サイボウズは4月10日、kintoneの機能およびAPIの強化と開発者向けコミュニティの開設を発表した。kintoneはどういう方向に向かおうとしているのか。同社代表取締役社長の青野慶久氏に直接聞いた。
サイボウズは4月10日、kintoneの機能およびAPIの強化と開発者向けコミュニティの開設を発表した。同社代表取締役社長の青野慶久氏によると、これはkintoneが企業の情報共有プラットフォームとしてより深い役割を果たすことを目指した取り組みだ。kintoneはどのような方向に向かおうとしているのか。青野氏に直接聞いた。
もともと、kintoneというサービスを発想したのは、「ミドルレイヤに潜らなければならない」と考えたからだと青野氏は話す。「サイボウズはアプリケーションの会社だと認識されてきた。だが、アプリケーションは国や会社の文化に依存するため、グローバル展開が難しい。そのため、情報共有アプリ基盤のようなものをクラウド上につくろうとした」(青野氏)。
これを形にしたのがkintone。同サービスの発表時、筆者は「業務アプリPaaS」と表現した。青野氏は「不特定多数からアクセスするためのシステムは想定していない。メンバーがログインして何か情報を共有する、コミュニケーションする、タスクを管理する、チームワークに特化したPaaS」だといい、このことは今後も変わることはないと説明する。だが、その「チームワーク」の意味は、機能強化とともに広がりつつあるようだ。
当初は、ちょっとした業務アプリをノンプログラミングでつくれるということで、人気を獲得した。「だが、テーブル間連携はできない、コミュニケーション機能もない、APIもない、フロントエンドもカスタマイズできない、ということで、基盤といってもたいしたことはできなかった。それが、プロから見てもかなりのことができるように、着実に進化してきた」(青野氏)。
「例えば今回のAPI強化では、レコード更新にリビジョン番号を付けられ、それを見ながらプログラムを書くと排他制御ができるようになった。kintoneのような柔らかいデータベースで排他制御ができるようになったときに人は何をつくるのか。また、1回のAPIコールで2つのテーブルを更新するといったこともできるようになった。こうして、チームワーキングに必要な機能はだいだいできるようになってきた」。
最近、大型の案件で一番競合するのはOracleやSQLServerをバックエンドとした手組みのシステムだと、青野氏は続ける。特に、kintoneにはユーザー管理の仕組みが備わっているため、「簡単にユーザー登録して認証管理ができ、ユーザーに証明書も発行できる。Oracleなどを使い、これを手組みでやろうとしたら、大変な作業だ」(青野氏)。全般に、既存業務システムのフロントをつくり直したいというニーズが増えているという。例えばkintoneで在庫管理アプリケーションを構築するが、最終的には既存のマスターデータベースを更新するという形態だ。
既存業務システムをモバイル対応させるために、ユーザーインターフェイスをkintoneで構築する例も急増しているという、kintoneでは、作成したアプリケーションが半自動的にモバイル対応する。ユーザー組織は構築、メンテナンスの双方で、コストを抑えられる。
以前、「EUC(End User Computing)」という言葉が流行した時期があった。情報システム部では、業務部門のニーズに応えられるような情報やシステムを提供しきれないため、エンドユーザー自身が情報の加工などを行うことを指していた。
「EUCは、『情報システム部がいやがって関与しようとしない、一方業務部門側は、情報システム部の関与を嫌がる』といった対立の構図を生み出してしまった。kintoneでは集中管理ができるという大きな違いがある。どれだけエンドユーザーにやらせても情シスが統制を効かせられる」。
青野氏は、kintoneを全世界で導入しているディー・エヌ・エーの例を挙げ、kintoneを通じて情シスと業務部門の関係を変えられると主張する。
「(全世界に拠点を展開するディー・エヌ・エーの場合、)東京の情報システム部では現場のITニーズを把握しきれない。現場に任せたいが、完全に任せると何をやっているかが分からないため、kinttoneプラットフォームの提供という手段をとった。すると逆に情シスは、kintoneの利用のされかたを見ることで、現場で何が起こっているのか、何が必要とされているかを知ることができる。それを(他拠点も含めた)サイクルとして回そうとしている」。
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