「ライセンス監査」とは、簡単に言ってしまえば、ソフトウェア保有数と利用数の確認をソフトウェアベンダから要請されるものであり、SAMを導入していない組織にとっては、非常に対応負荷の高いものです。次回以降に詳述しますが、このライセンス監査に適切に対応する状態を作るために、SAMは必須のマネジメントシステムとなります。
欧米においても、このライセンス監査への対応負荷はユーザー企業・組織の間で大きな問題として認識されていますが、SAMの取り組みが遅れている日本においては、さらに深刻な負荷となるでしょう。
SAMの取り組みが遅れている企業・組織の中には、「クラウドベースのサービスや、デスクトップの仮想化が普及すれば管理は格段に楽になる」と考えている情報システム担当者も多くいます。しかし、この考え方は正しいとはいえません。
確かに、全てのソフトウェアがクラウドベースになり、全てのデスクトップからソフトウェアの存在がなくなれば、もしかしたら今より管理は楽になるかもしれません。しかし、現状はそうではありませんし、仮にそうなるにしても数年はかかることでしょう。また、クラウドサービスに移行したからといって、クライアント側を厳格に管理する必要がなくなるかというと、その仕組みや使用許諾条件によっては、必ずしもそうなるとは限りません。
その間、ITインフラはインストールタイプのソフトウェアとクラウドサービス、仮想デスクトップが混在することになります。こうした状況ではソフトウェア資産の管理は非常に難しくなります。
とはいえ、ソフトウェア資産の確実な管理は、コスト削減、障害への迅速な対応、安定運用といった面で大きな鍵になるものであり、ライセンス監査も今後、間違いなく増えてきます。それも友好的な監査だけではなく、敵対的な監査が増えることも予想されます。つまり、SAMはITの活用面だけではなく、コンプライアンス面でもこれまでに増して重要性が高まっており、多くの企業にとって今すぐ取り組むべき、喫緊の課題になっているのです。
「IT資産管理」の内容とSAMとの関係についてあらためて解説してきましたが、いかがだったでしょうか。特にライセンス監査への対応については、問題意識を持っている情シスの担当者や部門責任者は少なくなく、早々に対策に着手したいと思っている企業・組織は多く存在します。
しかし、組織のマネジメントの意識はそこには向かいにくく、「そうは言っても、SAMの稟議なんてなかなか通らない」という声も多いのが実情ではないでしょうか? そこで次回は、ライセンス監査への対応法を詳しく解説しながら、「SAMの稟議を書く上でのポイント」についても、お伝えしたいと思います。
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篠田 仁太郎(しのだ じんたろう)
日本におけるIT資産管理、ソフトウェア資産管理のトップコンサルタント。(社)ソフトウェア資産管理評価認定協会 代表理事/情報規格調査会 SC7 WG21(ISO/IEC19770) エキスパート/(財)日本情報経済社会推進協会 IT資産管理評価検討委員会 委員長
一般社団法人 ソフトウェア資産管理評価認定協会(SAMAC)
ご質問・ご意見に対する回答や、記事そのものの訂正も含めて、この連載の中で取り上げていきたいと思います。
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