ECMは、それまで個人のPC上で管理されていたデータや、個別の文書管理システム上でばらばらに管理されていたコンテンツを、全社的に単一のシステムでまとめ上げて、一元管理するものです。そのような仕組みを構築することで、システム運用の効率を上げられるとともに、より広く情報資産を共有できるようになり、ひいては業務効率化やビジネス活性化の効果が生まれます。
しかし、ある程度以上の規模の企業ともなれば、社内の電子コンテンツを全て集めるとなると、その数は数百万、場合によっては数千万にまで上るかもしれません。また、システムを利用するユーザーの数も数千人、ときには数万人といった規模も考えられます。そのためECMには、一般的な文書管理システムよりはるかに高い処理能力が必要とされます。
また、「より多くのコンテンツ」「より広い範囲のユーザー」という空間的な広がりと同時に、ECMでは「時間的な広がり」も極めて重要視されます。時間的な広がりというのはつまり、時系列に沿ったコンテンツの状態の変化を追跡し、そのときどきの状態に応じた管理を行うということです。これを、「文書のライフサイクル管理」と呼びます。
例えば、一般的な業務文書のライフサイクルは、まずは作成され、ECMに登録されるところからスタートします。続いて、内容が頻繁に改変されたり、あるいは社内で回覧されたりと、活発に利用される状態がしばらく続きます。こうした利用が一段落すると、今度は「保管」のフェーズに移ります。ここでは、必要なときにいつでも素早く検索・参照できるような状態でファイルが保管されます。一般的にこの保管フェーズは1年ほどで完了し、次は社内規定や法規制の要請に従って一定期間文書を保存(アーカイブ)しておくフェーズに入ります。そして最終的に保存期間が満了した後には、文書は確実に廃棄されなくてはなりません。
この「作成」「利用」「保管」「保存」「廃棄」の一連のライフサイクルを、各コンテンツごとにきめ細かく管理し、自動実行するのもECMの重要な機能の1つです。これによって、大量のコンテンツを効率よく、かつ確実に管理することが可能になるのです。
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