新サービスのリリースだけでも4つあり、アップデートも細かいものも合わせると、一体何個あるのか分からないくらいです。ここでは個人的に大きなアップデートを取り上げます。
日本人は待ちわびていた人が多いと思われるアップデートです。ついに、PostgreSQLがRDSで使えるようになりました。オープンソースのデータベースでも特に日本で人気の高いプロダクトなので、EC2上に自前で構築運用している人もいるくらいです。これがRDSで運用できることになります。
世界的にニーズがあったからこのリリースがあったのだと思うのですが、私はRedShiftの開発環境として使われるのではないかと考えています。
同じインターフェイスを持ち、低価格なRDSをUIなどの開発に使い、実運用はRedShiftというような用途があったのではないかなぁなんて思いました。
Fine-Grained Access Control for Amazon DynamoDBは、STSと組み合わせることで、モバイルのアプリなどから直接DynamoDBのデータを読み書きできるようになります。ただデータを保存するだけ、ただデータを取得するだけといったシンプルな処理にEC2を使用せずに直接DynamoDBで行うことができます。
今までEC2を使っていた負荷が減るので、EC2の分のコストの削減とDynamoDBの可用性がそのまま手に入ることになりました。AppStreamと同様にMBaasとしてのサービスのように見えます。
もう1つDynamoDBのアップデートです。
2013年4月にLocal Secondary Indexが使えるようになりましたが、今回はLocalではなくてGlobalで使えるようです。4月のそれと変わったのは、SecondaryIndexのみでの問い合せ(Query)ができるようになっている点です。
Local Secondary Indexでは、Hashキーを指定し、その中からさらに絞り込むためにSecondaryIndexが使えていましたが、GlobalSecondaryIndexではSecondaryIndexだけでの問い合せも可能になったことで、いままでScanを使わなくてはいけなかったような問い合せもQueryで利用できるようになます。これによって、開発コストが下がったり、パフォーマンスが上がったり、あるいは、今までできなかったデータでもDynamoDBで扱えるようになります。
現在、SimpleDBがプロダクト一覧ページから消えていることもあり、GlobalSecondaryIndexの登場は、「AWSはSimpleDBを本格的に終焉(えん)に近づけます。AWSのNoSQLはDynamoDBです」と言っているように感じました。
EC2に新しいインスタンスタイプが追加になりました。c3、i2、g2と、これらは非常にちょうど良いインスタンスタイプだと思います。1つはCPUに特化し、その分ストレージを減らしています。もう1つはI/Oを突き詰め、さらにもう1つは強力なGPUを搭載したインスタンスタイプです。
平均的なスペックのEC2よりも、明確に高性能のCPUを調達したい、メモリを調達したい、I/Oを調達したいと考える人が増えたことの現れだろうと考えます。
今までのAWSの使い方では、漠然と「サーバー」を調達していましたが、このようなピンポイントな要件に尖ったインスタンスタイプが登場したことで、今後はAWS上でCPUがあとこれくらい欲しい、I/Oがこれくらい欲しい、ディスクがこれくらい欲しいなど、AWS上で「スペック」を調達できるという考え方にシフトしていくのではないでしょうか。個人的には今のEC2の使われ方はElastic Computer Cloudでしかないと思っています。“Elastic Compute Cloud”の名前の通り、ぜひともそうなってほしいものです。
こちらはMySQLでのお話ですが、なんとリージョンをまたいでレプリカを作れるようになります。
世界規模のDRが可能になると同時に、マスターは日本において、データの分析などはEC2の単価が安いUSで行うなんてことができるようになります。
RedShiftにおいて、スナップショットを別のリージョンにも保存できるようになりました。設定しておけば、普段のスナップショットに加え、自動的に別のリージョンにもスナップショットを保存してくれます。この機能を使えば、スナップショットからもう1つのRedShiftを使い始める場合にも、簡単に実現できるようになります。
昨年のre:Invent 2012は「DataDriven」という言葉とともに、新サービス「RedShift」と「DataPipeline」がアナウンスされました。これから1年のはDataDrivenなんだというメッセージを強く示す発表内容であったといえます。それに対して、2013年のリリースは、ここまでで見てきたように、非常に幅広いニーズをくみ取るものになっています。AWSそのものの立ち位置の変化も、ここで見てとれるのではないでしょうか?
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