3種のZingies(慶応大学湘南藤沢キャンパス筧研究室、リンク)が開発した「じぶんしぼり」は、openframeworks(インタラクティブなメディア・アートのためのフリーの開発環境)を用いて開発されている。
体験としては、まずカメラの前で全身を回転させ、スキャンさせる。その後、身体にモーターで制御されるベルトを巻き、小さなマネキン(両手で握れるぐらいの大きさの)を手にして、体験開始。
マネキンを絞ると、「ぐにゃぐにゃ」感のある音がスピーカーから流れ、目の前のプロジェクターに投影された自分の身体がゆがんでいく。モーターがベルトを動かすことで、身体にも絞られる感覚がフィードバックされる。
全身スキャンにはOpenframeworks上のスリットスキャンを用いて、全身を60分割している。モーターの制御はお馴染みのマイコンボード「Arduino」だ。マネキンの中には、ロータリーエンコーダー(どのぐらい絞ったかを検知するセンサー)が入っている。
画面に映る映像が絞られていくところと、ロータリーエンコーダーから出力される数値、モーターが身体を絞る感覚がまるで「つながっている」かのように直感的に操作させるために、開発中の調整が繰り返されたという。
VRの研究とツールの進化は密接につながっている。ここ数年ではKinectの登場が衝撃的だったが、今年のOculus Riftの登場はそれに匹敵するかもしれない。
Kinectは数百万円レベルだったDepthカメラ(奥行きを撮れるカメラ)を数万円にし、学生たちが自前でそろえられるぐらいにしたことで、VRの研究を身近なものにした。身近なものにしたことで、自由な発想で技術が使えるようになり、新しいコンテンツが日々生まれている。今回は詳しく触れなかったが、最終日には18歳以下だけが出場できるIVRCユース部門が開催されており、そこでも高校生たちが当然のようにKinectやWiiリモコンをハックした作品を展示していたのが印象的であった。
Oculus Riftは、それまで数百万円規模だったヘッドトラッキング+両眼立体視のヘッドマウントディスプレイを数万円にしたことで、新しいコンテンツを生み出す環境になりつつある。同じ日本科学未来館で行われていたDCEXPOでは、同じくOculus Riftを使った「ミクミク握手」(リンク)の展示が大人気だったことも記憶に新しい。
Leap Motion、360度カメラやKinect One、そして新しくKickstaterから生まれてくるさまざまなデバイスなど、ここ数年は低価格でフィジカルコンピューティングを実現するデバイスが続々と登場している。フィジカルな表現に必須のデバイスやツールがこなれてきてコモディティ化することで、学生のアイデアはより多様な表現を獲得する。
次回のIVRCでは、さらに進化したツールによる「思い付きの実現」が見られるだろう。
ウルトラテクノロジスト集団チームラボ/ニコニコ学会β幹事
趣味モノづくりサークル「チームラボMAKE部」の発起人。未来を感じるものが好きで、さまざまなテクノロジー/サイエンス系イベントに出没。無駄に元気です。次のニコニコ学会βシンポジウムを12/21 土 六本木ニコファーレにて行います。乞うご期待!
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.