いま、つながりを欠く基幹業務システムの改善が求められる、これだけの理由DBaaSによる脱サイロと全体最適(3/3 ページ)

» 2014年04月21日 20時26分 公開
[原田美穂@IT ]
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基幹系業務システムのサイロ化を阻んできた技術要件

 ここで、問題となるものの1つが、システムの「サイロ化」である。

 システムがサイロ化してきた要因については、既に多くの人々が指摘している。1つは、過去のIT環境そのものが貧弱であり、個別に最適化したシステムを運用せざるを得なかったことが挙げられる。

 もう1つが企業や組織の構造的な問題だ。

 情報システム化を推進するのは多くの場合が事業部門や関連子会社のように、個別の組織であることが少なくない。このため、過去には個別の機能モジュールごとにバラバラの要件で調達、構築されてきた経緯がある。また、場合によっては、類似の機能要件であるにもかかわらず、組織上のセグメントの違いから、個別に独立したシステムとして運用してきたものも少なからず存在する。

 マネジメント層の視点からすると、個別のシステム要件がどのようであっても、最終的な「報告」として提出されるアウトプット側の情報が適格であれば問題はない。しかし、システムインフラ側の実装としては、マネジメント側に提供するためのデータを生成するために、多様なバッチプロセスを展開するなどの問題を抱えているケースもある。

 特にバッチプロセスについては、対象データが大量になればなるほど時間がかかる。いくつかの取材先では、やはりバッチプロセスの終了までの時間が長時間になるために「翌朝の営業開始時点に間に合わせるのがぎりぎり」という状況もある。

 営業時間に影響することの弊害はもちろんだが、「万一、バッチ処理が途中でエラーとなり、やり直しが必要になった場合には確実に業務開始時間に間に合わないというリスクを常に抱えている」ことになる。

 情報システム部門側やITベンダー側はこれを「課題」と考え、多様な統合・集約の方法を提案してきた。仮想化環境を使った物理的なシステムの集約や統合などはその最たるものだろう。アプリケーションやワークフローの改善、運用の改善を目指し、多くのシステムを集約しながら、プロセス改革に着手している企業も少なくないだろう。

 一方で、こうした動きの中で除外されやすいシステムもある。クリティカルな要件で利用されているデータベースシステムである。一般的な仮想化技術による統合・集約では性能に不安が残るなどの事情から物理環境が前提となるため、仮想化の利点を生かした統合や運用プロセス共通化に踏み出せない例も少なくない。

 だが、先の「統合報告」に向けた国際的な流れを受けて、松原氏は「今後、企業内の個別/孤立アプリケーションシステムは、統合報告という外部報告を支援するためにも、データベースも含めて、統合化・結合化の流れに進まざるを得ない」と警鐘を発する。

 加えてSPAの例に見るように、連携対象となるシステムの範囲は拡大している。このため、ITガバナンスやコントロールが効きにくい範囲を含めた統合や結合が必要となることに留意しなければならない。

 「情報活用の目的も、より戦略的であることが求められています。マネジメントの階層によって、必要な情報粒度や、管理対象とすべき期間も異なりますので、そうした側面も重視しなければならいでしょう」(松原氏)

情報資産がアジリティを持つための、基盤の統合に向けて

 これに向けて、システム側に求められる要件は、まず、既存の環境が統合・集約されていること、また、従来のデータ参照の方法以外に、ビジネスモデルの変化に伴って、適切なビジネスパートナーに適切な情報を提供するための開発を迅速に実施できる環境を整備することが肝要である。

 では、「統合報告」を支えるアプリケーションシステムに必要になるのはどのようなものだろうか。松原氏はこれについて「適切なタイミングに適切な情報が獲得できる、速度と情報集約度の高いシステム」である、と答える。ただし、このために必要なシステムがどうあるべきかは、個々の企業によって異なるという。

 次回はこうした要求に対応できる体制を整えるために、ある企業が着手したデータベース統合のプロセスを紹介する。


関連特集:IT基盤の脱サイロ化〜データベース統合からクラウドへ

基幹業務システムを支えるバックエンド側インフラの構成は、止められない、パフォーマンスを落とさないことが大前提です。止められない、動かせないシステムであるからこそ、情報システムの共通化や標準化のプロセスから除外されてきた経緯があります。その理由の1つが、データベースシステムの技術的な制約です。 仮想化によるサーバー集約が一般的になってきた現在でも、重要情報を扱うシステムのデータベースだけは、物理サーバーで運用するのがある種の常識となっています。 しかし、技術革新が進んだ現在、クリティカルなデータベースシステムであっても、統合と集約、共通化の恩恵が受けられるようになってきました。本テーマサイトでは、基幹業務システムの改善とともに従来着手ができなかったデータベースの効率化や運用の標準化についての指針を、先行企業の事例を交えて示していきます。




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