PSDでデータがやりとりされているWeb制作の現場では、PSDに「スライス」というものが設定されているはずだ。スライスとは、画像の書き出し領域のことで、ヘッダーやフッターの各要素など、HTMLから呼び出せる画像の単位に変換するためのものだ。
スライスをきちんと設定しておくことで、書き出し時のファイル名を統一でき、ファイル名違いによるデッドリンクなどを未然に防止できる。また、書き出し操作を1回で済ませられるのも利点だ。
一方で、スライスが設定されていないPSDを渡されて「じゃこれ、スライスしといて」なんて指示があることも十分考えられる。スライスはWebデザインの要でもあるのだ。
なおスライスに取って代わるものとして最近、Photoshopに「画像アセット」機能が追加された。これはレイヤーにファイル名を付けることで、勝手にその要素を書き出してくれるというものだ。大きさが変わってもスライスの場合はスライスの大きさを変えなければならないが、アセット書き出しはその必要すらなく、レイヤーの変化に柔軟に応じて画像を書き出ししてくれる。
筆者はスライス作りが余り好きじゃない性格なのか、最近は専らアセット書き出しを愛用している。
さあ、これでPhotoshopの基本はバッチリだろう。基本を理解していたとしても、現場ごとに微妙なルールの違いが存在する。しかも、それは作業者だけに言い伝えられている伝承のごとく、ドキュメント化されていなかったりもする。
また、先人たちはさまざまな現場テクニックをさり気なく披露することがある。パッと目の前で何か手品のような動きをされたとき、それを見逃さずに質問してみるといいだろう。
「今の、どうやるんですか?」筆者もそうやっていろいろなテクニックを盗んできたのだ(すご過ぎて何やってるかさっぱり分からないレベルの人もいたが)。
さて、Photoshopは最近Webデザインツールとの親和性が驚くほど良くなってきている。先ほど紹介したスライスや画像アセットの機能は、PSDをHTMLにする際の下ごしらえ部分のようなものなのだが、Photoshopは画像のデザインツールである以上、その垣根を超えることはなかなかできなかったのだ。
Adobe Creative CloudとともにAdobe Edgeファミリが登場して、ツール間のつながりが持たれるようになったあたりから、PhotoshopでもWebデザイン過程の最後の方までフォローできるようになってきた。まだ実制作レベルではなくカンプのレベルなのだが、その方法を紹介している記事を幾つか紹介しておきたい。
PhotoshopからHTMLを書き出す最良の方法はAdobe Edge Reflowと連携させることだ。Photoshopは「Reflow書き出し」機能を持っているため、ある決められたルールでレイヤーを構成しておけば、ほとんど手直しをすることなくHTML化できる。このツールの良いところは、専門的な知識を必要とせず、きちんと動くレスポンシブなレイアウトを書き出しできる、つまり「レスポンシブWebデザイン」に対応できるところにある。
もしあなたが、Webデザイン系の部署ではなく営業や提案系の部署に配属となった場合でも、提案資料に実際に動作するモックを持っていくことができるようになるのだ。
この辺りのツールの使い方もAdobe PinchInで紹介されているので、実際の作業については下記3つの記事を参照してほしい。
今回はPhotoshopに縛って基本的な部分からレスポンシブデザインまでを紹介したが、いかがだっただろうか。
次回は、まるごとDreamweaverでお届けする予定だ。もちろん、「Adobe Pinch In」では、他の記事はすでに読めるので、そちらも参照してほしい。今回少しだけ紹介したIllustratorに関する記事も順次追加するようだ。
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