Windowsの新バージョンであるWindows 8.1、そしてこれに対応した新たな開発環境であるVisual Studio 2013の登場によって、これからの業務系デスクトップアプリはどうなっていくのか。
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2013年11月9日(土曜日)、@IT/業務アプリInsider主催のオフラインセミナー「第4回 業開中心会議 これからの業務系デスクトップアプリ開発〜Windows 8.1時代 君はいま、次世代に駆け出す……〜」(スポンサー:グレープシティ)が開催された。
今回のテーマは「業務系デスクトップアプリの未来」。デスクトップアプリの価値をどうすれば向上させていけるのか、業務アプリの開発で便利に使えるVisual Studio 2013の新機能、Windows 8.1とVisual Studio 2013の登場でこれからの業務系デスクトップアプリはどうなるのかについて活発な議論が行われた。セミナーの構成は以下のとおり。
基調講演および各セッションのUstream中継の動画を視聴・閲覧できるようになっている。また、Twitter上でツイートされたさまざまなコメントは「Togetter」にまとめられている。
基調講演では、ソフトウェア開発、セミナーのスピーカー、記事執筆などを行っているフリーランスのエンジニアであり、「極東IT Engineers」という開発者コミュニティの代表も務めている森 博之氏からデスクトップアプリの価値を高めるための方法についての話があった。
基調講演では、モダンなアプリとは/デスクトップアプリ技術振り返り/従来のアプリとモダンなアプリの相違点/デスクトップアプリとクラウドなど、広範な話題が取り上げられた。最後にデスクトップアプリはまだまだ生き残っていくと結論付け、アプリの価値を向上させるにはITトレンドのキャッチアップ、UXの洗練化、デスクトップ技術のモダン化、クラウドの活用があるとして基調講演は終了した。
基調講演の詳しい内容に興味のある方は、以下のUstream中継の動画をご覧いただきたい。
基調講演に続いては、マイクロソフトのデベロッパー&プラットフォーム統括本部でVisual Studioのマーケティングを行っているエバンジェリスト、馬田 隆明氏からデスクトップアプリ開発にフォーカスしたVisual Studio 2013の新機能の紹介が行われた。
馬田氏によれば、デスクトップアプリ開発という観点でのVisual Studio 2013で最大の強化点は「生産性」となる。この強化点には細かな部分も多いが、よく見ると使いやすさがかなり向上しているとのことだ。それらの強化点について、機能分野ごとに「すぐに使える」「知っていると便利」「改善されている」点がデモ中心に説明された。
技術セッションの詳しい内容に興味のある方は、以下のUstream中継の動画をご覧いただきたい。
最後に、これからのデスクトップアプリ開発をテーマとして、下記の方々にご登壇いただき、パネルディスカッションが行われた。
パネルディスカッションではまず、八巻氏から本会議参加者に対して行われた「現在使っているアプリケーション開発技術は何か」に関するアンケートの結果が報告された。そこでは依然としてWindowsフォームが圧倒的なシェアを占め、その後にASP.NET Webフォームが続いた。参加者の中でもWPF、Windowsストアアプリの開発はそれほど多くはなっていないとのことだ。
また、八巻氏からは参考資料として、グレープシティでのテクニカルサポートの比率、出荷ライセンス数の比率も紹介されたが、そこでもWindowsフォームとASP.NETの比率が高いという傾向に変わりはなかった。
その一方で、業務アプリInsiderの前身である「.NET開発者中心」の読者が使っているアプリ開発技術を見ると、Windowsフォームは減少傾向にあり、WPF、Webフォーム、ASP.NET MVCは増加傾向にあるがWindowsフォームの減少分を補うほどのものでもないという話もあった。
以上を前提として、パネルディスカッションでは議論が進められた。以下はパネルディスカッションの中で筆者が興味深く感じた部分だ。
――デスクトップアプリ開発は最近ではもう少なくなってきたのでしょうか?
森 Web開発の比率が上がっているのは間違いないと思います。デスクトップアプリでは配布の問題もありますし、複数デバイスへの同時対応もあります。最終的にユーザーを広げていくことを考えると、ユーザーの多いところには使いやすいWebという道具を使っていく方向にあるとは思います。だからといって、デスクトップアプリ自体がなくなることはないでしょう。マシンに密接して何かをするという用途がなくなることはないですから。「デスクトップだけ」から選択肢が増えてきたのであって、多様化してきたということでしょう。
馬田 反応性が重要な部分やハードウェアアクセスが必要になるところでは、デスクトップアプリを選ぶお客さまもいらっしゃいますね。
――現在はデスクトップアプリで問題なく動いていますが、今後、マルチデバイスなど使用環境が多様化していく中でどうなっていくのでしょうか?
森 個人的な印象では、スマートフォン/タブレットが浸透しているということは、その操作性も浸透しているということですよね。その一方で、今までと変わらず、机の前に座って作業をしなければならない世界もあります。コンシューマー向けアプリではタブレットやスマートフォンを視野に入れざるを得ないかなと思います。逆に業務系ではやはりデスクトップアプリで構築したいとなるのではないかという印象があります。
――アプリのモダン化を考えたときに、クラウドは使える要素だと思いますが、デスクトップ業務アプリでクラウドを活用するとしたら、どこから始めればよいでしょうか?
馬田 アプリの種類ごとに向き不向きがありますね。例えば月末にアクセスが増える勤怠管理システムなどはクラウドに乗せてしまって、月末だけインスタンス数を増やしてサーバー代を節約する、といったように、クラウドに向いている業務アプリは多くあると思います。
――クラウド化というよりも、まずはサービス化ということですよね。典型的なデスクトップアプリはデータベースに直接接続しているので、その状態だと、クラウドにどう持っていけばよいのかという話になってしまいます。そこでサービス化。
山本 サービスを使うように、アプリのアーキテクチャを見直すことが考えられます。デスクトップアプリから例えばADO.NETでSQL Serverに直接アクセスしているものもまだ多くあります。そこを直接アクセスするのではなく、サービスを提供するサーバーを配置して、デスクトップのクライアントからはサービスにアクセスする。これはセキュリティの面からも大事なことだと思います。その次にクラウドに行く話になると思います。
森 デスクトップアプリのメリットの1つにお手軽さがあります。そのお手軽さがデータベースに直結するアプリにつながってしまっていますよね。「サービスを作るほど仰々しいモノじゃないんだよ」みたいなところでデスクトップアプリが使われることもよくあります。短納期でアプリやソリューションを提供しなければならない場合は、それは1つの方法であって、重要視されていることは否めません。
山本 例えば、情報システム部門の中で使っているのであれば直結でも問題ないです。
森 大事なのは使い分けをしているかです。必要なところでそういう構成を取れるようなキャッチアップをできているか。
山本 Excelマクロでちょっとしたアプリを作って部署内で使っているのはよいのですが、そのマクロが全社的になってしまうようではダメ。
――最後に皆さんからひと言いただけますか?
森 これからもデスクトップアプリを、Windows 8.1を一緒に盛り上げていきたいです。そのお手伝いを少しでもできればと思います。
山本 これからデスクトップアプリをやっていく中で、タブレットやWindows Phoneなどのモバイルデバイスをどう提案していくかがあります。私はWindowsストアアプリを重点的にやっているので、そこをお手伝いできればと思います。
馬田 デスクトップアプリは残ると思いますし、残らないとマイクロソフトも生きていけません。そこは安心してくださればと思います。ただ、皆さんのキャリアや技術の選択肢を増やすという意味で、既存の知識をWindowsストアアプリや他のところに生かす協力をさせていただきたいと思っています。
――デスクトップアプリがこれからも重要であることには間違いありません。これからも細かいことができるアプリは必要で、そこはデスクトップアプリが担っていくところだと思います。ですので、これからも自信を持って取り組んでいただけると思います。それに加えて、世の中やニーズが変わる中で、WindowsストアアプリやWebアプリ、クラウドなどが選択肢となってくるので、デスクトップアプリ開発の中でそれらを取り入れたり、勉強したりしていただければと思います。では、これでパネルディスカッションを終わりたいと思います。ありがとうございました。
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