を受け付けるサービスデスク機能をはじめ、申請処理のワークフロー機能、インシデント管理機能などITIL支援機能を持つ。Senju Enterprise Navigatorは、役割・立場に応じてシステム情報を提供する「マルチビュー」機能や、マルチベンダの運用管理製品を連携させる「ハブエンジン」機能などを持つ。これらをSenju Operation Conductorと連携させると、ユーザー部門や開発部門からの要求をサービスデスク機能で一元管理し、自動的にリソースを配備する環境が整う。
例えば仮想サーバのプロビジョニングの場合、業務部門のエンドユーザーがSenju Service Managerのサービスデスク画面を通じてリクエストを申請すると、Senju Operation Conductorのイベント管理機能が、Senju Service Managerのワークフロー機能を使って承認フローを回す。承認され次第、Senju Operation Conductorが設定された手順に基づいて、Senju Enterprise Navigatorのハブ機能を通じて各種運用管理ツールを制御。自動的に仮想サーバのプロビジョニングを行う仕組みだ。同時にSenju Service Managerがシステムの変更、構成管理も行う。これにより、運用管理のベストプラクティス集、ITILに沿った自動運用を支援する。
なお、ジョブスケジューラは、Senju Operation Conductorの一機能として用意している。こちらも専用のGUIツールにより、条件分岐などを含んだ複雑なジョブフローでも効率的に定義できる。
以上のように、Senjuの場合、ITILにフォーカスしている点が大きな特徴だが、各ツールの機能群を俯瞰すると、運用自動化はシステム構成の可視化、運用の標準化が前提となることがあらためてうかがえる。特に、物理/仮想だけではなく、パブリッククラウドも絡んだハイブリッド環境では、構成可視化と自動化によるトレーサビリティの担保が、守りの面でも攻めの面でも、活用の鍵を握ることが分かるのではないだろうか。
以上、各社のツールを通じて、運用自動化のさまざまな意義を振り返ってきた。自動化というと「まだ先のこと」「ハードルが高い」と考えがちだが、現在、多くの企業が直面している仮想環境の運用管理効率化の鍵となるものでもある。「人員・工数の削減」以外の観点から、あらためて運用自動化を見直してみてはいかがだろうか。
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