まずはあらためて、ECMとは一体どのようなシステムなのか、簡単におさらいしてみたいと思います。ECMは、いわゆる「文書管理システム」の発展形だと捉えることができます。
文書管理システム自体の発祥は、冒頭でも挙げた「ペーパーレス化」の時代までさかのぼります。それまで企業が社内で抱えていた大量の紙の文書を電子化することで、その管理や流通に掛けていたコストや労力を節約し、業務効率化を図ろうというものでした。
さらに、2005年4月に施行された「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」「同法施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」、いわゆる「e-文書法」が、その動きを法制面から後押ししました。この法律の施行により、民間企業が作成・保存することを義務付けられている文書・帳票類について、原則として全ての電子保存が認められることになりました。
文書管理システムは、このペーパーレス化の取り組みを支援するために考え出されたシステムです。電子化した紙の文書、あるいはもともと電子ファイルとして作成されたあらゆる文書データを一元的に管理し、社内で広く共有することを目的としています。
より具体的には、管理対象の各文書にそれぞれ属性情報(タイトルや作成者、作成日、アクセス権限、検索キーワードなどなど……)を付加し、中央で集中管理することで、文書コンテンツをきめ細かく管理したり、あるいは大量のコンテンツの中から欲しいものを素早く検索して見つけることができるようになります。
このような仕組みを基にコンテンツを管理するシステムとしては、コンテンツの種別ごとにさまざまなものが生まれ、そして企業に導入されてきました。一般的な文書管理システムの管理対象はOffice文書に代表されるドキュメントファイルですが、それ以外にもWebコンテンツの管理を専門に行うシステムや、研究開発ドキュメントを扱うシステム、Eメールのデータを管理するシステムなどが存在します。こうしたシステムは比較的小規模なものが多かったためか、部門や事業所単位で個別に導入されることがほとんどでした。
しかし、こうして社内に数多くのコンテンツ管理システムが乱立してしまった結果、それらの管理や運用に掛かるコストや手間がばかにならなくなってきました。さらに、それぞれのシステムは孤立しているため、社内の情報資産をより広く、全社的に共有・活用することもままなりませんでした。そこで登場したのが、ECMだったのです。
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