Aさんに効いた方法がBさんには通じない―― メンバーへの指示の出し方、評価の仕方に悩んでいるリーダーは少なくないだろう。メンバーの個性に合わせたアプローチ法を、2回にわたって紹介する
※この連載は、『ITエンジニアのためのチームリーダーシップ実践講座』(上村有子著)の第1章〜第3章を、著者と出版社の許可の下、一部修正して転載するものです。
チームメンバーへの仕事の指示の出し方、評価の仕方は難しい。Aさんと同じように指示しても、Bさんはうまく動いてくれないこともある。メンバーの個性は、人によってさまざまに異なるのだ。いかにうまくその気にさせるか、苦労しているリーダーも多いだろう。今回は1つのアイデアとして、メンバーの個性に合わせたアプローチの方法を紹介する。
あなたが誰かにプレゼントをするシーンを思い浮かべてみてください。何をあげようか迷っているとき、2つのアプローチが考えられます。
・自分がもらってうれしいものを選ぶ
・相手が気に入りそうなものを考えて選ぶ
相手が喜ぶ確率が高いのは、恐らく後者でしょう。
会社で仕事の指示をしたり、チームのメンバーを褒めたり、注意を与えたりするときも、プレゼントと同じ原則が当てはまります。大抵の人は、自分が分かりやすいと思うやり方で、相手に指示・説明をしがちですが、その方法は自分以外の人にとっても最適なものとは限りません。自分が褒められてうれしい、注意を与えられたら理解できす、と思うやり方で相手に対処しても、それは的外れな方法かもしれません。
そうはいっても、チーム内でメンバーに対処するとき、1人1人に合ったやり方をじっくり時間をかけて見いだすことは、忙しいリーダーにとって難しいでしょう。そこで次善の策として、さまざまなタイプ分けを使って相手のタイプを見極め、それぞれに適したアプローチを採ることをお勧めします。
人をタイプ分けする行為は、自分の主観で相手を判断するという点で、ある意味、危険をはらんでいます。最初に間違って認識してしまい、ずっとそのイメージを持って相手を理解したなら、双方にとって好ましくありません。今回紹介するタイプ分けは、半永久的なレッテルではなく、その場の状況に応じて軽く付箋を貼るようなイメージを持っていただくとよいでしょう。
そもそもタイプ分けを行う目的は、相手にぴったり合ったアプローチ方法を探り、相手にメリットをもたらすことです。それをより素早く、より的確に実践するために、タイプ分けを使うのです。
タイプ分けを行う前に、次の3ステップを踏みましょう。
1.タイプ分けの方法を知る
2.相手をよく観察する
3.メンバー全員に意向を伝える
3つ目のステップがなく、リーダーの対応が人によって異なると、ひいきをしているように思われるかもしれません。また、日によって対応方法が異なるように見えると、気まぐれだと誤解されてしまうかもしれません。どちらにしても信頼を失う恐れがあります。そうならないよう、タイプごとに対応を意図的に使い分けることを、事前にメンバーに分かってもらうことが大前提です。
リーダーのそんな努力をメンバーが理解していれば、もし自分に対して適当でないと思うやり方がなされたときは、「タイプ分けが間違ってますよ!」とメンバーの方から教えてくれるでしょう。
タイプ分けには、血液型、星座、六星術、心理に由来するもの、性格、思考の癖、行動特性など、いろいろなものがあります。これらは、基本的に生涯変わらないもの(血液型や生年月日など)と、そうでないものに分類できます。
心理に由来するものと性格は、成長に伴って変わることもありますが、一般に変わりにくい(変えにくい)といわれています。一方、思考の癖や行動特性は、自覚さえすれば、自分の意志で変えることが容易なものです。
今回は、「価値観」「深層心理」によるタイプ分けを紹介します。
例えば、新しいプロジェクトを開始するに当たり、パートナー会社を探しているとします。あなたが決め手とするのは、次に挙げる3つのどのパターンに近いですか?
これらはそれぞれ、Benefit(利益)、Logic(論理)、Emotion(感情)に結び付きます。それぞれの頭文字をとって「BLEによるタイプ分け」と呼びます。
一般に、人は意思決定をする際、この3つの要素を組み合わせて判断するといわれています。組み合わせの配分は人によって異なり、Bの比率が高い「損得勘定」で物事を決める傾向がある人、または、Lの比率が高い「理屈重視」の人、Eの比率が高い「情」を大切にする人の3タイプに分かれるという考え方です。
例えば客先に常駐しているメンバーP君に緊急のトラブルが発生して、応援で誰かが現場に行かなければならなくなったとします。応援のメンバーがEタイプだったら、いろいろ理由を並べ立てるより、一言「P君が困っているから助けてやってくれ」という方が、気持ちを動かせるはずです。
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