ビジネスモデルの変化、企業活動の多様化とともに、企業内のデータに求められる要件も変化している。システムの視点「以外」の領域から見た、企業内データのこれからを考える。
ビッグデータ活用の潮流の中で、ソーシャルデータやオープンデータなどが注目される一方で、企業が持つ静的な実績データの価値が薄れるわけではない。むしろ、自社内に持つ情報資産の価値に気付き、部門横断的な活用を促す企業情報システムを求める声が高まっている。だが、個別最適を前提に構築されてきた基幹系業務システムを中心とした環境では、そうした柔軟なデータ活用を狙うことは難しい。
編集部では、こうした状況がもたらす課題と、企業を取り巻くビジネス環境について、多数の企業においてコンサルティングや企業分析の経験がある、中央大学大学院特任教授で公認会計士の松原恭司郎氏に取材した。
氏の話からは、個別最適の結果である「システムのサイロ化」が、システム運用の効率・ガバナンス面だけではなく、業績把握やステークホルダーに向けた情報開示のスピードにまで結び付く、非常に広範な問題であることがあらためてうかがえる。
取材冒頭、松原氏は「ITはもともとどういった働きをするものだったか、まず整理すると分かりやすいでしょう」といって、下の図を示してくれた。
仕事をより効率化するための道具として誕生したITシステムは、ビジネスモデルのイノベーションやグローバリゼーションへの対応を支援してきた経緯がある。
一方の事業運営の視点から見ると、その重要な関心事項は「戦略」であり「アジリティ」である。また、そのアジリティを支えるものとして、全体を串刺しする「統合化」への要望もある。
「基幹業務システム」に目を向けると、そこでは、実績値や財務情報など、ビジネスニーズのごく一部の情報しかカバーしていない。さらに、基幹業務システムを統合化できている企業はごくわずかであり、その意味で、個々の業務に分断された「サイロ」状態の運営が続けられてきた経緯がある。
「本来あるべき、ビジネスニーズと、基幹業務システムが提供している機能の間には大きなギャップがあるのです。戦略やアジリティを支援する仕掛けを作るためには、プロセス、機能、そしてシステムの統合化や結合化を推進する必要があります」(松原氏)
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